今年は「国際カエル年」! カエルについてかんがえる
(写真上から)<br>井の頭文化園「国際カエル年イベント『カエルよみがえる カエルいきかえる』」の告知ポスター。<br>シュレーゲルアオガエルのオスメス(上がオス、下がメスです)<br>同じくシュレーゲルアオガエル(左)とトウキョウダルマガエル(右)、これらカエル9種が同園水生物館で見ることができる。<br>「国際カエル年」の今年生まれた井の頭自然文化園のキャラクター「いのかえる」
「国際カエル年イベント『カエルよみがえる カエルいきかえる』」――先日、吉祥寺の井の頭自然文化園に行ったときに、こんな告知ポスターを見かけた。同園で4月から12月にかけて行われるカエルに関連したイベントの数々を掲載したものだが、ここで目に留まったのが「国際カエル年」というワード。
どうやら2008年の今年は「国際カエル年」らしいのだが……。なんとも気になったので、井の頭自然文化園の教育普及係長の天野未知さんにお話を伺ってみることに。

この「国際カエル年」とは、国際自然保護連合(IUCN)と世界動物園水族館協会(WAZA)が中心となって2005年に発足した『両生類の箱船』プロジェクトが提唱したもの。この1年を通して、世界におけるカエルをはじめとした両生類(イモリ、サンショウウオ等)全体の危機的状況を知ってもらい、両生類を救うための活動の参加を呼びかけた世界的なキャンペーンで、4月現在、国内では動物園、水族館などの39施設がこの呼びかけに応じていて、世界では324施設46カ国が参加しているという(WAZA調べ)。

財団法人東京動物園協会が管理運営する井の頭自然文化園、恩賜上野動物園、多摩動物公園、葛西臨海水族館の4園もこのプロジェクトに賛同し、今年の1月に「国際カエル年活動宣言」を提唱、カエル保全に向けた活動が進められている。

天野さんによると、4園が合同で行っている活動としては、井の頭自然文化園ではツチガエル、恩賜上野動物園ではトウキョウダルマガエル、多摩動物園ではヤマアカガエル、葛西臨海水族園ではニホンアカガエルなど、それぞれ担当種を決め、飼育・繁殖・研究に取り組んでいるとのことだ(これは「国際カエル年」の前から行われている)。

また、2月から11月にかけて、園内に東京都の白地図を設置し、「カエルを見かけた」人に対象の場所にシールを貼ってもらう「東京でカエルを見かけたヨ! マップ」の掲示や、カエルデーイベント、野外でのカエル観察会、講演会なども計画しているという。

ところで、カエルをはじめとする両生類が危機的状況ということなのだが、現在、世界に両生類はわかっているだけでも約6000種いるとされ、その内、3分の1以上が絶滅のおそれがあるという(IUCN調べ)。

この絶滅危機を加速させている原因には何が考えられるのだろうか?

天野さんによると、日本国内の場合は、水田や小川といった生息環境そのものがなくなってきていることをはじめに、水田の乾田化、農薬の使用、小川の水路がコンクリート化されたことなど開発整備による生息環境の変化、外来種の存在といったことが一因となっているとのことだ。
また、酸性雨、オゾン層の破壊による紫外線の増加(両生類はウロコや毛をもたないため影響を受けやすい)、急激な天候の変化など地球温暖化による影響や、近年では「カエルツボカビ症」といった問題が浮上している。

このカエルツボカビ症とは、「ツボカビ」という真菌(カビ)がカエルの皮膚を侵し、海外の事例では感染すると致死率が90%以上という恐ろしい感染病。オーストラリアや中南米の方では一部の種類のカエルが壊滅状態に追い込まれたという。
日本でも、2006年12月に初めて飼育中のカエルでツボカビ症が確認されたというニュースが話題になったが、現在のところ野外でのカエルの大量死は確認されていない。ただ、継続した調査が必要で、まだ安心はできない。

この「国際カエル年」の1年を通して、井の頭自然文化園では、「国際カエル年イベント『カエルよみがえる カエルいきかえる』」と称して、様々なイベントが行われる。

主に関東で見られる水辺の生き物、その中でも「かつては身近にいた」生き物の展示に以前から力を入れている同園の水生物館では、4月26日から8月31日にかけて、特設展示「ずっとカエルとくらしたい」を開催。ニホンアマガエル、トウキョウダルマガエル、シュレーゲルアオガエルといったカエル9種が常時展示され、カエルはそもそもどんな生き物なの? から、カエルに今ふりかかっている危機的状況、カエルとともにくらしていくために私たちができることは何か? などがパネル展示で紹介されている。

今回、同園で興味深いのは、驚異的なジャンプ力、エサをとる瞬間技などカエルの優れた身体能力や生態を紹介するイベントや、カエルを題材にした童話、アニメ、マンガ等の展示、工芸品やカエルグッズの展示、さらにはカエルの鳴き声を歌にした曲などが披露されるボサノバコンサートといった、カエルそのものの展示以外にも多彩な催しが用意されているところ。


「カエルは好き嫌いが分かれる生き物だと思うんですが、特にニガテな人たちにもカエルに関心をもってもらえるように、様々な方向からカエルのすばらしさを紹介しています。ミラクルな能力をもつカエルの生き物としてのおもしろさを紹介し、その魅力を知ってもらったり、過去から現在に至るカエルを題材にした工芸品などを展示することによって、カエル文化は形を変えながらも綿々と続いていて、カエルは日本人にとって昔から身近な生き物だったんだ、ということを知っていただけたら」と天野さん。

一連のお話を伺って、子どもの頃、田舎のイエのまわりには田んぼが残っていて、カエルの合唱がウルサイと思っていたことを久しぶりに思い出したが、そんなカエルたちが減りつつある現状はなんとも寂しい。カエル好きの人はもちろん、カエルには関心がなかった人、さらには「カエルはちょっと……」という人もオススメのイベント。是非、一度足を運んでみませんか?
(dskiwt)

井の頭自然文化園公式サイト*東京ズーネット