
親世代でも、自分の父親なんかはずいぶん優しいし、さらにダンナなどは、言葉も自分よりキレイだし、はるかに穏やかな性分である。
それは喜ばしい半面、小1の娘の友達連中にタメ口をきかれている様など見ると、「もっと威厳があっても良いのではないか」と思えたりする。
女性の場合、「母親」になった時点で、「ほらぁ〜ッ、またあんたはぁッ」などと、かつて自分が母親にやられた怒り方などをごく自然に習得していくものだが(※個人差があります)、どうにも男のほうが「おやじ道」をうまく見つけられない気がしてならない。
そんなわけで、うちのダンナにも、「おやじ道」を簡単に習得できるワザを見つけてあげようと、おやじ界のキング? 『サザエさん』の父・「波平」のおやじ的行動を、『長谷川町子全集サザエさん』(1〜22巻・朝日新聞社刊)から、観察してみることにした。
まず「パイプ」「火鉢」「ステッキ」「股引」などは時代的・年齢的にも取り入れるのがまだ難しそうだが、すぐに真似できそうなのは、「手土産」だ。
全巻を通して、波平が手土産を持って帰ってきたのは、11回。コンビニ袋とかじゃなく、ちゃんと十字にヒモがかかっている寿司折や、肉まん、アイスクリーム、金魚など。家族みんな幸せになるので、これはどんどん取り入れたほうが良いように思う。買ってきて。
次は、「腕組み」。うつらうつらするときも、テレビを観るときも、かあさんとケンカした後も、いつでも座って「腕組み」をする。その数、なんと41回!
ちなみに、歩くときの「後ろ腕組み」も12回見られた。
たいしたことを考えてなくても、なんとなく考えてそうに見える効果があるから、腕組みは偉大である。
また、口調は基本、「〜ですなあ」「じゃろう」、頼みごとは「郵便とっておいで」のように、上から目線の「〜しておいで」調。
勇気さえあるならば、「スミマセン、ゆうびん……あ、やっぱり僕がとってきます」なんて言ってる場合じゃないかもしれない。
そして、きわめつけが、説教!
アニメを観てると、カツオばかりが理不尽なまでに怒られ、逆にタラちゃんなんかは甘やかされすぎていて、「自分がカツオだったら間違いなくグレるな」と思うこともしばしばあるのだが、原作本でも、やはりいちばん怒られているのはカツオで、9回。
サザエは4回で、カツオ&ワカメが2回。
で、驚くべきことに、「よその人」への説教が、なんと8回もある!
いまどき、よそさまに注意するおやじは、そうそういないだけに、なんと勇ましいことか。
ただし、そのうち1回は、暑さに朦朧とし、間違えて他人の家に入って「みんな起きろ!」とどやしただけなのだけど……。そう、実はドジというのも、サザエはちゃんと、お父さん譲りだ。
ざっと拾ってみた波平の「おやじ」的言動。
威厳がほしいときに、さりげなく取り入れてみてはいかがでしょうか。
(田幸和歌子)
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