2021年6月に14年ぶりのモデルチェンジを発表するや人気沸騰! 今や納期4年というトヨタの高級大型クロスカントリー「ランドクルーザー」とはどのようなクルマなのでしょう。今回は7人乗りモデルのガソリン仕様車をお借りし、4年待ちの魅力を探ってみたいと思います。
トヨタのSUV全部乗り企画第一弾!
ASCII.jp自動車部のゆみちぃ部長こと、アイドルユニット「純情のアフィリア」の寺坂ユミさんとともにした自動車取材も、そろそろ1年が経ちます。過去色々なクルマを試乗してきましたが、避けてきたメーカーがあります。それは、ゆみちぃ部長の出身地である愛知県に拠を構えるトヨタ。というのも、ゆみちぃ部長は実家も近所もトヨタ車ばかりの環境で育ちました。それゆえか、プライベートで利用しているカーシェアもトヨタ車ばかり。ですからASCII.jp自動車部員は「せっかくなので、トヨタ以外のクルマに乗ってもらおう」と、あえて避けていたわけです。

とはいえ、さすがに不自然に思ったのか各所からご指摘が。そして何よりトヨタにはゆみちぃ部長が大好きなSUVがいっぱいあります。ならば「トヨタのSUVに全部乗る!」というオソロシイ企画が立ち上げまして、今回から毎月1台、トヨタのSUVに乗ってもらうことになりました。その記念すべき1回目はゆみちぃ部長は大きな車が大好きというので、フラグシップともいえるランドクルーザーを選んだのです。
納期がオリンピック並のランクル
その実力をSUV好きアイドルが検証!

ランドクルーザーが誕生したのは1954年6月のこと。とはいえ、これはランドクルーザーという名前になってからの話で、その源流をたどると戦時中の1944年に誕生した日本陸軍・四式小型貨物車こと「AK10型」四輪駆動車にまでさかのぼるのだとか。そう、ランドクルーザーは80年近い歴史があるクルマなのです。

そんなランドクルーザーとはどのようなクルマなのでしょう。
「ランドクルーザーは、トヨタでもっとも古く、もっとも信頼されている車だと思う。“誰もが行きたい時に行きたい所に行き、どこからでも帰ってこられる”をブランドポリシーとして、変化する時代のニーズに応えてきた。日本でその性能が求められることは稀だが、なぜ世界中の人々がランクルを選ぶのか、なぜ日本でもランクルのファンがいるのか、その性能や魅力を味わっていただければと思います」


そういうと小鑓氏はメッセージボードに「ランクルは地球上最後に残るクルマであると認識して開発に臨むべし!」「ランクルの使命 お客様の命、荷物、夢を運ぶ。行きたいときに行きたいところに行け、必ず帰ってこれるクルマにしたい!」と記しました。これほど簡潔にランドクルーザーとは何かを伝える言葉ないでしょう。
すべてが巨大なランクル



ということでランクルをお借りしたわけですが、とにかくデカい! のひと言。今回借りたのは最上位グレードのZX(7人乗り)ですが、その寸法は全長4985×全幅1980×全高1925mm。最低地上高も225mmあるため、サイドステップに乗らないと乗車できません。以前お借りしたアウディの電気自動車「e-tron」も大きな車でしたが、全長、全幅はほぼ同じでも、全高でe-tronを30cm近くも上回ります。おそらくASCII.jpで掲載してきたクルマの中で最大サイズになるかと。


e-tronと大きく異なるのは、もう1点あります。それはプロポーションが最近の「都市型SUV」っぽくないというところ。

ここまで大きければ、ゆみちぃ部長もお喜びになると思った部員K。ですが「あのですね、モノには限度、サウナには温度という言葉を知ってますか?」と不満げ。「あの、確かに大きいクルマの方が好きと言いましたけれど、いつも極端なんですよ」と怒られてしまったのでした。ですが、頼もしさを覚えるフロントグリルに「文句ナシにカッコイイ! このドヤ感がたまりません。力強さを感じますね」と大絶賛。このクルマがたいそう気に入ってしまったようです。ゆみちぃ部長はイケメン好きなのです。


