100年に一度の大変革と言われる自動車の電動化。それは愛らしさで人気の1台、FIAT 500も例外ではありません。
電動化されたFIAT 500だが
充電ポートが日本と違う部分も
さて、ゆみちぃ部長的にFIAT 500は、ちょっとしたトラウマがあったりします。それはすべててASCII.jp自動車部の書き手でカメラマン、そして配車担当の部員Kによる「意図的な手違い」による不幸なでき事でした。当初、FIAT 500をお借りしようとしたのですが、部員Kは「どうせ見た目だけでしょ? バレないって」ということで、FIAT 500のホットバージョン、アバルト 595の最上位グレード、イタリア語で競技という名を冠したコンペティツィオーネを手配してしまったのです。

このアバルト 595コンペティツォーネ、足はガチガチ、排気音はウルサイ、シートはセミバケットという、スポーツカー好きの部員Kですら怯むほどのガチ・オブ・ガチ勢。当然ゆみちぃ部長は完全に沈黙してしまい、口も聞いてくれないという有様となりました。試乗後「今度はちゃんとしたFIAT 500を借りてきて下さい」というわけでご用意したのが、このFIAT 500eなのであります。

ですが、ここで部員Kはまたしても配車ミス。今度は本当のガチミスで、クルマを借りる日を1日間違えてしまったのです。これが貸し出し人気車種で、車両側の日程をずらすことができず。とはいえ、ゆみちぃ部長の予定をズラすわけにもいかず、結局、前の借主と相談し、当日の午前中にクルマを返却してもらい、その日の午後だけクルマを借用。即日返却するという。つまりわずか2~3時間程度で試乗取材と撮影を同時にこなさなければならないという事態に陥ったのです。
ということで、都内某所にある輸入元の駐車場へ、ゆみちぃ部長と共にクルマを借りに行った部員K。可愛らしいFIAT 500eの姿を見たゆみちぃ部長はテンションMAX。その裏で部員Kは広報さんから衝撃の事実を知るのです。


それは「電池は半分くらいしかないんですけれど、遠くに行かれないですよね?」という一言から始まりました。戻ってからすぐにお借りする都合、充電が間に合わなかったのです。「大丈夫ですよ。何かあったら急速充電しますから」と答える部員K。「いや、このクルマ急速充電できないんですよ」。
なんと電気自動車なのに、急速充電できないというではありませんか。これは車両側の端子が、日本で普及しているCHAdeMOではなく、北米で採用されているCCS1(コンボ規格)のため。そのため車両には急速充電アダプターが付属するのですが、量産品入荷が遅れているため取材時は間に合わず……。ということで、都内を1時間ほど走ってみる取材になりました。
キュートでポップな見た目と内装は変わらず


部員Kの運転のもと、ロケ地まで後部座席に座るゆみちぃ部長。「さすが電気自動車! 静かでいい感じです。それに乗り心地がイイ!」と、すでにお喜びになられている部長。足元は狭いかなと思ったのですが、身長161cm(公称値)のゆみちぃ部長的には不満はないとのこと。「前のアバルトはめっちゃ狭かったんですけれど」というので調べてみると、全長はFIAT 500より60mm長い3630mm。さすが違いが分かる人のゴールドブレンド。「あと、インテリアがいい感じですね。日本車にはないテイストですね」と、かなりお好みの雰囲気。このポップな感じがFIAT 500の魅力です。




今一度キュートなスタイリングを見て「可愛いなぁ」というように、相当お気に入りのご様子。「なんか前から見ると顔みたい。





リアのラゲッジはFIAT 500とあまり変わらない雰囲気。ゴルフバックはちょっと無理そうです。床下には充電ケーブルと工具が用意されていました。リアシートを倒すとラゲッジは増えますが、段差があり、また斜めになるので、柔らかく長い荷物の収納には注意が必要です。
電動化にともない車内装備もアップデート

気になる動力性能をチェックしましょう。モーターのスペックは最高出力87kW(118PS)/4000rpm、最大トルク220Nm/2000rpm。床下に置かれたリチウムイオンの蓄電量は42kWhで、満充電時の走行距離はWLTCモードで335km。







