大学対抗女子大生アイドルコピーダンス日本一決定戦の「UNIDOL 2024 Summer 決勝戦/敗者復活戦」が8月27日に開催された。
今回で22回目を迎える本大会の会場となったのは8月2日~4日に開催された「TOKYO IDOL FESTIVAL 2024」(TIF2024)のステージの一つでもある東京・台場のZepp DiverCity(TOKYO)。
決勝戦には全国5地区の予選を突破した15チームに加え、当日の敗者復活戦を勝ち上がった2チームを含めた全17チームが出場。パフォーマンス審査員は振付ユニットの「CRE8BOY」、振付師のみつばちまき氏、日本テレビの毛利忍プロデューサー、映像監督の森田亮氏らが担当した。
熱いパフォーマンスが繰り広げられたなかで優勝を勝ち取ったのは、8分間という限られた持ち時間で個性あふれるステージを見せた早稲田大学の「夏目坂46」。審査員順位 1位、会場観客票順位 4位、オンライン観客票順位 2位を積み上げ、総合得点の457点は2位に13点差をつけての勝利となった。
夏目坂46は創設者の望月優夢を中心に、2019年の結成当初から「ガチ愛ファンマーケティング」戦略でSNSや集客に注力。家族のように愛し応援し続けてもらえるチーム像を確立し、毎回の予選では常に上位突破を果たしていた。ただ昨年2月の冬大会で初優勝した後はあと一歩で優勝を勝ち取れず、予想外の結果に観客からどよめきが起こることもあった。
今大会の決勝では予選の段階からガラリとメンバーを変え、初優勝を経験したメンバーを数多く揃えての陣容に。多くのチームが本番で披露する楽曲を事前公開するなか、夏目坂46はセットリストをオールシークレットとする形に挑戦。
囲み取材で非公開の意図を問われると「愛というテーマを4曲通してよりインパクトを持って伝えるために、全部シークレットにしてパフォーマンスだけで届けられるようにしたいなと思っていました」と、高い表現力を強みにしているからこその戦略がうかがえた。
そんな「愛」をテーマに、今回披露したのは『愛の重さ』(STU48)、『RIBBON』(群青の世界)、『自業自得』(櫻坂46)、『Monopoly』(乃木坂46)の4曲。
パフォーマンスの前半では純粋に一方的な愛で満たされていたはずが、いつしか相手からの愛に気づき、背負う責任の重さを知る主人公。やがて思いに秘められた責任に応えるように強くなり、共に目指す場所まで強く歩いて行こうという成長を感じられる構成だった。そういった愛が繋ぐ関係の重さと、向き合って成長する強さが、まさしく家族のような愛に支えられた「ガチ愛マーケティング」の定義と重なる部分もあり、夏目坂46らしいパフォーマンスだったと言えよう。
加えて驚くべきは楽曲のチョイスだ。
1曲目に披露した『愛の重さ』(STU48)はパフォーマンス映像の解禁から2カ月ほどしか経っておらず、この短期間で完璧に仕上げてきたパフォーマンス力の高さにはSNS上でも驚きの声が見られた。思えば初優勝時も当時メディア披露がほとんどなく、MV公開から1カ月半ほどの『渡り鳥たちに空は見えない』(NGT48)を披露して会場を驚かせていたもの。パフォーマンス力に妥協しない姿こそが彼女たちの強さの秘訣だろう。
後半では愛の痛みや過去への後悔を刻みながらも前に進もうとする様子、そして思いの強さゆえの嫉妬心から独占欲に駆られながらも相手を理解しようとする愛の熟成までの物語を感じられた。
曲間の衣装チェンジや、大型スクリーンに投影される映像の効果的な演出は高評価に繋がったと審査員もコメント。なかでも銃声の効果音に合わせて背景のペイントカラーが割れ、純白の衣装に早着えする演出は実に特徴的だった。この演出は『自業自得』(櫻坂46)のMVでカラフルに汚れた白衣装の構図への既視感を感じさせ、会場からは楽曲の披露前から期待する歓声があがっていた。
