約20年振りの完全新作劇場作品として絶賛公開中の『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』。本作のヒロインであるラクス・クライン役を演じる田中理恵さんに、「SEEDシリーズ」への思いや、今回の最新作の見どころ、ラクスを演じる意気込みなどについてうかがった。


※本文にはネタバレ要素が多く含まれます。劇場版ご鑑賞前の方はご留意ください。

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──約20年ぶりに劇場新作が公開されると聞いた時の思いは、どんなものでしたか。

田中 私たち出演者はずっと信じて待っていましたので、本当に満を持して、という感じがして嬉しかったですね。やっとまたラクスを演じることができるという喜びで一杯でした。

──田中さんは「SEEDシリーズ」の作品の魅力や面白さについて、田中さんはどんな印象を持たれていましたか。


田中 戦いたくないのに戦いに行かなければならない人間模様がとてもリアルに描かれていて、すごい衝撃を受けました。「これを観て、あなたはどう思う?」という大きいテーマを突きつけられ、考えさせられる作品だったと思います。

──では田中さんにとって、ラクスとはどのようなキャラクターですか。

田中 『SEED』でのラクスは、すごく掴みどころがないフワッとしたキャラクターだったんです。プラントの歌姫として振舞う一方で、人々と対話をする中でカリスマ性を表現していく面もあり、当時の私としては演じるのがすごく難しかった印象がありました。
続く『DESTINY』では、戦うことにためらいながらも一度心を決めれば前へ出る凛とした強い人物像が打ち出され、さらに難しいキャラクターになってしまいました。
当時の私はまだ二十代ということもあり、本当に必死でしがみつくようにして演じていました。

──その続きの物語となる『FREEDOM』の台本を最初に読んだ時の感想をお聞かせください。

田中 前半・後半の2回に分けて収録させていただいたんですが、それぞれの台本の色がキラとラクスのカラーだったんです。それを見ただけでもうグッときてしまって泣きそうになってしまいました。
読んで驚いたのは、オルフェという新しいキャラが出てきたことでキラとラクスとの関係がギクシャクしてしまい、キラがすごくネガティブになってしまう姿が描かれていて、心が締め付けられる思いがありました。
他にも新しいキャラがたくさん出てきて、どんな方たちがどういう風にアフレコするのか、とても楽しみになりました。


──本作でのラクスとキラの関係については、いかがでしたか。

田中 最初、二人はもっとラブラブになっているのかなと思っていたのに、すれ違っている印象があることを不思議に思っていたんです。でも、ラクスのキラに対する気持ちは揺るがないし、むしろ深まっていったことが物語を通して理解できたので安心感はありましたね。ラクスは弱ったり苦しんだりしながらも前に進もうとするキラが一番好きなんだろうな、と納得できるお話になっていると思います。

(C)創通・サンライズ

──アフレコにはどのような気持ちで臨みましたか。

田中 今までゲームの収録などで演じる機会はあったんですけれど、アニメのラクスの声を演じるのは久しぶりということから、当日は絶対ベストの状態でやりたいと思って、アフレコ前日から絶対声がおかしくならないように、すごく気を遣いました。
そのまま気を張り詰めた状態で現場に入りました。

──現場では、他のキャストの方とお話などはされたのでしょうか。

田中 全然周りの人とは話さず、役に集中していた感じです。それは私だけでなく、みなさん必死で台本を眺めていたと思います。まずテストがあって、本番前にも「こういう風に演じてください」という監督からの説明を真剣に聞いていましたので、ずっと緊張しながら収録していましたが、森(なな子)さんが演じるカガリと一緒にアフレコができたのは嬉しかったですね。まさか一緒に録れると思ってなかったので、舞い上がってしまいました(笑)。


──演じてみて感じた、本作でのラクス像はどのようなものでしたか。

田中 キラと一緒にいる時は『SEED』の時と同じフワッとしたラクス像なのですが、オルフェと対峙する時には彼女自身の意思の強さを感じました。そこでは対話をするというよりも、彼女自身の気持ちを剥き出しにしていた印象がありますね。オブラートに包まずはっきり「ノー」と言うラクスはすごく新鮮でしたし、新たなチャレンジにもなりました。

──そうしたラクスの強い意志を示す部分は、監督からの指示だった?

田中 「(語気や感情を)強めにやってください」「しっかり『ノー』と跳ね返してください」という指示がありました。監督がすごく細かく演出してくださったので、そのラクス像に近付けていけるように軌道修正しながら演じていった感じです。


──今作は「愛」がテーマということで、キラとラクスのロマンス要素についてはどう思われていますか。

田中 『SEED』『DESTINY』の時は頬のキスとかハグぐらいしかなかったんですが、そこから2年が経過した劇場版の中では、もっと踏み込んだ形でラクスの愛が真っ直ぐキラに向いていることを感じることができました。
あと、最終的に二人の未来を彷彿させるビジョンが見えたのはすごく嬉しかったですね。山あり谷ありな関係だったけれども、最後は揺るがない愛を手に入れることができたわけですからね。
それが強く感じられるエンディングになっていたことにも、とても感動しました。二人が行き着いた先の姿をリハーサルVで初めて観た時には、思わず泣いちゃいました。あと、ラストのセリフを読んだ時に「ここに両澤(千晶)さんがいてくれたらな」って……(目にたまった涙をぬぐって)そこは両澤さんの思いも重ねるつもりで、頑張って演じました。

──キラとラクスが一緒に戦うシーンもありましたが、そこはいかがでしたか。

田中 想像もしなかったので、本当にビックリしました。しかも出撃シーンで「ラクス、行きます!」と言う機会をいただけるとは思っていなかったので、家で何回も練習してアフレコに臨ませていただきました。
「ラクスの声でどうやってやったらいいかな?」と考えながらいろいろなパターンを試してみましたので、実際に完成した映像でどうなっているか楽しみですね(笑)。しかも合体シーンは「エンゲージ」ですからね、これはもう「結婚だな」って(笑)。二人の気持ちが結ばれた最初の共同作業がモビルスーツでの戦闘だったのは、素直に「すごいな」って思いました。

──最後に、ファンに向けてメッセージをお願いします。

田中 観始めたら、あっという間に終わってしまうと思います。その位の体感なので、多分一回観ただけだと分からないことが多いんじゃないでしょうか。なので、何度も足を運んでほしいですね。
皆さんの新たな推しになるだろう新キャラクターもたくさん登場しますので、もう余すことなく観て楽しんで頂けたらと思います!

田中理恵(たなか・りえ)
1月3日生まれ。オフィスアネモネ所属。主な出演作は『機動戦士ガンダムSEED』(ラクス・クライン役)、『ローゼンメイデン』(水銀燈役)、『ふたりはプリキュア Max Heart』(九条ひかり役)、『ガールズ&パンツァー』(西住まほ役)ほか。

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