今年の海外メジャー第2戦「全米プロゴルフ選手権」がいよいよ現地時間20日(木)に開幕する。4月に行われた「マスターズ」で日本人初のメジャー王者となった松山英樹が次に狙うメジャータイトル。
今回、松山のエースキャディを6年間務め、今回もゴルフネットワークでTV解説を務める“大ちゃん”こと進藤大典氏に、松山とともに歩んだ全米プロの軌跡を振り返ってもらった。今回は『バチッとはまった』2016年について。
全米オープン全英オープンでの予選落ち…からの4位
2013年から18年まで松山のバッグを担いでいた進藤氏には忘れられない大会がある。16年の全米プロだ。プロデビュー年の13年には「全米オープン」で10位タイ、「全英オープン」でも6位タイ、そして15年、16年では「マスターズ」でそれぞれ5位、7位タイ。日本人初のメジャー大会制覇に期待がかかるなか、16年の全米オープン、全英オープンでまさかの連続予選落ち。
それだけに、4位タイに入った全米プロは「うれしかった」と振り返る。
当時の全米プロは8月開催。ただし、この年は「リオ五輪」の影響もあって、7月末の開催だった。4月のマスターズ、6月の全米オープン、7月の全英オープン、そして最後の全米プロ。1年に最後のメジャーで失敗すると、次のメジャーまで8カ月待たなければいけない。それだけに、ここでの好成績が不振脱却のいいキッカケになった。

「個人的には16年の大会がトップ10に入れたのでうれしかったですね。私の中ではまずはぜんぶのメジャーでトップ10に入って、徐々にステップアップしていきたいと思っていました。全米プロだけ(トップ10に)入れていなかったので、余計にうれしかったです」。プロ転向後、輝かしい成績を残してきた松山のいちばん近くにいた進藤氏にとって、この大会はまさに大きなターニングポイントになった。
■バチッとはまるときがある 16年の全米プロがそうだった
「選手もキャディもそうなんですが、『バチッ』とはまるときがあるんです。それがこのときは初日の2番か3番だったんです。
これはいけるぞ、と思ったんです」。初日を1アンダーにまとめると、2日目には3つ伸ばしトータル4アンダーの9位タイで大会を折り返した。
3日目は悪天候のため順延となったが、日曜日に再開後の第3ラウンドでも3アンダーをマークし、首位と4打差の5位タイで最終ラウンドを迎えることとなった。その最終ラウンドでも2つ伸ばし、最終的には首位と5打差の4位タイ。メジャーでのベストを更新した。「結果が出ない時期だったのもありましたし、そのあと良い流れに入っていけたという点でも、大きな意味がありました」。

ここで一気に上昇気流に乗った松山は、PGAツアーのプレーオフシリーズでも好結果を残し、いまでも記憶に新しい、絶頂期を迎えることになる。10月には「日本オープン」、そして「WGC-HSBCチャンピオンズ」ではアジア人として初の世界ゴルフ選手権制覇。「三井住友VISA太平洋マスターズ」でも優勝し、ツアー外競技ながら世界のトップのみが競う12月の「ヒーローワールドチャレンジ」でも勝利した。世界ランキングを一気に上げて、名実ともに世界のトップクラス、それもほんの一握りのスターへと駆け上がっていった。
そんな好調をキープしながら入った17年。進藤氏にとっても経験したことのない、大きなプレッシャーと戦うことになった一年。
松山とともに歩む戦いが、あの17年全米プロへとつながっていく。
■進藤大典
しんどう・だいすけ 1980年生まれ。京都府出身。松山英樹と同じ明徳義塾高、東北福祉大ゴルフ部出身の経歴を持つ。2003年1月から同級生の宮里優作の専属キャディとなりツアー転戦を開始。同年3月に大学卒業。
その後は谷原秀人の専属キャディとなり06年にツアー初優勝。09年には片山晋呉の専属キャディ、13年から松山英樹の専属キャディとなり、18年まで務め米ツアー5勝を果たした。岩田寛も大学の同級生。現在はテレビ解説や執筆業、講演なども行う。