歯医者の「痛かったら手を挙げて」に迫る
過去の“放置プレイ”のせいで、すっかり歯医者嫌いになってしまった私。今後は堂々と手を挙げて「痛い」と叫びたいと思います。
「痛かったら言ってくださいね」
子どもの頃、歯医者でそう言われ、「口を使えないのに、どうやって言うんだよ!?」と恨みがましく思ったことがある。その後、「痛かったら手を挙げて」に改善されたが、結果は同じ。
手を挙げても、「ちょっと痛いけど、ガマンしてね」で片付けられていた。じゃ、挙げさせるなよ。

あのセリフにはどんな意味があるのか。もしかして、規則などで決められてるのか。あるいは、歯学部などのマニュアルに書かれているのか。
日本歯科医師会に聞いてみると、
「特に規則などはありません。
いつから始まったかといっても……歯科医が自分の判断で、ごく自然に、ですね」
と広報担当者。
手を挙げるのは、治療中は口をあいてるので、合図を送る方法が手しかないという理由からだそうだが、
「痛いということは、顔をしかめるなどの表情でも普通はわかりますが、お子さんなどの場合、言葉にできず、いきなり治療中に首を振るとか、器具をとろうとすることもあるんです。それは大変危険なので、合図を送ってもらうように言うんです」とのこと。

「痛かったら手を挙げて」と言われても、なかなか挙げづらいものだが、実際に手を挙げる人はいるのか。
「いや、けっこういますよ。子どもなんかは、削る前から手を挙げてたりします(笑)」
そういう子どもに対しての対処法もきちんとあるそうで、
「『まだ何もやってないからね。
そうやって最初から手を挙げてると、本当に痛いとき、わからなくなっちゃうよ』って言うんです(笑)」
まるで狼少年の童話のようです。

ところで、手を挙げたら、その後はいったいどうしてくれるのか。私の場合、「ガマンして」と言われるだけだったけど、そんな気遣いならいりません。
「患者さんが手を挙げたら、『ごめんなさいね』と言って、いったん中断しますよ。『手を挙げて』と患者さんに言うのは、『痛かったらやめてくれるんだ』という安心感を与えるためでもあるんです。実際、痛かったら、麻酔があまり効いていないということだから、麻酔をもう少し増やすとか、方法を考えます。
これは患者さんにとって、とても大事なサインなんですよ」
え〜〜〜〜っ! じゃ、私がムシされてたのは、何だったんだ!? 

本来はとても重要な意味がある「痛かったら手を挙げて」のセリフ。皆さんも今後、痛いときは見栄を張らずに手を挙げましょう。そして、私のようにムシされたら、中断を要求するのもアリかもしれません。
(田幸和歌子)