パンダにも“白髪”が生えるのか?
(写真上から)<br>顔もおじいちゃん?<br>寝ているリンリン。<br>「寝てばかりですが……」パネル。<br>写真ではわからないが、足の下ほうに白いものが。<br>背中の黒い毛が途切れてます
上野のパンダ、リンリン(陵陵・雄)は高齢のため“白髪”があるという話を聞いた。
リンリンは1985年生まれで現在21歳。
本当にリンリンには白髪が生えているのだろうか。これは実際に会いに行って見なければなるまい、ということで上野動物園に行ってきた。

上野動物園についたのは昼ちょっと前。さっそくパンダ舎に行くと、もぬけのからでどうやら外に出ている模様。
が、リンリンは端っこで昼ね中。パンダ舎のところには「寝てばかりですが……」というパネルがあり、高齢のリンリンにとっては寝ることが何よりも健康な証拠と書かれている。快適で安心できる場所だからこそ、よく寝られるということらしい。

そして午後1時半過ぎに再びリンリンの所に行ってみると何とリンリンが元気に動き回っているではないか。
そして周囲はちょっとした人だかり。この日はちょうどジャイアントパンダのスポットガイドの日で動物解説員のボランティアと飼育員の方々がいた。
そこで、さっそくリンリンの白髪について聞いてみた。
「白髪というか、確かに黒い毛のところが白っぽくなってきていますよ。
ほら、足のつけねのあたりとか」

確かに白と黒の境目がぼやっとしているのに加え、足のところは黒い毛のところにはっきりとした白い毛が生えている。
それにリンリン、肩のところの黒がつながっていない! もしや黒の毛はやがて白になってしまうのか!

「あぁ、肩のところの黒い毛がつながっていないのはもともとこの子の特徴です。パンダも個体差がありますからみんな同じじゃないんですよ。でも、リンリンのように肩の黒い毛がつながっていないのはあまりいませんね。ちょっと珍しいです」
そ、そうなのか。リンリンの特徴だったのね。失礼しました。

「人間は自分たちを基準に動物の毛色の変化を白髪とかで表現しがちですけれど、それを人間の老化と同じような白髪と言えるかどうかははっきり言ってわかりません。野生動物についてはそこまでの厳密な研究というのはまだ成されていないのが現実です。隣にやはり高齢のレッサーパンダがいますけれど、この個体の場合は茶色かった毛が色素が抜けて黄色っぽくなってきています。白髪とは言えなくとも毛色には多少の変化がありますね。あと、動作がゆったりしてくるとか、どことなく顔つきも年寄りっぽくなります」

ジャイアントパンダは野生下で20年以上生きている個体が確認されているという。
ただ、個体数が少ないので寿命はどのくらいといったことまではわからないのだという。そして、野生のジャイアントパンダも高齢になると毛が白くなるのかどうかといったこともわからないということだった。

ところで、パンダは21歳で高齢というが、人間に例えるとどのくらいになるのだろう。
「よく聞かれますがそれも正確にはわかりません」と飼育員の方。その後、他の人が私と同じ質問をすると、「だいたい60歳から80歳くらいですよ」という答え。ありゃ、さっきとは違う答えだ。でもある意味この飼育員さんの対応は正しい。
私はかなりしつこくパンダの1年は人間にすると何年くらい? てな感じで聞いたのだが、後に質問した方はさらっと普通に何歳くらい? ていう感じの問いかけで、飼育員さんはそれぞれの質問者の求めている回答をしてくれている。このあたり、さすがプロである。

毛に色素がある動物については何となくわかったが、ではもともと毛の白い動物はどうなのだろう。
「白い毛というのはもともと色素がないわけですから、白は白のままかと思います。でも毛にツヤがなくなることはありますね」とのこと。

確かにうちで飼っていた白毛の犬は生まれてから18歳で死ぬまでずっと毛色は白いままだった。

それにしても今日のリンリンはよく動いている。
「ジャイアントパンダはもともと高地の涼しいところに棲んでいますから、気温が低くて今日のように風がない日は比較的起きていますよ。でも、ほら、パンダ舎への入り口を行ったりきたりうかがっているのでそろそろ帰りたいみたいです。お客さんはリンリンがよく動くと喜ばれますが、パンダにとってはよく動くというのは落ちつかないということでもあるんですよ」

リンリンは21歳。確かに若くはない。もうおじいちゃんなので繁殖は難しいと言われている。野生下で確認されている高齢のパンダに近い年ではある。寝ているだけでもいいから、いつまでも私たちに元気な姿を見せてほしいものである。そう、寝ていることは元気な証拠ですから。

最後に、動物の白髪ではないが、毛の色と肌の色についておもしろい話を聞いた。
白と黒の毛が生えるパンダの肌の色はいわゆる肌色。
シマウマはやや肌色っぽいグレー。毛色と肌が同じなのが牛。白の毛の下は白い肌、黒の下の肌は黒になっている。そして全身白い毛(実際には無色透明)で覆われているホッキョクグマの肌色は紫外線から体を守るために黒色になっているそうだ。
(こや)
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