SUPER GT第2戦が5月3~4日に富士スピードウェイで行なわれ、冨林勇佑/平木玲次が駆る「マッハ車検エアバスター MC86 マッハ号」は、GT300クラス24位となった。


結果こそ残らなかったがマッハ号・冨林勇佑が自信を取り戻した“渾身の1周”
冨林勇佑選手(左)と平木玲次選手

 前回の第1戦岡山がSUPER GTデビュー戦となった冨林だが、予選中にクラッシュを喫してしまい、チームが夜通しでマシンを修復するなど、慌ただしい週末となった。

いきなり、国内最高峰レースの難しさを痛感したグランツーリスモ世界チャンピオンの冨林。それでも、決勝では最後尾から着々と追い上げ、18位フィニッシュをはたしたが、この富士大会までの間、冨林自身は葛藤の連続だったという。


結果こそ残らなかったがマッハ号・冨林勇佑が自信を取り戻した“渾身の1周”

 「正直、岡山大会の予選でクラッシュをして、タイムアタックをやらないまま終わってしまいましたし、決勝でもペースを上げられなくて、すごく不甲斐なさを感じていました。自分自身で、自分を信用しきれないところがありました。ちゃんと乗れているのかな? という不安がありました」(冨林)


渾身のアタックもコースアウトでタイム抹消の予選

 そんな中で迎えた第2戦。予選Q1(1回目)は再び冨林が担当することになった。富士スピードウェイはリアルレースでもたくさん走り込んでいるコースのひとつ。

とにかく自分のベストを尽くすべく、各コーナーを攻めていった。


結果こそ残らなかったがマッハ号・冨林勇佑が自信を取り戻した“渾身の1周”

 「あの時間帯に、少しだけ日が陰ってしまって、路面温度が下がったのが影響したのかもしれません。タイヤの内圧が上がりきっていない状態でしたけど、いくだけいくしかない! と思っていきました」(冨林)


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 アタック1周目は、タイヤの内圧が上がりきらず、Q1突破タイムを記録できなかったが、仕切り直しで臨んだ2周目のアタックで、1分35秒905を叩き出した冨林。これでQ1B組の5番手に食い込み、Q2進出かと思われた。


 しかし、GRスープラコーナーの出口で、4つのタイヤすべてがコースの境界線を占める白線を超えていたため、「走路外走行(四輪脱輪)」のため、該当タイムは削除されることに。これにより正式結果では1分37秒078が採用され、Q1B組12番手という結果になってしまった。


結果こそ残らなかったがマッハ号・冨林勇佑が自信を取り戻した“渾身の1周”

 「感触としては前の周より1秒くらい速いのは分かっていて“35秒台に入るかな”と思っていました。ただ、GRスープラコーナーで、いつもよりワイドになったなという感覚はありましたけど、GTマシンは幅が広いから、ギリギリ残っているだろうと思っていました(苦笑)」と、悔しさは表に出さず、苦笑いでごまかそうとしていた冨林。だが、このアタックで第1戦から抱えていた悩みを払拭することができたという。


結果こそ残らなかったがマッハ号・冨林勇佑が自信を取り戻した“渾身の1周”

 「結果として、四輪脱輪はしてしまいましたけど、しっかり速く走れたことが、自信につながりましたし、あのアタックでかなり吹っ切ることができました。やっぱり自分を信用できないと、限界まで行けません。そこで“自分がしっかり操れているんだ”というのを、自分自身で確認できたので良かったです。

結果としては、チームに申し訳なかったですけど、自分自身はスッキリしました」(冨林)


前に出るための作戦がアダになった決勝

 気を取り直して臨んだ決勝レース。今回は450km(100周)の距離で争われ、途中に2回の給油が義務づけられていた。だが、そのタイミングについてはドライバーの乗車規定(1人が走行距離の2/3を超えて走ってはならない)が守られていれば、どのタイミングで行なっても構わない。


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 そこで、5号車は1周目に1回目の給油作業を済ませてしまい、残るはレース中に2回目のピット作業をするという作戦に出た。序盤の段階で大きく後退はするものの、途中アクシデントなどでセーフティカーが出た場合には、前方との差を縮めるチャンスが生まれる。その可能性に賭けたのだ。


 その中で冨林は、レース前半を担当。

展開に応じてピットストップのタイミングが決まる難しいスティントとなったが、着実に自分の仕事をこなしていった。


結果こそ残らなかったがマッハ号・冨林勇佑が自信を取り戻した“渾身の1周”
結果こそ残らなかったがマッハ号・冨林勇佑が自信を取り戻した“渾身の1周”

