電気自動車が珍しくない昨今、都内でテスラを見ない日はありません。電気自動車の代名詞でありアメリカから来た黒船といえるテスラ「モデル3」を、このクルマが気になって仕方ないというアイドルユニット「純情のアフィリア」の寺坂ユミさんと一緒に触れていきます。
■2016年に発表されたモデル3
■日本でも充電設備が増え、街でよく見かけるように
時を遡ること2016年。テスラのCEOであり、現在X(旧Twitter)のトップでもあるイーロン・マスク氏が、量販EV車としてモデル3を出すとアナウンスした時のことを今でも覚えています。当時、同社の電気自動車は1000万円超が当たり前。いや、電気自動車そのものが日産リーフくらいしかなかった時代です。それゆえ、普段新車が出ても報道しないマスコミ各社が「新しい時代がやってくる」と言わんばかりに「テスラからモデル3が出る」と一斉に報じたものでした。以後、発表一週間後に30万台の予約を受注したなど、色々な話題を振りまきました。
盛り上がる一方、待てど暮らせど日本にはなかなか上陸して来ず。やってきたのは2019年のことでした。噂に聞きしモデル3に触れ、今までのクルマとは、スタイリングも、室内も、インフォテインメントも、駆動方式も色々と違うモデル3に、未来を予感させるとトキメキを覚えたのを昨日のように覚えています。ただ、乗り心地などの面や自慢のインフォテインメントの動作等で「もう少し熟成が必要かも」とも思いました。
電気自動車はインフラの兼ね合いもあり、発売したからといってスグに街で見かけるということはありません。さらにテスラは独自の充電端子を使うこと、ネット販売を中心に行なっていたことから、2021年の前半までは“もの好きが買う珍車”というイメージでした。ですが2021年後半あたりから風向きが変わり、「なんかテスラを見かけるようになったなぁ」と。
そんなこんなで、テスラを街でみかけるようになった頃から、寺坂ユミさんこと、ASCII.jp自動車部のゆみちぃ部長は「テスラに乗ってみたい」と言い出しはじめるように。ASCII.jp自動車部の書記兼撮影係で配車担当の部員Kは、「ASCII.jpで一度テスラを取り扱ったのに、またやるの?」といったオトナの事情でまったく気乗りせず。ですがゆみちぃ部長の圧は日増しに高まり、逃げられなくなってしまい今回の試乗と相成りました。
電気自動車なので補助金が65万円
地域によってはかなりお求め安くなるモデル3
まず、ゆみちぃ部長にテスラについて尋ねてみることにしました。彼女によると「テスラって高級車って感じがします。お金持ちが乗っていそう」とのこと。「なんか環境意識の高い人とかが、ベンツやBMWの代わりにテスラに乗る、みたいな」。ちなみに輸入車というのは理解しているようですが、その生い立ちや国については、あまり詳しくない様子。つまり「なんとなくハイブランドのクルマ」というイメージなのです。
ですが、これってスゴいことだと思いませんか? 今では高級車というイメージの強いレクサスですが、その名が広く知れ渡るのに20年近い歳月を要しました。またアウディ・ジャパンもディーラー網を整備するなどして、我が国における現在のブランド地位を確立したのです。
現在、モデル3は大きくわけて3モデル。気になるお値段は、後輪駆動のエントリーグレードが524万5600円。2モーターAWDのロングレンジが626万8600円、最上位のハイパフォーマンスが700万5600円。メルセデスのCクラスやBMWの3シリーズと比べるとお求めやすい価格なのです。これにはゆみちぃ部長は驚いたようで、さらに「国から補助金が65万円出ますよ」とお伝えすると「なんですと!」と、今度は大きな声がさらに大きく。ちなみに住んでいる地域によっては、さらに補助金が出ることを知ると……、あとはご想像にお任せします。
乗る前から大興奮のお財布部長に外観を見てもらいましょう。「街でよく見かけますけれど、近未来のクルマという感じがしますよね。これが5年以上前から売られているということが驚きです。古さを感じませんね」とのこと。そして「フロントグリルがないんですね。
