
AI関連職とそれ以外の給与格差が拡大
Bizreportがアメリカ全土を対象に実施した調査によると、AIに関連する仕事は他の職業に比べ、平均77.53%も給与が高いことがわかった。ITエンジニアをはじめとするテクノロジー関連職は、もともと他業種より給与が高い傾向があったが、AIの重要性の高まりによってさらに拍車がかかっている。実際、テクノロジー系と非テクノロジー系の職業では、全国平均36%の給与格差がある。
もっとも格差が大きい地域はグアムで、AI関連職の平均給与(年間)が約14万ドルに対し、その他の職種の平均給与は約5.2万ドルと、3倍近い開きがある。それ以外にもサウスカロライナ州やコネチカット州、ルイジアナ州など、AI関連職とそれ以外の職種の賃金差が2倍以上である州は少なくない。
求人サイトに提示されているAI関連職の年間給与額の一例を挙げると、Salesforceが募集するAIアーキテクトは23.3万ドル~35.6万ドル(約3,435万~5,248万円)。インテルのAIインフラエンジニアは約25万ドル(約3,685万円)、ブーズ・アレン・ハミルトンの生成AIエンジニアは10.6万ドル~24.2万ドル(1,563万~3,568万円)となっている。
AIに代替される仕事がある一方、「新しい仕事」も

一方で、AI関連の新たな職種やポジションも出てきている。
最近登場したAI関連の新しい職種や役職には、AI責任者のほか、AIオフィサーやAIエンジニア、AIスペシャリスト、AIアドバイザー、AIデータサイエンティストなどがある。なお、AI責任者を置く米国企業は、過去5年で3倍に増加した。
あらゆる業界でAI人材の需要が急増

LinkedInが発表したレポートによると、OpenAIがChatGPTをリリースした2022年11月以降、ChatGPT関連の求人は21倍に増加したという。また、米国の求人サイトIndeedでは、生成AI関連の求人がここ1年で5倍近く増えており、中小企業を中心とした求人アプリZipRecruiterでは、2023年7月の生成AI関連の求人数は1,309件と過去最高を記録した。
LinkedInのチーフエコノミスト、カリン・キンブロー氏は「“仕事の進化”は従来と比較して非常に速くなっている」と指摘する。前述のBizreportでは、2024年にはコンピューターサイエンス市場におけるAI関連職は13.1万件以上発生する可能性があり、同業界の30%がAI関連になると予測している。また、LinkedInの登録者は、自分のプロフィールにAI関連スキルを記載する人が急速に増えているという。
実際、AIを「使える」人材需要は、多くの業界で高まってきている。
かつて「コンピューター」が普及し始めたとき、人々は「コンピューターに仕事が奪われてしまうのではないか」と危惧したが、実際は「あらゆる仕事でコンピューターが活用されるようになった」という方が正しい。
AIをこれと同列考えるべきではないかもしれないが、「AIを使いこなす」ことは、あらゆるサービスや業種、職種で求められるスキルになっていくことは確かである。「AIが当たり前の時代」になったとき、労働市場はどう変化しているのだろうか。半歩先の未来を、見てみたい気がする。
文:矢羽野晶子