運転席まわりを見てみましょう。FIAT 500のイメージはそのままに、近未来感のあるデザインへとアップデート。メーターパネルの形状そのものはFIAT 500と同じワンメーターですが、表示はフル液晶にチェンジ。シフトレバーの代わりにボタン式へとチェンジしたことで、インテリアはさらにスッキリしたものに変わっていました。「このポップで上品なインテリアはイイですね。エレガンス。ベリーエレガンス」と大満足。ハンドルまわりは一気にボタンが増えました。運転支援、マルチメディアと、機能面で不満はありません。


10.25インチタッチパネルモニターを中央に配置。




ちょっと慣れないのはドアの開閉。内側にドアハンドルが見当たらないのです。というのも、この開閉は電動スイッチ方式。ちょっと長押しをするとドアが少し動き、あとは手で押すだけ。これは最近のレクサスでも使われている方法です。ネイルをしている女性にはうれしい装備のようで、ゆみちぃ部長もニッコリ。「ちなみに、壊れたらクルマから出られないんですか?」という素朴な疑問を抱かれましたが、よく見ると普通のハンドルもあるので大丈夫です。
機能面では、運転支援が追加されたことがトピック。車線監視機能付きアダプティブクルーズコントロールを搭載するなど実にイマドキ。FIAT 500では2021年以前までクルーズコントロールすらついていなかったのですから、これは大きなアップデートといえそうです。
FIAT 500らしく元気に走る運動性能

それでは試乗することにしましょう。FIAT 500eにはe-モードセレクターと呼ばれるドライブモードセレクターが用意されています。それは「NORMAL」「RANGE」「SHERPA(シェルパ)」の3モードで、「NOMAL」は普通のクルマと同じ。ですが「RANGE」と「SHERPA」は、回生ブレーキが強くかかるモードで、ワンペダル動作に近い運転ができます。「SHERPA」は、さらに80km/hまでのスピードリミッターが働くほか、出力も87kW(118PS)から57kW(78PS)へと低減する超ケチケチモード。街乗りではコレで距離を伸ばすのもアリかも。

「乗り心地は全然違いますね。アバルトと違って、乗り心地がとてもよいです」と、アバルト 595コンペティツォーネの悪夢とは大違いの世界。地面からの突き上げは相応にあるのだけれど、それとてガソリン仕様のFIAT 500とは雲泥の差。それは床下に300kg近いバッテリーを積載していることよるのでしょう。ハンドリングも実に安定したもので、これまた軽量級のFIAT 500とは別物です。

イタリア車のよいところは、誰もが無条件で運転が楽しくなってしまうところ。それは電気でも変わることはありません。「このクルマ、ホントに楽しい!」と心の底から楽しまれているようです。そんな楽しさを演出するのがサウンド。FIAT 500eは加速時にモーター音ではなく、エンジンのような低音がかすかに響くのです。

楽しい時間はあっという間にすぎるもの。街乗りをちょっと試す程度で返却となりました。急速充電が対応できるようになったら、また借りてみましょう。その時は高速道路も走行してみたいですね。
可愛くてオシャレな電気自動車を求めているなら、このFIAT 500eはベストな選択。気になる金額ですが、シートヒーターやオートハイビーム、アダプティブクルーズコントロールなどのないPOPで450万、装備が充実したIconで485万、今回試乗したOpenでは495万。Honda:eと変わらないプライスなのです。
しかし販売方法がちょっと特殊で、基本的にリースのみ。POPが月々4万9800円の5年払い(ボーナス月は11万円☓10回)。「え? 毎月5万円なんですか?」と驚く部長。ですが、この金額には車検代のほか、3年目まではホイールをガリった時の交換費用も含まれています。ちなみにトヨタ初のBEV「bZ4X」も、リースのみです。「バッテリーが消耗するとか考えると、クルマはこういうリースのような所有の仕方になるんですかね?」とゆみちぃ部長は感慨に浸るのでした。
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寺坂ユミ(てらさかゆみ)プロフィール

1月29日愛知県名古屋市生まれ。趣味は映画鑑賞。志倉千代丸と桃井はるこがプロデュースする学院型ガールズ・ボーカルユニット「純情のアフィリア」に10期生として加入。また「カードファイト!! ヴァンガード」の大規模大会におけるアシスタント「VANGIRLS」としても活躍する。運転免許取得してから上京後は一切運転していなかったが、最近ペーパードライバーを脱出。こだわりが強く興味を抱くとのめりこむタイプであることから、お気に入りの1台を探す予定。