このラストシーンには、ジャパンオリジナルだからこそ描くことができる意味深の演出が込められていたようだ。
9月15日放送のドラマ「六本木クラス」(テレビ朝日系)第11話では、主人公・宮部新(竹内涼真)の心が女性二人のあいだで揺れ動く姿が描かれた。
「久しぶりに二人きりで飲むことになった新と優香。葵がいつも新のそばにいることへの嫉妬なのか、新に『私のこと、まだ好き?』と訊ねます。以前ならすぐに好きだと言っていたはずの新は話をはぐらかし、その態度に危機感を覚えたのか優香は新の手を取って『好きって言ってよ』と迫ったのでした」(テレビ誌ライター)
盤石と思われていた新と優香の関係に変化が訪れたその瞬間、店には偶然にも葵が現れた。葵の視線に気づき、思わず優香の手を振り払う新。もはや彼の心が葵のほうに傾きかけていることは明らかだ。
だが当の葵は、新が優香と親密そうにしている姿を見て、その場から逃げ出すことに。追いかけようとする新に「行かないで」とすがる優香。果たして新の選択は!?
「新は結局、葵を追いかけることを選びました。その姿に視聴者は《山が動いた!》と、新の心変わりに驚いたことでしょう。その一方でアイドル好きの視聴者は別の意味で大きな驚きを感じることに。それは葵と新が走り回っていた場所が理由だったのです」(前出・テレビ誌ライター)
葵は物語の舞台である東京・六本木を象徴する六本木ヒルズに逃走。
それに対して新は、六本木ヒルズの南側にある通りをさまよいながら葵の姿を探すも、彼女を見失うことに。ここではカメラが新の周りをぐるっと一周し、その場所がどこなのかをわざと見せつけていたようにも見えた。そんなラストシーンには特別な意味がこもっていたというのである。
「新が葵を探していた場所は『六本木けやき坂通り』。葵を演じる平手がかつて所属していたアイドルグループ『欅坂46』で命名の由来となった通りです。平手は欅坂46のシングルすべてでセンターを務めるなど絶対的なエースとして君臨していましたが、2020年1月に脱退。それゆえこの場面を選んだのは、『いくら「けやき坂通り」で葵(平手)を探しても見つかるはずがない』という意味だったのではないでしょうか」(アイドル誌ライター)
この場面、原作の韓流ドラマ「梨泰院クラス」では店を飛び出したチョ・イソ(葵に相当)がタクシーに乗って去っており、追いかけるパク・セロイ(新に相当)はあっさりとあきらめていた。つまり、新が六本木けやき坂通りで葵を探しまわっていたのは、「六本木クラス」ならではの演出というわけだ。
この「六本木クラス」で“欅坂”が舞台となったのは、今回が初めて。これまではあえて避けているのではと訝るアイドルファンもいたようだが、どうやら第11話のラストシーンを印象的に演出するため、ここまで出番を残していたのかもしれない。