この「フロントグリルがない」というのは、実は洗車がラクということにも繋がります。というのも、。夏の高速道路を走ると虫がいっぱい。これがフロントグリルまわりにベッタリとついて洗うのが大変ですし、何より拭き取る時に1本1本拭くのが……。ですがモデル3は平面なので、拭き取りがラク! コレはイイ! となるわけです。
ちなみにモデル3には、洗車モードという聞きなれないものがあります。これは洗車機を使う時に、すべてのウィンドウが閉じ、充電ポートがロックされ、ワイパー、セントリーモード、降車後オートロックおよびパーキングセンサーチャイムが無効になるというもの。これを知らないで洗車機にクルマを入れると、ワイパーが稼働するなど、色々とトラブルが起きます。こういうあたりも、今のクルマっぽいなぁと思うのです。
■荷室はかなり広く実用性は高い
荷室は広いものの、セダンゆえ高さ方向に制限があるのは仕方ないところ。後席を倒せば、フラットな空間が一気にひろがります。ファストバック構造なので荷物の出し入れはセダンに比べればラクなのですが、「SUVのように荷物の一部をボディーに載せたら、あとはズルズルっと押せばいい、という感じだったら……」というのがゆみちぃ部長の弁。
フロントにも荷室があります。「ポルシェ 911みたいですね。ショッピングセンターで、ちょっとした買い物をした時に荷物を入れるのに便利そう!」と、ちょっと主婦目線で語ります。
室内はセダンらしい造り。「シートの質感が、ほかにはあまりない感じがしますね。シンプルで清潔感がありますね」と、日本車とは異なる雰囲気にニッコリ。SUV好き部長としては、ヘッドルームの狭さが気になったようですが、一方でグラスルーフには感動! ちなみに開けることはできないのですが「これで夜に星空とか見えたらイイですね!」と乙女回路が働いた様子。そして、フラットな足元に「席移動とかがとてもラクでいいですね」と使い勝手のよさにも感服されていました。
後部座席を見ると、USB Type-Cの端子をキッチリ用意されています。
■ハンドルにボタンが少ない!
意外にもシンプルすぎるコクピット
運転席をみると「何もない……」と言葉を失います。それもそのはず、中央に大型のタッチディスプレイがあるだけなのですから。ステアリング周りもボタンは少なく、さらにセンターコンソールに走行モードを切り替えるレバーもボタンもないのですから。
走行モードセレクターはステアリングコラムから伸びているのですが、右側にあるためウインカーと間違えそう。もっとも走行中に動かしたところで、いきなりバックするといったことはありません。さらにステアリングホイールにもボタン類は少なく。「素っ気ないくらいにシンプルですね」と部長。「クルマじゃないみたい……」と語ります。
クルマじゃない感を強めているのは、すべてのコントロールは大型タッチディスプレイで行なうところです。筆者の記憶をたどると、機能はかなり増えているような。話によると、かなりの頻度でソフトウェアアップデートをして拡張しているうえに、CPUが初期のインテルからAMDとなり処理速度が大幅にアップしたのだとか。このあたりの考え方もスマホライクな気がしました。
■巨大なタブレットで
ほぼすべてのコントロールをする
このタッチパネルで、ほぼすべての車両コントロール、ナビゲーション、エンターテインメントをコントロールします。その内容は膨大すぎるので、いくつかかいつまんで紹介させていただきます。
まずはエンターテインメントから話を進めましょう。タッチパネルであれやこれや……という時代は過去のものです。今や音声認識の時代です。エアコンの操作もナビゲーションもステアリングホイールのマイクボタンを押して要件を伝えるだけ。目的地だけでなく、「スポティファイで純情アフィリアのこの盾に隠れますをかけて」と言うだけ。これが一発で認識して音楽が流れ始めるからスゴい! さらにYouTubeやNetflix、ディズニープラスまで動くというから驚きです。ちなみにApple CarPlayやAndroid Autoは非対応。「えー?」と不満そうなスマホ大好きの部員S。ですが、こっちの方がデキが良いのですから不要です。
