「あさりちゃん」のチョコレート味噌汁を再現してみた
ノーマルなめこ汁にチョコレート片を入れ、混ぜたものと、一体化を狙って小鍋で混ぜたものとでは別のものができました。
子どもの頃、小学何年生かの雑誌で読んだ「あさりちゃん」に、「チョコレート味噌汁」という恐ろしい料理があった。チョコレートが大好物のあさりちゃんが、チョコばかり食べていることを戒め、ママがごはんも味噌汁もおかずも全部チョコレートで作ってしまう、たしかそんなような内容だった(コミックが76巻まで出てるので、どこに載ってるか探せず、曖昧なままだが…)。

 
なかでもいちばん衝撃だったのは、件の「チョコレート味噌汁」で、31歳にもなって、いまだにその未知の味を知りたいという思いと、知ってはいけないという思いの間をいったりきたりしている。そんな呪縛から解放されるには、実際に作ってみるしかない…というわけで、長年の思いをかけ、勇気を出して再現してみた。

といっても、作り方はマンガには全然のってなかった(はず)ので、とりあえずチョコレートと比較的相性がよさそうな具材を検討し、まったりとろりの風味が似合いそうな「なめこ汁」を選んだ。

まず昆布、かつおぶしで出汁をとり、なめこ汁を普通に完成。お椀に注ぎ、アクセントとして(?)ミルクチョコレートの板チョコを4片ほど加えて混ぜてみた。味噌汁の中で、茶褐色がぐるぐる螺旋を描き、溶けていく。
と、同時に、むせ返るような甘いニオイがたちこめてくる。

色がほどよく均一になったところで、飲んでみた。ツンとする甘いニオイ(ってのもへんな表現だけど)の次に、甘さ、しょっぱさが別々に口に広がる。甘くてしょっぱい、へんな味。味噌で甘く煮る料理「鯉こく」の遠い遠い不愉快な親戚のような感じもする(鯉こくが好きな人、ゴメンナサイ!)

甘いミルクチョコがいけないのかと、次に同じ割合で、ブラックの板チョコで試してみた。ミルクチョコバージョンより甘さ控えめで、若干スッキリした飲み心地ではあるが、しょっぱさが際立ち、さらに不味い。


この味噌とチョコの「ケンカ状態」を少しでも解消するには…と、今度は、「あとのせ」方式でなく、小鍋で一緒に煮てみることにした。これで案外、仲直りしちゃったりして。
火にかけたことで、しょっぱいニオイとからまり、甘ったるいニオイが強烈に部屋中に漂う。地獄ってこんな感じだったりするでしょうか。

これを口に含むと…驚いたことに、原点の味噌汁の出汁に使った鰹節のニオイがふいに分離・独立し、飛び出してくる感じがした。味噌と、カツオブシと、なめこと、チョコレート、すべてがケンカ別れし、思い思いの方向に旅立った感じ。
火にかけたことで、いったい何がおこってしまったのか。

あさりちゃんの「チョコレート味噌汁」は、すべての材料を絶縁させる強力な代物だった。未知の味には違いない…。(田幸和歌子)