1979年の『機動戦士ガンダム』から30年以上にわたって、拡張を続けるガンダムシリーズ。その中でも1996年に放送された『機動新世紀ガンダムX』は、ファーストガンダムで提唱された“ニュータイプ”という概念に、バイタリティ溢れるガロードの成長を通じて、真っ向に向き合った作品だ。

そんな本作のBlu-rayメモリアルボックスが、2018年3月23日(金)に発売される。これに先駆け、アニメ!アニメ!では主人公ガロード・ランを演じた高木さんへインタビューを敢行。当時の収録エピソードや作品を改めて見返しての感想、放送から21年にわたって作品を支えてくれたファンへの想いなど、『ガンダムX』にまつわる様々な事柄をお聞きした。

『機動新世紀ガンダムX』
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■ガロードやティファ…キャラクターそれぞれにとっての成長物語

――2018年3月23日に本作のBlu-ray BOXが発売されますが、本日はその特典であるオーディオコメンタリーの収録があったそうですね。あらためて作品をご覧になられていかがでしたか?

高木渉(以下、高木)
当時の思い出が蘇ってきました。こんなの作ってたなぁという想いと、自分の初々しさをちょっと感じたりして。
21年前というと、赤ん坊が成人するぐらい経っているわけですからね。

あらためてストーリーを見返すと、キャラクターたちの成長物語だったと思います。がむしゃらなガロードがティファと出会ってひと目惚れして、この子を守ってあげたいというところから始まる。そこからニュータイプを取り巻く争いや、ティファとの交流を通じて、初めてガロード自身に信念や動機が生まれて、そこから物語も大きく動いていく。そうしたキャラクターと連動した、物語のうねりも味わい深いです。

またジャミルやロアビィ、ウィッツ、トニヤ、サラなどフリーデンのクルーそれぞれのストーリーも掘り下げられていて、そこも物語に彩りを与えています。
フロスト兄弟や、命令できない王子のウィリスも印象深いキャラクターでした。

――高木さんがガロードとして一番印象に残っているキャラは誰でしょう?

高木
やっぱり一番はティファでしょう(笑)。あとは…うん~、難しいなぁ、それぞれに皆さん印象的ですからねぇ。カトック・アルザミールも好きだったなぁ…。
4話ひと括りで物語が進んでいくんですが、そのゲストキャラクターによってスタジオの雰囲気がガラッと変わるのが印象的でしたね。見返すと今はもう亡くなられた声優さんもいて、あのお芝居がもう見られないのかと思うと本当に残念です。


――ゲストキャラクターと言えば、エニルやカリスはレギュラーキャラクターに引けを取らないほど活躍をします。

高木
エニルは怖いお姉さん、やべぇ殺されるかも、みたいな感じ(笑)。カリスについては、自身が人工ニュータイプであることから、僕とは真逆の側面からの悩みを持っていることで友情が芽生えたキャラクターだったと思います。

――そんな中でも、ティファはガロードの行動原理と言えるところがあります。

高木
ガロードはニュータイプではないけれども、何かティファと通じるものがあるんです。オルバとシャギアみたいなテレパシーはなくても、心は通じ合っている。
物語の終盤、ふたりはちゃっかりキスしてましたが(笑)、かけがえのないパートナーとなってフリーデンのクルーと共に未来に向かって歩んでいったのかなと思います。

■ガンダムの主人公という重い責任を背負う覚悟と、何も考えずに走った現場

――ガンダムの主人公を演じると決まった当時のご心境はいかがでしたか?

高木
これから『ガンダム』という大きな看板を背負っていくんだなと思うと武者震いしました。嬉しい気持ちの反面、僕で大丈夫なのかなという不安もありました。
オーディションでは、確かフロスト兄弟のどちらかの役で受けたと思います。高松信司監督がその時の僕の声を聴いて、ガロード・ラン=我が道を走る、というキャラクターに僕の声が合っているのではないかと再オーディションになったと聞いた記憶があるのですが…(笑)。今までニュータイプだったり、ちょっと影のある主人公像が多かったところに、破天荒で無鉄砲な少年を放り込む。
そんな未完成な少年には、良い声じゃない、がらっぱちな僕の声の方が良いと感じてくれたんでしょうか(笑)。あらためて良い縁をいただいたと思うし、『ガンダムX』という作品に携われて本当によかったです。

――実際、現場で演じられてみていかがでしたか?

高木
座長と言う意味では、僕が引っ張っていかなきゃという想いが強かったですね。僕が一生懸命やることで周りの皆さんも付いてきてくれるんだと思っていましたから。そして収録を終えてみて、改めて自分ひとりではなく周りの役者さんにしっかり脇を固めてもらえてこそ良い作品になるんだと感じました。今でもその気持ちは変わらないです。
自分が主役の時は特にですが、「よし、俺が引っ張っていくぞ」「今日は俺がスタジオの空気を作るぞ」という気持ちで現場入りするようにしています。スタジオ収録の雰囲気ってやっぱり画面を通してお客さんに伝わると思うんですよね。挨拶ひとつにしても僕が先頭に立ってやることで収録の雰囲気が変わってくる。そういうことを学んだ場所でもありました。

――ほかの出演者さんも含めたアフレコ現場の雰囲気はどうでしたか?

