バイク、サッカーと好相性!? 度肝を抜く五月人形
一瞬、何かの間違いではないかと目を疑う真剣さ。「バイク乗り大将 出陣!」は88×50×80センチ。でかっ! ド迫力です。
五月人形とバイク…そんな奇天烈な組み合わせ、かつて誰が思いついたろう。高崎市の「こうげつ人形」がつくる「バイク乗り大将 出陣!」は20万円。
食玩やフィギュアなど、「シャレ」で買えるレベルじゃない。超本気だ。

そもそも「五月人形」は、おじいちゃん・おばあちゃんが孫に買う場合が多いと思うのだが、いったいどんな層を狙ったものなのか。企画者であり、専務取締役の渡辺泉ニさんはきっかけについて、こう話す。
「3年ほど前、中国製で、木彫りのハーレーのようなバイクが手に入ったんですよ。社長である私の兄がもともとバイク好きで、バイクで日本中をまわったりしたほどだったので、シャレで『このバイクに武者大将をのっけてみたら?』と思ったんです」
 
もともと「売れっこない」と思って作ったものが、意外にも4〜5台売れたとか。
専務は現在、59歳。社長は65歳。奇をてらった若者の企画ではないところが、ちょっとツボだ。
「今の人は節句離れしているでしょう? おじいちゃん・おばあちゃんが買ってくれると言っても『いらない』とか『カネでくれ』とか。気持ちはわかりますが…(苦笑)若い人にお節句の啓蒙ができたらという思いもありまして」
 
ちなみに、購入層は、シャレのわかるおじいちゃん・おばあちゃん…なわけではなく、若いお父さん・お母さんが決め、お金を出すのはやっぱりおじいちゃん・おばあちゃんだとか。
「今は若い人が強いから、決定権を握ってるようですね。
もちろん、おじいちゃん・おばあちゃんが『こんなのダメだ』と反対することもありますが(笑)」

それにしても、なぜ「こんなの」と言われるユニークなものをフィギュアなどでなく、あえてきっちり作ったのか? と聞くと「フィギュアなどにすると、全然おもしろくないでしょう。『本物』だから、ウケたんだと思います。『人形屋』としての伝統的な技術を活かすことが、人形屋でやる理由だと思ってますから」とキッパリ。手袋、革靴までつくり、実に本格的だが、これには職人さんたちの抵抗がかなりあったそうで「説得が大変でしたよ」ともらす。
 
また、昨年は非売品として「サッカー武者武将」を作ったが、「欲しい」というひきあいが多かったため、今年から63000円で商品化したところ、すでに十数台も売れているとか。
 
「こうげつ人形」はネットなどで話題となり、高崎にあるにもかかわらず、最近は、東京からドライブがてら見に来る人も多いそうだ。
(田幸和歌子)