エンジンは新開発の3.3リッターV6ディーゼルターボ(最高出力309PS/最大トルク700N・m)と、「レクサスLS500」のそれをランクル用に仕立て直した3.4リッターV6ターボ(415PS/650N・m)の2種類を用意。4.6リッターV8(318PS/460N・m)は廃止となりました。

今回お借りしたのはガソリン仕様車なのですが、驚いたのは燃費の悪さ。なんと街乗りでメーター読みでリッター4kmと表示されているではありませんか。イマドキのコンパクトカーに慣れた身としては、目を疑わずにはいられませんでした。そこで公式サイトを見るとWLTCモード7.9km/Lとのこと。よって東京砂漠のような「信号が多く渋滞気味」の場所は、このクルマの棲む場所ではないのかも、と痛感した次第。


さらに驚いたのは給油時。いつものスタンドで「レギュラー満タンで」と言ったところ「お客様、このクルマ、ハイオク専用なのですが」と店員が言うではありませんか。耳を疑って給油口を見に行ったら、確かに「無鉛プレミアム」のシールが! 燃料代が高騰しているご時世に、なんというクルマを借りてしまったんでしょう。借りるならディーゼルエンジン車にすればよかったと心底後悔した部員Kでした。
3列目を使うと車内はやや狭く感じる
しかし折りたたむと巨大空間が出現!





ゆみちぃ部長にとって、荷室の積載性は重要な問題。ということでチェックしてもらいましょう。3列目シートを立てている状態だと「ちょっと狭いかなぁ。軽自動車みたいですね」とちょっとガッガリ部長。ですが荷室の右側に設けられたボタンをポチっと押すと自動的に3列目がたたまれていくではありませんか!「これすごい! すごすぎる!」と、その機構だけでガジェット好きのゆみちぃ部長は大喜び。3列目が収納されるとフルフラットで大容量の空間が出現します。さらに100VのACレセプタクルも用意されていますから、ノートPCの充電だって可能。ただし取れる電力は100Wですので、調理家電や電熱器の利用はできませんのであしからず。


さらに2列目シートも倒してみましょう。もちろん一層のラゲッジスペースが得られるのですが、残念ながらフルフラットにはならず。ただマットレスなどを敷けばフラットにはできそうで、車中泊も可能になるでしょう。

驚いたのはたたんだ2列目シートが運転席側へ移動できたこと。これなら、頭をバックドア側、足を運転席側にすれば車中泊はできそう! この機構にゆみちぃ部長も驚きの声を挙げます。

ガソリンモデルのみに用意される3列目シートをチェックしましょう。乗り込む際には2列目のシートを座面ごと前へ倒す必要があります。よって最近のミニバンのように、2列目に人が座った状態はおろか、荷物が載った状態では3列目に乗車することはできません。またかなりかがまないと乗ることは難しいです。






3列目はシートの厚みなどは薄いものの、足元は意外と広く電動リクライニング機構もあるからかなり快適です。「しかも見てください! ドリンクホルダーとUSB Type-Cがありますよ!」というわけでASCII.jpでは簡易的に計測。18Wを記録しましたから、スマホもタブレットも安心して充電できる出力です。







今度は2列目へ。こちらは圧倒的な快適さ「こちらのリクライニング機構は手動なんですね。




乗車時にはAピラーの取っ手をつかみ「ヨイショ」と体を持ち上げ運転席へ。「クルマというよりトラックに乗るような感じですね」というように、サイドステップに乗ったりする必要があります。「ロングスカートを履く女性には、ちょっと辛いかもしれませんね」とゆみちぃ部長。はたしてその車内は?