高木
ティファ役のかないみかちゃんやトニヤ役の三石琴乃、シャギア役の森川智之など、共演者に同年代のメンバーがすごく多かったんです。このメンバーに加えて堀内賢雄さんがいるとなっては、この作品は間違いなく面白くなるぞと感じましたね。いつも賢雄さんから「頑張れよ、渉!」という想いを背中から感じていたし、まさに「何も考えずに走れ!」と言葉を貰ったような心境でした。

――作中のガロードとシンクロするところがあったと。

高木
ジャミルとガロードの関係と、賢雄さんと僕の関係が、どこか似ている部分があるんです。賢雄さんは、僕のデビューの頃からずっと可愛がってくださった尊敬する大先輩なんです。時に厳しく普段は甘く(笑)、いろいろと教えてくださったので役柄においてもどこかリンクするところがありましたね。

――とても雰囲気のいい現場だったんですね。

高木
とにかく賢雄さんが場を盛り上げてくれました。かかずゆみちゃんや中井和哉くんなんかはまだ新人だったし、スタジオにも慣れてなくて硬くなる時もあったので、そういう緊張感をほぐすためによく冗談を言って笑わせてました。それと、ティファは本番は無口だけど本番が終わるとめっちゃ喋るんです。その時は、もうかないみかちゃんね(笑)。
みんなどこかキャラクターと似ているんです。さっきまでBlu-ray BOX用のオーディオコメンタリーの収録をしていたのですが、かかずちゃんはサラみたいに今でもしっかり者で、収録のために今までの台本や資料を持って来たんです。とても細かいところまで気を使っているんですよ。ところが、かたや琴乃は「どんな話だったっけ? 私、もう覚えてないのよねー♪」みたいな。もう、まんまトニヤでしょ?(笑)。

一同
(笑)。

高木
そういうキャストみんなの素から出てくるものが、現場の雰囲気やストーリーにも反映されていたと思います。だから変にかしこまらず、装わないで自然にガロードを演じることができました。

今回のオーディオコメンタリーの収録は、本当に良い機会をいただきました。あれから21年。森川も望くんも今やほとんど現場で会えなくなってしまって、中井くんや山崎たくみさんともなかなかご一緒する機会が無いし、三石琴乃とかかずちゃんとは今は『ドラえもん』でしか会えないし、みかちゃんとも一緒の仕事がほとんど無いので、懐かしさと共に久しぶりにガンダムXを語り合えて本当に楽しかったですね。D.O.M.E.の光岡(湧太郎)さんとはそれこそ21年ぶりの再会でした。嬉しかったなぁ~。

――ガロードの役作りや演じ方で意識されたのは?

高木
僕はニュータイプじゃないので、裏をかくより真正面からぶつかって行こう!そんな気持ちで演じていました。何か先走って迷惑をかけてしまっても、「ジャジャーン!」なんて言っちゃっても、周りのみんなが許してくれる。いや、本当は許してくれないと思うけど(笑)、呆れながらも真っ直ぐな気持ちを受け止めてくれる。だからあまり深く考えずに、台本を読んで感じたままを演じていこうと思いました。

■『ガンダムX』を支えてくれたファンへの想い

――ガンダムシリーズの主人公を演じたことは、ご自身にとってどのような影響を与えていますか?

高木
もう21年前の作品だから、声優さんの中にも「『ガンダムX』見てました!」という人がいて、当時見てくれていた人がいま同じスタジオにいるんだと思うと、やっぱり嬉しいですね。若い声優さんの中には「いつかガンダムの主人公になりたい!」という人も多くて、そう考えるととても光栄なことです。

話はソレてしまいますが、放送時間が朝に移動したときはビックリしましたね。

――放送時間の変更(※)はキャストのみなさんにも衝撃があったのでしょうか?

(※第27話より、関東では金曜夕方5時から土曜朝6時に移動した。他の地方では変更無し)

高木
もちろん驚きはありましたけど、だからといってそこまで大きな影響はなかったです。自分たちで良い作品を作っていると信じていましたし、必ずガンダムXを見て応援してくれる人はいると思っていましたから。正直なところ個人的には視聴率がどうこうとかは分からないので、多くの人に見てはもらいたいけど、好きな人は必ず見てくれると思っていました。最初は「打ち切りガンダム」なんて言われましたけど(笑)、実際、放送から21年経った今でも根強いファンの方はいらっしゃいますからね。

――放送中、そういった視聴者の反響は気にされていたんですか?

高木
飲みながら、ファーストガンダム以来だよなんて冗談言ってました(笑)。希少価値があるでしょ?そういう意味では僕たちは特別だね、なんて言ったりして。でもあらためて作品を見てくれたり、『スーパーロボット大戦』などを入り口として再び注目されたり、「『ガンダムX』大好きでした!」と言ってくださる根強いファンがいて、本当に有難いことです。

当時、イベントもそんなになかったんですよ。それこそ、ガンダム30周年で開催された「GUNDAM BIG EXPO」くらいです。時を経てもフィーチャーして貰えているのはすごく嬉しいです。

――放送から約20年が経ち2018年3月23日には本作のBlu-ray BOXが発売されます。根強いファンの方にとっては待望のBlu-ray化だと思いますが、そんなファンの皆さんに向けてメッセージをお願いします。

高木
かつての名作がBlu-rayによって蘇ることに感慨を覚えます。またHDリマスターによってハイクオリティな絵で見られることや、オーディオコメンタリーなど新しい特典もいっぱい付いてくることも嬉しいですね。
リアルタイムでご覧になられていたファンの方は、21年前に戻ったように懐かしみながら見てほしいです。かつて子供だった人が大人になって、「お父さんこんなのに夢中だったんだよ」って子供に見せてあげる。そうやって語り継がれて行って欲しい。『ガンダムX』はそれができる作品だと思います。

「機動新世紀ガンダムX Blu-rayメモリアルボックス」

発売日: 2018年3月23日【1年間の期間限定生産】
価格: 52,000円(税抜

(C)創通・サンライズ