海外メジャー初戦「マスターズ」の最終日、後続と3打差のトップで出たのは、直近5戦中3勝で世界ランキング1位のスコッティ・シェフラー(米国)。その背中を今季“第5のメジャー”「ザ・プレイヤーズ選手権」を制したキャメロン・スミス(オーストラリア)が追った。
好調同士の最終組対決となったが、「71」をマークしたシェフラーが逃げ切りで悲願のメジャー初優勝。スミスは「73」と崩して3位タイに終わった。現地でラウンド解説を務める米国男子ツアー1勝の今田竜二に明暗分けた二人について聞いた。
世界最強フェーダー! シェフラーのドライバースイング【連続写真】
■3番のチップインでシェフラーが運を引き寄せた
「シェフラーのハイライトは3番でしたね」。3打差を追って出たスミスは1番、2番連続バーディで1打差に詰め寄る。3番はともにパーオンを逃したが、シェフラーはグリーン手前からチップインバーディ、スミスはボギーと差が広がった。

シェフラーは1番のティショットを左の林に打ち込んだが、2打目をグリーン奥に運び、アプローチを1メートルに寄せてパー発進を決めていた。「1番でしっかりパーをセーブして、3番はボギーでもおかしくない状況でチップイン。差を詰められてプレッシャーを感じていたシェフラーにとって、一日の運を引き寄せたといっても過言ではないと思います」。
スミスは続く4番パー4もボギーとして、シェフラーとの差は4打に広がり、そのままの差でバックナインに突入。11番パー4ではスミスが起死回生のバーディで3打差に詰め寄る。「これからプレッシャーをかけられるぞ、っていう時の12番のティショットのミスが痛かった」。
スミスの12番の1打目は池に消え、結局トリプルボギーと大きく後退した。
12番パー3の最終日のピン位置はお決まりの右奥。スミスはピン方向を狙って池に落とした。「(何勝もしている)タイガーとかを見ていると、どれだけトップと差があってもあのピン位置は狙いにいきません。12番はバーディを取ることよりも、バーディチャンスにつけることが先決です。12番で先に打つ選手は、まず少し遠くてもバーディチャンスにつける。
そうすれば次に打つトップの選手にプレッシャーをかけられるものです」。もちろん、スミスがいいショットをしてピンの近くに止める可能性もあっただけに結果論ではあるが、マスターズを制する“定石”とは違う攻め方が裏目に出たかたちだ。
■月2ペースで試合に出て勝負勘を磨いたシェフラー
二人の違いとして挙げたのがマスターズに向けた準備だ。スミスは今年に入って出場試合は月1ぐらいのペース。「ザ・プレイヤーズ選手権」を制してから3週間開けてマスターズに乗り込んだ。対してシェフラーは、2月の「WMフェニックスオープン」でツアー初優勝を遂げ、月2ペースで試合に出場。
「WGC-デルテクノロジーズ・マッチプレー」で優勝後、1週開けてマスターズに乗り込んだ。
「スミスは3週間開けたことで勝負勘が鈍っているんじゃないかと思っていました」と大事な場面でバーディを奪えなかったり、ボギーをたたいたと指摘する。「逆にシェフラーは優勝しても続けて出場し、試合勘、勝負勘を研ぎ澄ませてきていました。そういう面でも、マスターズに向けて調整してきた感じを受けました」。試合勘を研ぎ澄ませてきたシェフラーは、勝負どころでいいショットを打ち、ボギーをたたかなかった。終始ゲームをリードできたことも勝因に挙げた。

シェフラーは2月にツアー初優勝を遂げてから、わずか2カ月で世界ランキング1位の座についた。“歴代最も無名な世界一”と揶揄する声もあったというが、「このマスターズの優勝により、本当の意味で現時点での世界ナンバー1になったのではないでしょうか。身長190センチと体も大きいですし、ハートもビッグです。スイングも大きい。やっぱりテキサス出身ですね」と新スターが誕生した瞬間だったという。決してフロックではなく、高いポテンシャルに準備をして重ねてきた結果のグリーンジャケット。
真の世界一となったシェフラーから目が離せない。
■今田竜二
いまだ・りゅうじ/1976年10月19日生まれ、広島県出身。テレビで見た「マスターズ」に憧れて、14歳で単身渡米。アマチュア時代の米国ランキングはタイガー・ウッズに次ぐ2位。下部ツアーを経て2005年から米国男子ツアーに参戦。2008年「AT&Tクラシック」で日本人3人目の米国男子ツアー優勝を遂げ、翌09年にあこがれのマスターズに出場した。2022年のマスターズはTBSのラウンド解説を務めた。


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