視野は驚くほど高く、何より広い! 巨大なアームレストを開けると、そこには冷蔵庫が! 東京砂漠を横断中でも冷たいドリンクで喉をうるおせるというわけです。


まずはハンドル周りからチェックしましょう。メーターパネルは7インチのマルチインフォメーションディスプレイを中央に置いた2眼式。回転計の右隣に水温計、速度計の左隣にバッテリーの電圧計が置かれている。部員たちはこのメーターを見て当初「このクルマってハイブリッド車なのか」と思ったのはナイショです。


本革と木材を組み合わせたステアリングには、リモコンボタンがギッシリ。左手側はいわゆるインフォテインメント系、右手側はアダプティブクルーズコントロールなどの運転支援系となっています。ランドクルーザーでも運転支援が付くのか、というのはかなり感慨深げな気分になります。ただハンドルが大きいということもあり、手が大きい人でないと、ちょっと押しづらいです。


上を見上げると、サンルーフがあって開放的。天井も高いのにサンルーフもあったら、もう最高という気分になります。ルームミラー近くにはSOSボタンが設けられていました。このクルマに乗っていてSOSボタンを押すことはあるのでしょうか? と思ったり。



続いてドアまわりもチェック。ここら辺は普通のクルマと一緒ですが、シート調整のメモリーボタンがドア側にあるのはとても便利。ETCカードも取り出しやすいですし、その下にボンネットやフューエルドアのボタンがあるのも◎。下や助手席にあるタイプは不便なんですよね。

続いてナビ周り。こちらはディーラーオプションで……。
……となりまして、合計45万7600円というモノになります。結構いいお値段です。



シフトレバー近傍には「マルチテレインセレクト」のダイヤルや各種ロック機能のスイッチが設けられていますが、東京砂漠で使うことはおそらくなく。スポーツカーのローンチコントロールのように、相応の場所で効果を発揮するのでしょう。シフトレバー近くのトレイをあけるとUSBレセプタクルが。ナビと繋げる方はType-A、充電専用はType-Cとなります。ランドクルーザーに搭載するUSB Type-C端子はLEDの照明付きで、暗いところでも端子の場所がわかりやすくて便利。これは他社も見習ってもらいたいものです。



そして部長は助手席に、見慣れない金属部品を発見。これは車両を受け取った際にトヨタのスタッフから使うようにと言われた、黄色いタイヤロックと真っ赤なハンドルロック。さすがドロボーに狙われるクルマナンバーワンのランドクルーザーです。さらに、新型車にはスターターボタンに指紋認証システムを組み込んでいるというからすごい! 指紋は7人まで登録可能なのですが、念には念を入れて、ということなのでしょう。なにせ納期4年のクルマですので、試乗車が盗まれてしまったら4年間、ほかの媒体さんが取材できなくなってしまいます。
それでは大型SUVのランドクルーザーを走らせましょう。
200kgの軽量化のおかげで
見た目よりも軽快なドライブフィール

V型6気筒ツインターボエンジンは、多段ATと相まって、実にジェントル。音も比較的静かで、まるで高級サルーンのごとくの滑らかさには、さすがのひと言。スポーツモードにすると、ガッツリ加速して鈍重さは皆無。それもそのハズ、なんと前モデルと比べて200kgも軽量化したのだから。踏めば速いクルマで、大きなSUVはノロマというのは過去の話です。もっとも、踏めば当然燃費は……ですが。

一方、乗り心地はというと、ゴツゴツとした突き上げと、RV車らしい柔らかさが共存する世界。荒れた道ではボディが左右に揺られ、ブレーキを踏めば前にダイブします。なるほど、ランドクルーザーがラダーフレームの上にボディが乗っていることを改めて認識します。移動中、後部座席に座るゆみちぃ部長とマネージャー氏は、右に左に大忙し。
運転しづらいかというと、街乗りでは案外普通。ステアリングを切ると巨大なボンネットがグワッと向きを変えるのですが、その迫力たるやほかでは味わえない世界。さらにミニバンを眼下に見下ろすほどの視界の高さは、快感のひと言。「ミニバンって大きいのにミニという理由、わかった気がします」と、妙に納得するゆみちぃ部長。正直、このクルマより強いものは、大型のダンプカーと、白と黒のツートーンに塗り分けられたパンダクラウンだけなんじゃないかと思ってしまいます。

