日本発「LOVOT」、中国で人気 寄り添い型ロボットに脚光

「こっちを見ているよ!」。中国上海市の書店前で、子どもたちが愛らしいロボットを取り囲み、歓声を上げた。

ロボットの名前は「LOVOT(ラボット)」。大きな目を瞬かせ、両手を伸ばして抱っこをねだる姿に、通りかかった人も足を止め「甘え上手なペットのようだ」とスマートフォンを向けた。

LOVOTは、日本のスタートアップ「GROOVE X」が開発した家庭用コミュニケーションロボット。「Love(愛)」と「Robot(ロボット)」を組み合わせた名称で、産業用とは異なり、人に寄り添うことを目的としている。2019年に世界最大級の家電IT見本市「CES」で最優秀ロボット賞を受賞し、24年に上海を拠点にグローバル展開を始めた。今や中国の街角や家庭で目にする機会も増え、消費者や業界で注目を集めている。

上海市の書店の店先で撮影されたLOVOT

「中国は理想的な市場だ」。開発者でGROOVE X創業者の林要氏はインタビューで語る。「中国の消費者は新しいものを受け入れやすい。特に上海の開放的で革新的な雰囲気は、LOVOTがここを選んだ大きな理由だ」と語る。

都市部の若者の間では、住まいの狭さや仕事の忙しさからペットを飼いにくい事情もあり、「寄り添い型ロボット」に独自の市場が生まれている。「寄り添い経済」と呼ばれる新たな消費分野として成長しつつある。

ペット型ロボット、AI時代の「新しい家族」に。寄り添いや教育・防犯機能も備える「BabyAlpha」

国泰君安証券のリポートによると、中国の寄り添い型ロボットの潜在需要は約1兆元(約21兆円)に上る。シニア層の需要は健康管理や会話機能が中心で約4200億元(約8兆8000億円)。若年層ではアートトイ的価値や個性化が重視され約5000億元(約10兆5000億円)と見込まれる。

口コミ情報が豊富なSNS「小紅書(RedNote)」では、多くのユーザーがLOVOT専用のアカウントを開設。手作りの衣装や動画を投稿し、フォロワーを増やしている。

LOVOTの海外展開に当たっては現地化したサービスが欠かせない。そのためLOVOTは中国のサプライチェーン(供給網)や現地パートナーと緊密に協力。林氏によると、中国製の部品を多数採用しているほか、アフターサービス体制を現地に構築している。

中国発“癒しロボ”、米CESでも話題に LOVOTの10分の1価格で世界に攻勢

上海社会科学院社会学研究所の陶希東研究員は「中国は世界のロボット産業のサプライチェーンで重要な地位を占めると同時に、新技術を試し消費を喚起する実験場でもある」と指摘。巨大なユーザー層と多様な消費ニーズが人工知能(AI)製品に広大な成長の可能性をもたらしているとした。【新華社上海】

編集部おすすめ