いま、「ズボンイン」がアツい! と言いたい
街のショーウインドーのマネキンも、オシャレに「ズボンイン」。ズボンイン、きてますよ!
ドラマ『電車男』で伊藤淳史がやっていたように、カジュアルな格好でシャツをズボンに入れるファッションは、一般的にはあまりオシャレではないこととされている。

でも、ある友人の編集者は先日、
「“ズボンイン”がきてますよ!」
と熱弁を振るっていた。

彼女が指摘するのは、犬童一心監督の『メゾン・ド・ヒミコ』出演時のオダギリジョー。
スリムなジーパンに、白シャツを入れたり、これまたスリムなベージュのパンツに白シャツを入れたりという、かなり上級者な感じの着こなしは
「すごくセクシー。『フェロモンイン』ですよ」と言う。

これはさすがに難易度が高すぎて、一般の人がやれるファッションじゃないよなあと思っていたのだが、最近、街でも、若いにいちゃんなどに、この「ズボンイン」、けっこう見かけるようになった。
きれいめファッションが多い『メンズノンノ』のスナップなどを見ても、ズボンインの男性たちは結構載っていて、「シャツをインしたコンパクトなシルエットがポイント」とか「派手めなシャツをあえてスッキリとイン」なんてコメントが添えられている。

そうか、「もっさりイン」じゃなく、「スッキリイン」はオシャレのポイントなのか。

などと考えていたとき、もう一つ、イイ感じの「ズボンイン」を発見した。いま上映中の、森田芳光脚本・監督の『間宮兄弟』である。
佐々木蔵之介演じる兄と、ドランクドラゴン・塚地演じる弟、どちらも「ズボンイン」で、彼らは立派なオタク兄弟という設定ではあるのだが、特に、おにいちゃん役・蔵之介の「ズボンイン」が泣かせる。
おそらく電車男・伊藤淳史と同じような文脈で、従来の「オタク的ズボンイン」なのだろうが、佐々木蔵之介の「ズボンイン」には、たまらない哀愁がある。
それはたぶん、研究員という仕事からもうかがえる几帳面さ、清潔さ、さらに、30歳過ぎて、男兄弟で住んでいるのに、なんだかものすごく「楽しそう」な、子どもっぽさ・純粋さ。
そうした内面をうまく表現しているのが、この真っ直ぐな背中のラインが目立つ「シャツをズボンにきっちり入れること」だと思うのだ。


前者の「フェロモンイン」に対し、これはいってみれば、生真面目さ漂う「哀愁イン」ではないか。
私の場合、後者の「哀愁イン」のほうが、心にグッとひっかかってしまうのだが……。
計算された「フェロモンイン」と、不器用な「哀愁イン」。やっぱり私も言いたい。
「“ズボンイン”が、きてますよ!」
(田幸和歌子)