この個性的なドライブフィールはランクル独自の世界で、運転しているとなぜか自分が強くなった気分になるから不思議。何より“誰もが行きたい時に、行きたい所に行き、どこからでも帰ってこられる”という言葉を強く感じさせるのです。この安心感は、ほかのクルマでは得難いもの。ランドクルーザーより快適であったり燃費がよかったり速いクルマはいくらでもありますが、必ず帰ってこられるという安心感が得られるクルマは多くありません。まさに「世界の不沈艦」とはこのこと。ぶつかろうが何をしようが、絶対に帰れる気がするのです。どうでもいいですが、名レスラーのスタン・ハンセンがランドクルーザーに乗っていたら似合うかもと思ったり。

ゆみちぃ部長にハンドルを託してみると「確かにすごい! これはイイです。長距離乗っても疲れないですし、意外と運転しやすいです」と太鼓判。「エンジン音はそこそこ聞こえますが、それでも十分静かですよ。しかも高速道路で車線や車間を監視する運転支援もついているんですね!」とお気に入り登録。ですが「これを買いたいか、というとちょっと別で。これで近所にお買い物に行くというのは考えづらいです。隣に乗っている分には最高ですけれど、日常的に運転したいかというと……」とも。というのも、部員Kがコインパーキングでランドクルーザーを停めようとした際、何度も切り返しをしていたのを見ていたから。
ランドクルーザーの最小回転半径は5.9mと、レクサスRXと変わりはないのですが、いかんせん2mという車幅と、意外と長いフロントノーズに手を焼くのです。さらにソナーが付いているのですが、これがフロントの場合、障害物まで20㎝もあるのに警告音を発するのです。ですから、駐車中は少し進んではピーピー鳴って、少しバックしたらピーピー鳴るという次第。
ソナーを切れば音はしなくなるのですが、借り物のクルマですので、万が一があると嫌ですし。「こういうクルマを一発で入庫できる人ってカッコイイと思います。自分は絶対にできないので」というゆみちぃ部長。スミマセン。10回も切り返してしまい……。

「ランドクルーザーいいですね。買いたいかと言われたら、そもそも運転できる自信がないですし、車庫を選びそうだし、ガソリン代もすごそうなのでゴメンナサイなのですが、隣に乗っている分にはいいと思いました。ですが4年も待つと言われるとちょっと……。4年後に何をやっているかとか想像できないじゃないですか。それに欲しいと思った時に手に入らないのは嫌な性格なので」というわけで、気に入ったけれど買わないとのこと。その気持ち、わからなくもないです。

でも、部員Kは「すべての条件が許されるなら、この世界の不沈艦はせひとも欲しい」と思った次第。日本ではオーバースペックのクルマですが、それは多くのスポーツカーとて同じこと。運転していて楽しいクルマかというと、そういうクルマではありません。ですがスポーツカーと違い、出先で万が一被災した時、道がどのような状態だとしても、帰ってこられるというのは何よりありがたいことです。そして被災しなくても、その安心感や安定感は何者にも代えがたいものがあります。そう考えると、このクルマはオーバースペックでも何でもないように思いませんか?
乗りながら開発者の「なぜ世界中の人々がランクルを選ぶのか、なぜ日本でもランクルのファンがいるのか」という話を、肌身をもって実感。本物に触れ「ランクルの似合う男になりたい」と思う部員Kなのでした。

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寺坂ユミ(てらさかゆみ)プロフィール

1月29日愛知県名古屋市生まれ。趣味は映画鑑賞。志倉千代丸と桃井はるこがプロデュースする学院型ガールズ・ボーカルユニット「純情のアフィリア」に10期生として加入。また「カードファイト!! ヴァンガード」の大規模大会におけるアシスタント「VANGIRLS」としても活躍する。運転免許取得してから上京後は一切運転していないが、最近ペーパードライバーを脱出。こだわりが強く興味を抱くとのめりこむタイプであることから、お気に入りの1台を探す予定。