老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。
そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。今回は、68歳まで年金を受け取っていない場合、繰り下げによって増額した年金を受け取るか、65歳からの年金をさかのぼって受け取るか迷っている方からの質問です。

■Q:68歳でまだ年金を受け取っていません。「繰り下げ受給」と「65歳からさかのぼって受給」、どちらがいい?
「1958年7月生まれの女性です。現在、まだ年金を受給していません。そろそろ受給しようと考えていますが、今まで繰り下げた分を反映して増額された年金をこれから受け取るか、65歳から受け取るはずだった年金をさかのぼって受給するか迷っています。それぞれどのような違いがあるのでしょうか?」(じゅんじゅん)

■A:繰り下げ受給を選ぶと今後の年金額が増えます。一方、65歳からの年金をさかのぼって請求すれば、これまでの年金をまとめて受け取れます
老齢基礎年金と老齢厚生年金は、原則65歳から受け取れますが、66歳以降75歳まで繰り下げて受け取ることができます(1952年4月1日以前生まれの方は70歳まで)。

繰り下げ受給では、65歳から繰り下げた月数に応じて、1カ月当たり0.7%ずつ年金額が増額され、その増額率は一生変わりません。

例えば、68歳0カ月で請求した場合、65歳から36カ月繰り下げたことになり、増額率は25.2%(0.7%×36カ月)です。

一方、繰り下げによる増額を選ばず、65歳時点にさかのぼって本来の年金額を請求することもできます。この場合、65歳からこれまでに受け取っていなかった年金がまとめて支給され、その後は繰り下げによる増額のない年金額を受け取ることになります。


つまり、68歳時点で考えると、「これまでの約3年分は受け取らず、今後の年金を25.2%増やす」のか、「これまでの約3年分をまとめて受け取り、今後も65歳時点の本来の年金額を受け取る」のか、という違いです。

どちらが有利かは、今後どのくらい長く年金を受け取るかによっても変わります。繰り下げ受給を選択すると毎年受け取る年金額が増えるため、長生きするほど総受給額では有利になっていきます。一方、さかのぼって受給すれば、これまで受け取っていなかった年金をまとめて受け取れるため、現在まとまったお金が必要な場合などには選択肢となります。

また、繰り下げによって年金額が増えると、その分、所得税や住民税、国民健康保険料、介護保険料などに影響する場合があります。単純に年金の額面だけで比較するのではなく、税金や社会保険料への影響も考えておく必要があります。

なお、過去の年金をさかのぼってまとめて受け取った場合、原則として全額が受け取った年の所得になるわけではありません。それぞれ本来支給されるべき年分の所得として扱われるため、過去の年分について確定申告などが必要になる場合があります。

また、じゅんじゅんさんは1958年7月生まれの女性とのことですので、厚生年金の加入記録などの要件を満たしていれば、65歳になる前に「特別支給の老齢厚生年金」を受け取れる世代です。

特別支給の老齢厚生年金には繰り下げ制度がありません。受給権があったにもかかわらず請求していない場合は、65歳以降の老齢基礎年金と老齢厚生年金とは別に確認する必要があります。年金を受け取る権利には原則5年の時効がありますので、未請求の場合は早めに年金事務所などで確認しましょう。


じゅんじゅんさんの場合、手元資金に余裕があり、今後の年金額を増やして長生きに備えたいのであれば、繰り下げ受給が選択肢になります。一方、現在まとまった資金が必要であれば、65歳からの年金をさかのぼって受け取る方法も考えられます。

まずは年金事務所などで、「現在の年齢で繰り下げ受給した場合の年金額」と「65歳にさかのぼって請求した場合に受け取れる金額」を確認し、ご自身の手元資金や今後の生活設計と合わせて検討するとよいでしょう。

監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー)
都市銀行や保険会社、保険代理店での業務経験を通じて、CFP、証券外務員の資格を取得。相談業務やマネーセミナーの講師、資格本の編集等に従事。日本FP協会の埼玉支部においてFP活動を行っている。
編集部おすすめ