 「決勝もペースは良かったです。状況に応じて、スティントの長さが決まる感じでしたが、比較的プッシュしながらも、タイヤを気遣いながら走っていました。途中トラフィックとかがなければ38秒台を安定して出せていました」


結果こそ残らなかったがマッハ号・冨林勇佑が自信を取り戻した“渾身の1周”

 そんな中、全体のトップが43周目に入ったところで、GT300クラスの「RQ's AMG GT3」がADVANコーナー手前でクラッシュ。これによりフルコースイエロー(FCY、コース全域が追い越し禁止&速度制限がかかる)が導入された。


 このアクシデントをみた5号車陣営はすぐに動きを見せ、FCYが入る直前で2回目のピットストップを完了させることに成功した。

さらに直後にはセーフティカーが入り、各車の間隔はリセットされることに。5号車が一番思い描いていた展開となった。


結果こそ残らなかったがマッハ号・冨林勇佑が自信を取り戻した“渾身の1周”

 ところが、クラッシュで破損したバリアを、重機を使って修復しなければならなくなり、49周目に入るところで赤旗が出された。実はトップ集団ではまだピットストップをしていなかったチームがあり、そことは1周差がついていた。つまり、5号車にとっては赤旗中断は誤算であり、この時点で1周遅れとなってしまい勝負権を失ってしまった。


 その後レースが再開されるが、59周目にはメインストレートでGT500の3号車「CRAFTSPORT MOTUL Z」が、スロー走行していたGT300車両を避けた際に挙動を見出し、ガードレールに大クラッシュ。

幸いドライバーは無事だったが、レースは再び赤旗中断となった。


 約1時間30分にわたって中断することとなり、18時10分にセーフティカー先導で隊列が動き出したが、5号車はクラッチトラブルを抱えて発進することができず、マーシャルの手を借りてピットへ。そのままレースを終えることとなった。


 「今回は2回の給油が義務ということで、僕たちとしては有利な方向に働くかなと思っていました。それを途中まで実行できてはいたんですけど、赤旗が2回も出てしまって、プランが大きく崩れてしまいました。結果的にかなり損をしてしまいました。最後はクラッチが壊れてしまい、動くことができませんでした。詳しく原因を調べてみないと分かりませんが、赤旗でずっと止まっていたので、熱がこもってしまったのかもしれません」と同じくマッハ号ドライバーの平木選手。


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 今回は途中まで良い展開で進み、レースペースも良かっただけに、悔しさを隠しきれない様子だった。


 「クルマのパフォーマンスに関しては、一発の速さもありますし、フリー走行でロングランの確認した時も、ペースがすごく良かったので、レースとしては戦える感じがありました。だからこそ、悔しいですね。この悔しさは、次の鈴鹿にぶつけるしかないです」(平木)


 一方の冨林も、悔しさを抑えて、次の鈴鹿大会に照準を合わせていた。


 「勝てる可能性が多いにあった展開だったので、赤旗が出てしまって勝負権を失ってしまったことは悔しいですけど、大きな事故が起きた中で、誰も大きな怪我をせず、無事だったことが一番です。結果は残らなかったですけど、ロングランでのペースが良かったというのは、またひとつ自信になりました。僕の走りとしては満足できる内容でした」(冨林)


 次は5月28~29日の第3戦鈴鹿サーキット。マザーシャシー勢にとっては得意なサーキットであるほか、サクセスウェイトがない状態で臨めるだけに、上位入賞も期待できる1戦となりそうだ。


 冨林、平木、そしてチームの活躍から、ますます目が離せない。


 なお、レースは59周目に起きた3号車のクラッシュにより、約1時間30分に渡って赤旗中断となり、セーフティカー先導でレースが再開されるも、日没が迫る18時20分で終了。全体の周回数が75%に満たなかったため、上位入賞者には半分のポイントが与えられることとなった。


結果こそ残らなかったがマッハ号・冨林勇佑が自信を取り戻した“渾身の1周”

 GT300クラスで優勝したのは、10号車「TANAX GAINER GT-R」。2位には34号車「BUSOU raffinee GT-R」、3位には61号車「SUBARU BRZ R&D SPORT」が入り、ダンロップタイヤ装着チームが表彰台を独占する結果となった。


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優勝した10号車「TANAX GAINER GT-R」
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2位の34号車「BUSOU raffinee GT-R」
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3位の61号車「SUBARU BRZ R&D SPORT」
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マッハ号を彩るRQのみなさん

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