「電話帳」と「個人情報保護法」の関係
個人情報保護法の「個人データの第三者提供の制限」は、本人から記載の同意を得た電話帳には当てはまらない
仕事がら見ず知らずの人に電話をかける機会が多い。
そのため自分あてにかかってきた電話にもなるべく誠意をもって応対しようとは心がけている。
でもしつこい勧誘電話にはさすがに「カチン」とくる時がある。

先日もほぼ徹夜でもうろうとしているところに「エアコンのクリーニングを」という勧誘電話。
この会社もう少なくとも5回くらい我が家に電話をしてきている。しかも、言っていることが全く同じ。「そうでしたか。でも、うちは個人情報なんとかの関係もあって電話帳を使って電話をしているので……」との何ともトンチンカンな返答。

この間はさすがに「もう5回くらい電話いただいてますよ。電話をしたところをチェックされないんですか」と言うと、「うちは個人情報なんとかで、電話帳を使って……」とまるっきり同じ答え。

個人情報なんとか、ではなく「個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)」となぜきちんと言わんのじゃ〜とイライラしつつも、「お願いすることはありません」ときっぱり断った。でもあの調子じゃまた電話がかかってきそうである。

そもそも電話帳に記載をしておく方が悪いんじゃないの、と言われそうだが、我が家ではやっぱり本来の意味で利用する人もいるだろうし、実際に自分も電話帳があって助かったこともあるので、長年の慣習からかそのままになっている。

ところで、電話帳は個人情報保護法から見るとどのようなものなのだろう。


NTT東日本に問い合わせをすると、「電話帳は公開された個人情報」とのこと。
そもそも電話帳への記載は電話回線の利用を申し込んだ際に電話帳に記載するか、しないかを本人に確認し、記載希望者のみの情報(電話番号・住所・氏名)が掲載されることになっている。その後は本人が掲載の停止を希望しない限り、継続して電話帳に記載され続けるということになる。
個人情報保護法には個人データの第三者提供の制限があるが、「あらかじめ本人の同意」の上、個人情報が記載されている電話帳はこの制限には当てはまらない。このほか、第三者への制限に該当しない項目が4つあるが、字数の関係でここに紹介できないので、ぜひ一度、法令文で確認を。

第三者に公開している電話帳から派生した問題に関しては、電話をかけた側の問題になるそうで、当然のことながらNTT側ではそれに関して一切関与できないのだそうだ。


個人情報保護法は、国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務を定める……と総則にある。違反したものには罰則もある。そしてこの個人情報を取り扱う事業者というのがクセもので個人情報データベース等を事業の用に供している者とされている。ちなみに、1.国の機関、2.地方公共団体、3.独立行政法人等、4.その取り扱う個人情報の量及び利用方法から見て個人の権利利益を害するおそれが少ない者は除くとされている。

よく学校のクラス名簿は個人情報保護法の関連で作らないとか、個人宅でも年賀状の束をそのままゴミに出したら情報漏えいになるとかならないとかいう人もいて、結構ややこしい。基本的には団体、事業者を対象にした法律なので個人は関係ないのだけれど。
でもどこからどこまでを個人情報取り扱い事業者というのかの判断が難しい。

以前私は取材で「株式会社の総数を教えてほしい」と某所に問い合わせをしたところ、「個人情報保護の関連でお答えできません」と言われたことがあった。一瞬「へっ? 株式会社の総数は個人情報とは関係ないのでは?」と思ったのだが、先方がそう言うのでその時はそのまま引きさがった。後日、同じ所に全く同じ問い合わせをすると、別の担当者が対応してくれてすんなり教えてもらったという経験がある。

何につけても全うにそれらしく聞こえてしまう「個人情報保護法」。法令文は素人は読んでもなかなか理解できないけれど、まやかしの「個人情報保護法」という言葉に騙されないようするためにも、一度きちんと読んでみる価値はありそうです。

(こや)

「個人情報の保護に関する法律」について*首相官邸サイト内