まる子のおばあちゃんは、ホントに影が薄いか
ボソッと呟く一言が、意外にも、けっこう勝手なおばあちゃん。憧れます。
『サザエさん』の波平も、『ちびまる子ちゃん』の友蔵も、じいさんたちは何かとキャラが立っている。
対して、フネさん、まる子のおばあちゃんの影の薄いことといったら。

思えば、自分なんかは、まる子のおばあちゃんの名前すら知らないという体たらくだ(本当は「こたけ」というらしい)。

でも、フネさんの場合、よく見ると、物静かながら、波平はフネさんに常に頭が上がらないようだし、影で磯野家の実権を握っているのは、このフネさんだと思われる場面も多い。
では、「影が薄い」「目立たない」とされる、まる子のおばあちゃんにだって、本当はけっこうやり手な部分があるんじゃないだろうか。

というわけで、原作から、まる子のおばあちゃんの意外な素顔を探ってみた。
実際、友蔵が初めて登場するのは、第1巻第1話と、のっけからであるのに対し、おばあちゃんの初登場は、第1巻第6話と、遅れ気味だ。
しかも、初めてのセリフが、後ろ頭での「ねえ…」であるという地味さ。やっぱり目立たないな……。
と思ったら、おばあちゃんの意外な過激さは、次の第7話でいきなり登場する。

お正月の話で、「年寄りはなにが気にいるかわからないものである」というナレーションを受け、おばあちゃんは大興奮でこんなことを口走っているのだ。
「ひょ〜〜 まだ鏡もちがこんなにありゃああと5〜6回はくえるな」
「七草がゆの大ファン」ということらしいのだが、その姿に、あの友蔵が「ぜんぶばあさんくっとくれよ」と、顔面におもいきりタテ線を走らせながら呟いているほどの暴走ぶりである。

また、第3巻「盲腸の朝」では、ひどい腹痛で病院に行ったが、原因がわからず、悩みながら帰ってきたまる子に対し、「でも原因はよくわかんないらしいけど たいしたことなくてヨカッタねー」と、能天気な声をかけるおばあちゃん。他人事ですよね。

第5巻「家庭内クリスマス」では、まる子が家族みんなに「もっとクリスマスらしくしよう」と提案するなか、「エスさん(イエス様のこと)のしりあいか おまえはっ」と水をさす父、「エスさんがここにいたらおもしろいんじゃがのう」とのっかる友蔵に、さらに邪悪な顔で笑いながら、話を脱線させるおばあちゃんがいた。
「じいさんや 『しゅ』ってよびな 『しゅ』だよ 『しゅ』 しゅらしゅしゅしゅ イッヒッヒッヒッヒ〜」
まるで酔っ払いのようなイヤな絡み方をしている。シャンペンなのに、悪酔いか。

さらに、第6巻「まるちゃん南の島へ行く」では、せっかく中元ビックプレゼントの特賞「南の島ツアー」が当たったのに、「あたしゃ そうめんセットがほしかったんだよ」って……。現実的かつ、ワガママすぎませんか。

おばあちゃんの登場シーンは、確かに少ない。セリフも少ない。でも、たまに出ると、かなりパンチの効いた本音を繰り出すおばあちゃん。
実は、友蔵よりもずいぶんな自由人だと思いました。
(田幸和歌子)
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