本家の櫻坂46ではセンター山下瞳月のしなやかなソロパフォーマンスが見どころだが、それゆえコピーするには高いダンス力が要求される。
そのポジションを見事に踊り切った夏目坂46のかえでは、昨年の早稲田祭で『Start over! 』(櫻坂46)のセンター藤吉夏鈴のポジションを務め、TikTokで30万弱の視聴数を叩き出すなどUNIDOL内外で話題になった実力者。UNIDOL界隈では知らぬ者のいない高い表現力を持つ彼女に続くかのように、他のメンバーたちもボルテージを上げることで完全に場を圧倒してみせた。
最終的にはこの強弱ある表現力が評価されてか、ベストパフォーマンス賞も3回連続の受賞を果たした。
『Monopoly』(乃木坂46)では同じく初優勝を経験したしおり、りながセンターパートを担当し、曲終わりには手に結んだカラフルなスカーフをなびかせるパフォーマンスも。同時期の加入で、チーム内では「ふるーちぇ」としてコンビを組むなど、シンメとして活動をしてきた2人。途中でスカーフが出てこないアクシデントがありながらも本家さながらの息の合ったパフォーマンスでやり切った。
【夏目坂46 優勝インタビュー】
Q 優勝時の率直な感想は?
A まだ全然実感がなくて信じられないんですけど、2年前に初めて優勝した時とは違って、今は自分たちが引っ張る代になって優勝できたのは、代が変わっても強いチームっていうことを証明できたんじゃないかなって思えてすごく嬉しい気持ちです。
Q 衣装の使い方がすごく綺麗ですがこだわりなどあれば教えてください。
A 私たちは坂道を中心にしたコピーサークルチームなので、ロングスカートをいつも衣装にしていて、今回は後半の曲でスカーフを出さなきゃいけないのが難しくて、結構私たちの中では苦戦してたんですけど、そこが上手くいってよかったなって思います。
Q 2年前の初優勝から今回2度目の優勝に当たり意識したこと
A 練習の雰囲気やメンバーは違えど、常に優勝した時の経験が比較対象になっていて、あの時よりできているかを参考にしているので、そこを超えることを意識していました。とくに優勝を経験しているメンバーは下の代に伝えていかなければと思って練習していました。
Q 大会に初めて出場したメンバーはここまでの雰囲気づくりなどいかがでしたか?
A 大会に出るのが初めてで、どうやってやればいいのか分からない部分もある中で先輩たちがすごく引っ張ってきてくれました。
コロナ禍で大会が中止になって以降、夏冬を連覇するチームは未だ現れていない。常にアップデートし続ける夏目坂46が次回大会でディフェンディングチャンピオンとしてどんなパフォーマンスを仕上げてくるのか、注目が集まるところだ。
なお2位には昨年度夏の優勝チームとして連覇を狙っていた「chocolat lumière」(明治大学)がベストドレッサー賞と合わせての受賞。3位は前回大会の雪辱に燃える「さよならモラトリアム」(慶應義塾大学)が受賞した。
前回の大会では関西勢の活躍が光ったが、今回は早慶明で並び称される3大学のチームが表彰台を独占。学園祭や単独ステージなどを重ね、さらに成長していくであろう各チームの姿に今後も期待したい。
【大会結果】
優勝:夏目坂46(早稲田大学)
準優勝:chocolat lumière(明治大学)
第3位:さよならモラトリアム(慶應大学)
ベストドレッサー賞:chocolat lumière(明治大学)
ベストフェアプレー賞:恋色モノポリー(日本女子大学)
ベストエモーショナル賞:やっぱりまかろん。(同志社大学)
ベストパフォーマンス賞:夏目坂46(早稲田大学)
ベストステージング賞:HELLO DOLL. (北翔大学)
(取材・文:遠藤葵/写真・公式提供)