「僕にとっては当たり前の視点が、どうやら他人にとっては偏屈だったり面倒くさかったりする」と本書の冒頭で述べているように、「ひねくれ者界のひねくれ者」である小川さん。普通なら悩みの種になりやすい人間関係についても、小川さん独自の視点で極力ストレスを抱えない考え方をされているようです。
今回はコミュニケーションにまつわる苦手意識について、小川さんにお話しをお聞きしました。
■「コミュ障」だと悩む人は、実は人の気持ちが分かる優しい人
——本書を読むと小川さんは人間関係やコミュニケーション上の問題を、自分の考え方次第で、うまく「いなして」いるように見えます。コミュニケーションが苦手で、「コミュ障」であることが悩みだという人に何かアドバイスをいただけますか?
小川さん:自分はコミュニケーションが苦手だ、コミュ障だと言う人ほど、話は相手にちゃんと伝わっているか、あるいは相手は自分と一緒にいて本当に楽しいのだろうかと、きちんと考えたり、感じたりできていますよね。相手の快・不快や不満を感じ取れているということだと思います。
それを気にしているからこそ、苦手意識があったりするんですけど、本当に下手な人って苦手意識もないと思うんです。むしろ自分でコミュニケーション強者だと思っている人ほど、自分の話を相手に押し付けているだけだったり。だから、コミュ障だと思っている人は、僕からするとコミュ障ではないです。
無言だって、「無」なだけであって「不快」も与えていないですよね。沈黙を生み出しているのは、自分だけのせいじゃなくてその場にいる全員の責任ですし。気まずく感じるなら、それはあなたが優しいだけで、あなたのせいではないですよ。
■最初から完璧に話せる人はいない。「生煮えの話」ができる相手を持とう
——そうは言っても、沈黙以前の問題として言いたいことがうまく伝わらないという状況もあると思います。説明し過ぎてもくどいですし、足りないと分かりにくい。小川さんの場合はどうやって話を組み立てているのでしょうか?
小川さん:僕も何かの話をするとき、1回目ではそんなに満足する出来にならないです。何度も同じ話をしているうちに、例え話が分かりづらければ別の例えを試してみたりとか、ディテールを変えたりとか、推敲しますね。
だから大事なのは、まだ完成系じゃない生煮えの話をしゃべれる相手がいるということだと思います。家族でも友人でもいいのですが、一度話してみて、こういう話し方をするとここが伝わりづらいなとか、ここはよかったなとかが分かると、他の人と話すときによりよい形でしゃべれたりしますね。最初から完璧に話せる人はなかなかいないと思います。
僕が知る限り、話がうまい人って大体そういう完成系じゃない話ができる相手がいますね。例えば芸人さんとかもラジオでまず一度話してからそれをネタにしたりとかするじゃないですか。話のプロですらそうなので、普通の人なら最初からうまくしゃべれなくて当たり前だと思いながら、その状態でも話を聞いてくれる人がいると理想的ですね。
最近だったらChatGPTなどのAIもあるので、試しにAIに話してみるのもいいんじゃないですかね。
■気を遣って疲れるくらいなら、「自分が楽しむ」ことを優先する
——コミュニケーションが苦手な人の中には、気を遣い過ぎて疲れてしまうという人もいますよね。
小川さん:そうですね。でも、自分が気を遣って疲れているときは、相手も疲れていると思います。もちろん、仕事であれば取引先のつまらない話を聞かなければいけない状況もあるでしょうけれど、プライベートであれば、気を遣い過ぎているということはコミュニケーションが不自然になっているということです。
だからどちらかと言えば、自分が疲れないように、自分が楽しくコミュニケーションができるようにまずは考えるのがいい気がしますね。それで嫌われても、少なくとも自分は楽しいので。自分も疲れて、相手にも面白くないと思われたら、二重で損じゃないですか。
ただ楽しむといっても、自分のしたい話だけをするということではありません。会話の面白さって、互いの興味関心が重なったりして、その2人でしか起きえない化学反応が起きる瞬間にありますよね。それは気を遣い過ぎているとなかなか起きないですし、そういった意味で自分が楽しむって必要だと思います。
■全員に好かれるのは無理。「自分が相手を好きになる」方が大事
——また本書では、「人間関係に悩むのは傲慢(ごうまん)である」とも小川さんは述べています。他人の感情はコントロールできないのだから、人から好かれたいなんて傲慢な考えだということかと思いますが、大多数の人はみんなから好かれたいと思ってしまうものです。それを気にせずにいるには、どのようなメンタルの保ち方をされているのでしょう?
小川さん:相手から好かれようとするのは、僕からするとナンセンスなんです。嫌われないように気を付けることはできますけど、相手が自分のことを好きになるかどうかは、その人がどういう人生を歩んできて、どういう好みを持っているかに依存するので、こちらがコントロールできることではないんですよね。
でも、自分が相手を嫌いにならないことならできます。結果論として、自分が好きな人は、相手も自分のことを好きでいてくれることが多いと思いますし、自分の感情にフォーカスした方が人生が豊かになる気がしますね。
しかも僕みたいな人は、こちらの顔色ばかりを伺う人があまり好きではないので、全員に好かれようとするのはそもそも無理です。自分が相手のことを好きになるということの方が大事な気がしますね。
■正解はない。自分の生き方を振り返るための「斜め」の視点
——最後に、「処世術」というとある種「人の役に立つ話」ということだと思うのですが、『斜め45度の処世術』はどんな風に読んでもらいたいですか?
小川さん:僕は人にこうするといいですよ、とか言えるような人間ではないので、教えを乞うというよりは、他の人がどういう風に考えてどう生きてるか、ちょっと見てみようくらいの感覚で読んでもらうのがちょうどいい気がします。
処世術って、何か1つの正しい答えがあるのではなくて、その人自身が自分の人生の中で自分なりに折り合って見つけていくものなので、こんな生き方や考え方をしている人間もいるんだなと、自分の生き方や考え方を振り返るための参考にしてもらえればと思います。
本書を読みながら、家族関係や友人関係、仕事の人間関係などを「斜め」に見る思考をたどっていくと、きっとさまざまな気付きを与えてくれるでしょう。視点を少し変えれば、驚くほど心は軽やかになります。
ぜひ、本書を通じて、小川さんの「斜め」な考え方に触れていただき、自分の生き方を考えるヒントにしていただければと思います。
1986年千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程退学。2023年に『地図と拳』で第168回直木三十五賞を、『君のクイズ』で第76回日本推理作家協会賞を受賞。ほかの著作に『君が手にするはずだった黄金について』『スメラミシング』『火星の女王』などがある。『君のクイズ』は2026年、映画化が決定している。
この記事の執筆者:大野真(おおの・まこと)プロフィール
フリー編集者/ライター。編集プロダクション、出版社勤務(書籍編集・雑誌編集)を経てフリーランスに。主な制作担当書籍に上野憲示監修『決定版 鳥獣戯画のすべて』(宝島社)、本郷和人著『「ナンバー2」の日本史』(ハヤカワ新書)、島村恭則著『これからの時代を生き抜くための民俗学入門』(辰巳出版)など。
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