「とまれ」&「止まれ」のあいだに歴史あり
日々、なにげなく目にしている道路上の「止まれ」の文字。本来一時停止および安全確認を促して事故を未然に防ぐための表示だが、改めて見てみると独特の角張りがなんとも味わいのある書体だ。
ところが、ある日この「止まれ」の文字表記が、場所によって「とまれ」とひらがなになっていたりまちまちなことに気がついた。

なんとなくだがひらがなの「とまれ」はかすれて古くなっているものが多く、漢字の「止まれ」は下書きのチョークの跡も生々しく、ペンキもくっきりの新しいものが多い気が…。このささやかだけれど気になる道路文字事情、ぜひ関係者に話を聞いてみたいと思ったのだがいったいどこに聞けばいいのかすらまったくわからない。とりあえず最寄りの市役所で聞いてみたら、なんと道路の文字は交通規制に関することなので警察の管轄だという!なので、さっそく大阪府警の交通規制課というところに電話して聞いてみた。

交通規制課の担当者さんの話によると、この一時停止表示は平成10年に全国的に漢字の「止まれ」に統一することが決まったのだそうだ。現在、順次「止まれ」に書き換えていっている状態という。
つまり、全国的に「止まれ」がスタンダードになった今、ひらがな「とまれ」は消えゆく運命にあるということなのだ!

今はまだけっこうこのひらがな「とまれ」を見かけることも多いが、そのうち超レアものになる日も遠くはないだろう。すべての表示が「止まれ」となる前に、アナタの身近にあるひらがな「とまれ」を探してみるのもイイかもしれない。

ちなみに、この「止まれ」表示以外にも下を向いて歩くと意外な街の歴史がわかってけっこうおもしろい。うす〜く、ほとんど消えかけ寸前の「バス停」の文字が残っていたりして「へー、昔はここがバス停だったんだ〜」とか、かと思うと、新しく運行することになった新バスルートにはいかにも書いたばかりの「バス優先」がひときわ目立っていたり…。

おそらく記録には残らないであろう街の小さな歴史が、道路の白い文字からなんとなく透けて見えてくる。これから街へでる時には、この道路文字事情にぜひ注目して見てほしい。
あ、もちろんドライバーは安全運転もお忘れなく!(野崎泉)