失業した際に、次の就職先を探すまでの間、生活の支えとなるのが失業保険です。失業保険の受給の際にはいくつか注意すべきポイントがあり、受給中のアルバイトもそのうちの1つです。
今回は失業保険受給にかかわる注意点をまとめてみます。

■失業保険とは?
失業保険とは、次の就職先が決まるまでの間に雇用保険から支給される給付のことで、正式には「基本手当」といいます。

なお分かりやすさを重視し、本記事内では特に断りがない限り「基本手当=失業保険」として記載します。
失業保険は離職日前の2年間に、雇用保険に通算して12カ月以上加入した方が、失業状態にあると認定された場合に受け取れます。

失業状態とは以下の3つを満たす場合を指します。

・積極的に就職する意思がある
・いつでも就職できる能力(健康状態・環境)がある
・積極的に仕事を探しているが職業につけていない

そのため就職の意思がない方や、病気やケガ、妊娠、出産、育児、介護等ですぐには就職できない方、また既に次の就職先が決まっている方や、自営業を営んでいる方などは対象外です。


■離職理由で失業保険を受け取れる日数(所定給付日数)は大きく変わります
失業保険は、退職理由や離職時の年齢、また雇用保険の加入期間によって受け取れる日数(所定給付日数)が大きく変わります。
失業保険を受給する際の注意点とは?受給中にアルバイトはできる?
失業保険(基本手当)の所定給付日数

例えば45~60歳未満で雇用保険に20年以上加入していた方が、会社の倒産や解雇(いわゆる会社都合)で離職する場合の所定給付日数は330日ですが、自己都合の場合は150日と日数が半分以下になります。

最近よく耳にする「希望退職」や「退職勧奨」は「会社都合」です。退職時に渡される離職票の離職理由の記載に間違いがないか必ず確認しましょう。

なお失業保険が受け取れるのは、原則として離職した日の翌日から1年間(*1)です。それ以後は、所定給付日数が残っていても受け取ることができませんので、離職後はなるべく早くハローワークに行くことをお勧めします。


*1:所定給付日数330日の方は1年と30日、360日の方は1年と60日、また病気、ケガ、妊娠などで30日以上働けない場合は受給期間を延長できます(最長で3年間)

■失業保険の一日あたりの支給金額(基本手当日額)は?
失業保険の一日あたりの支給金額(基本手当日額)は、離職する直前の6か月間の賃金合計を180で割った金額(賃金日額)の45~80%です。また上限額が設定されています。
失業保険を受給する際の注意点とは?受給中にアルバイトはできる?
失業保険(基本手当)の基本手当日額(出典:厚生労働省)

例えば離職時45~60歳未満の方で、離職する前の賃金日額が16,980円であれば、一日あたりの支給金額は8,490円です。仮に離職前の賃金日額が16,980円を超えていても、支給金額は上限額である8,490円となります。なお基本手当日額は毎年8月に改訂され、その後1年間は変わりません。

■離職理由で失業保険の支給開始日が異なります
失業保険は離職後すぐには受け取れません。
ハローワークに離職票の提出と求職の申込みを行った日(受給資格決定日)から、通算して7日間を「待機期間」と呼び、支給の対象となるのは「待機期間」が満了した日の翌日からです。また「自己都合」による離職の場合はさらに2カ月(*2)、重責解雇(*3)の場合は3カ月の「給付制限期間」があり、この期間が経過した翌日からが支給対象の日になります。

離職理由は失業保険の支給日に影響を与えます。繰り返しになりますが、離職票の離職理由の記載に間違いがないか、必ず確認しておきましょう。

*2:令和2年9月30日以前の退職の場合は3カ月、5年以内に2回を超える場合も3カ月
*3:自己の責任による重大な理由による解雇のこと

■失業保険の受給には求職活動実績が必要です
失業保険を受給するには、4週間(28日)に1回、指定された日(失業の認定日)にハローワークに行き、「失業認定申告書」に2回(*4)以上の「求職活動実績」を記載、提出したうえで、失業の認定を受けなければなりません。

求職活動実績となるのは、求人への応募、ハローワークや許可を受けた民間機関での職業相談・職業紹介・講習・セミナーの受講、再就職を目的とした国家資格や検定の受験などです。
単に新聞やインターネットで求人情報を閲覧した、知人への職業紹介依頼などは活動実績に含まれないので注意してください。

*4:給付制限期間がある場合は3回

■失業保険の受給中にアルバイトはできる?
失業保険の受給中にアルバイトはできるのでしょうか。結論を言うと「アルバイトはできるが失業認定申告書に記入が必要」となります。失業認定日に提出する「失業認定申告書」には「就労」や「内職または手伝い」について申告する欄があります。

なお「就労」と「内職または手伝い」の違いは、働いた時間が4時間以上か未満かの違いです。
失業保険を受給する際の注意点とは?受給中にアルバイトはできる?
アルバイトをした日は失業認定申告書に記載が必要です

画像の例の2月16日と2月26日の×(バツ)印は4時間未満の「内職または手伝い」を示しており、2日分の収入4000円は2月28日に収受しています。
また3月10日の○(マル)印は4時間以上の「就労」を示しています。なお「就労」したの日の収入金額は記載する必要はありません。

失業保険は「内職または手伝い」の日は減額されて支払われますが、「就労」の日は支払われません。ただし「就労」の日については所定給付日数が減るわけではなく、最終支給日が「就労」した日数分後ろ倒しになります。

ちなみに7日以上の雇用契約を結び、週の所定労働時間が20時間以上かつ週の就労日が4日以上の場合は、「就職」として扱われてしまいますので注意してください。

アルバイトを申告せずに失業保険を受給すると「不正受給」となり、それ以降の支給は行われないばかりか、不正受給した金額に加え不正受給額の2倍相当額以下の金額の納付が命ぜられます。


正しく申告をすればアルバイトを行っても構わないのですから、失業認定申告書にはありのままを記載するようにしてください。

■まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は失業保険(基本手当)を受給する際に、注意しておくべきことをまとめてみました。失業保険は次の就職先を探すまでの、経済的な支えとなります。退職した際には失業保険が受給できるよう、早めにハローワークに来所し手続きを行ってください。

また失業保険だけで生活が苦しい場合はアルバイトも可能です。ただし隠さずに必ず申告をしてください。

文:川手 康義(ファイナンシャルプランナー)

CFP・1級FP技能士。製薬会社に勤務し、お金にも詳しいMR(医薬情報担当者)として活躍。日本FP協会に所属しており、協会会員向けの研修会や一般の方へのセミナーの企画・運営活動にもボランティアとしてかかわる。