ドラマの「待ちぼうけ」シーンが少なくなったのは……
実生活ではなくてはならない携帯電話。ドラマ内でも重要な小道具なのでしょう
最近の恋愛ドラマを見ていて思うことがある。「待ちぼうけ」シーンが少ないのだ。
「待ちぼうけ」シーンとは、読んで字の如し、来ない相手のことを待っているというシーンである。

仕事に夢中でデートの約束をすっかり忘れている彼氏。そんな彼氏を健気に待ち続ける彼女。そして雨がドーン!

ベッタベタな演出ではあるが、ひと昔前までの恋愛ドラマには欠かかせないものだったはずだ。そこから何かしらの展開が始まり、少なくても2話分は稼いでいたと思う。

なぜ最近のドラマに、「待ちぼうけ」シーンがあまり見られなくなったのか? 「待ちぼうけ」シーンをこよなく愛する私は、その原因が分かっている。ズバリ携帯電話のせい!

携帯電話を持っていれば待ちぼうけの被害は激減する。相手が時間通り来なければ連絡すればいいわけだし、デートの約束を忘れている彼氏だって、彼女から電話があれば思い出すだろう。なにより、いつでも連絡が取れる携帯電話があれば、待ち合わせ自体せずに出会うことだって可能なのだ。

誰もが携帯電話を持っているこのご時世では、「待ちぼうけ」シーンなんてやれるはずもない。つまり、携帯電話が普及したせいで「待ちぼうけ」シーンができなくなってしまったのではないか?

そこで、知り合いのシナリオライターに「携帯電話のせいで恋愛ドラマが作りにくくなったのでは?」と聞いてみた。

「個人的にはそんなことはないと思いますよ。
今の時代、携帯電話は誰もが持っていますからね、ドラマには重要な小道具として当然使われます」

作りにくくなっていない? でも、「待ちぼうけ」シーンは実際に見られなくなっているではないか?

「確かに待ちぼうけのシーンは、最近ではあまり見られないかもしれません。でも、それは携帯電話のせいというよりキャラ設定が原因でしょう。今の時代『いつまでも彼氏を待っている女』より、『来ない奴はほっとく』という女性像のほうが支持されると思われます、男性にも女性にも。当然そういったキャラを生かす演出をするわけで、待ちぼうけのシーンはそれに合わないということではないでしょうか」

……確かに、言われてみればそうかもしれない。大好きな「待ちぼうけ」シーンが少ないのを、携帯のせいにしようとしていた私の思惑はもろくも崩れ去った。そればかりか、携帯電話という小道具はドラマにおいてさまざまな活用法があるとか。

「携帯電話にはメールやカメラなどもついています。そういった機能を使えば、今の時代ならではのシーンが生まれることも多いんではないでしょうか? 逆に、ドラマ内で携帯電話を一切使わずに、設置電話や公衆電話だけを使うとする。それだけで、舞台が携帯電話が普及する前、つまり90年代初頭や80年代が舞台だよ、という表現ができるんです。携帯を使わない、というだけで。これも、携帯電話がもの凄く普及してるからできる手法ともいえます」

携帯電話の普及はドラマ制作にとって邪魔物でしかないと思っていたが、現場はそんなこと微塵も思っていないようだ。
今や80%を超えるともいわれる携帯電話の普及率。
実生活にはなくてはならないこのツールは、ドラマ制作においても絶大なる影響力があるようだ。
(ドープたつま/studio woofoo)
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