スマホの話が出てきたので、ASCII.jp的にはそこについて触れなければなりません。Apple CarPlayやAndroid Autoは非対応ですが、スマホトレイはキチンとあります。初期のモデルではスマホトレイの場所にLightningとUSB Type-Cのコネクターが設けられていたのですが、現在はワイヤレス充電にも対応しているようで、そういったコネクターは一切ナシ。センターコンソールのカバーをあけると、USB Type-Cコネクターが2つ用意されているのを発見。試しにケーブルを接続してみたところ、余裕で収納することができました。ただ、ケーブルをつなげたままスマホトレイに置くことは難しいようです。
標準搭載ナビは、実にGoogleマップライク。スゴいのは到着予想時刻と充電残量が表示されるだけでなく、ルート上の充電場所提案。充電速度(=kWh)別に表示ができるだけでなく、料金まで表示されます。
さらに充電設備までのルートを設定すると、充電効率を最大化するべく車両のバッテリーを温めるというから驚き! 現在、スーパーチャージャーは全国で約68ヵ所。これにCHAdeMO(急速)の約9600ヵ所がテスラに対応する急速充電できるスポットになります。よって「日本で最も急速充電ができるクルマがテスラ」ということに。
自宅で充電できない方にとって、急速充電が近くにあるかということが重要ですので、これはうれしいところ。ちなみにスーパーチャージャーに似たものとして、日本のVW・アウディ・ポルシェ正規取扱店が「プレミアム・チャージ・アライアンス」として、現在210ヵ所の充電スポットを用意しています。これが2番目になるでしょうか。
鍵はカードキーもありますが、基本的にスマホアプリです。スマホを持っていれば開鍵しますし、スマホを持って外に出れば施錠しますし、メインメニューから呼び出すメニューの多さは、これでもか! これでもか! と、とにかく設定は豊富。紙幅がいくらあっても足りません。ここまでできるのか……という点では、テスラを超えるクルマは思いつきません。
中でも関心したのは、停車中のセントリーモード。いわゆるドライブレコーダーなのですが、さらに発展して、車両についているカメラで撮影した動画をUSBメモリーに保存できるほか、車両に異常があるとスマートフォンに連絡してくれるとのこと。ここまで高機能な防犯対策をつけたクルマは、そう多くはありません。
■走りはEVらしく静かだが
足周りなどは重厚感がある
電気自動車らしい静粛な走り。ステアフィールは足回りは重厚な印象を受けます。そのあたりは過去に乗った印象と変わりないのですが、大きく違うのはアクセルやブレーキなど、ペダルの動きに対して自然さが出ていたところ。前はオンオフスイッチ、とまではいかないまでも、回生ブレーキの制御などで「ここらへんは日産リーフの方が良いな」とか思ったのですが、そういったネガティブなところはかなり払拭されている様子。ワンペダル動作もかなり自然で、街乗りでは積極的に使いたいところ。部員Kはワンペダル動作で走り続けます。
ゆみちぃ部長は、ワンペダル動作は慣れていないということなので、通常のペダル動作を選択。「なんか、少し踏むと一気にクルマが進みますね」というわけで「ほとんど踏まない感じです」とのこと。
ステアリングがやや重ためなので、ゆみちぃ部長には厳しいかなと思ったのですが「全然気になりませんでした。ただハンドルが普通のクルマより太いようですね。そこは慣れだと思いますが、最初は違和感を覚えました」とのこと。
「前方視界がとても開けていますね」と、ゆみちぃ部長。ハンドルの前にメーターパネルがないことのメリットを感じられているようです。
なかでも驚かれていたのが、走行中のモニター画面。自車と他車両の位置を映像化するのですが、パイロンまで認識するのですから恐れ入ります。「これ、すごくわかりやすいですね!」と感嘆の声をあげます。
車両とクレカが紐付いているので
充電も超簡単でキャッシュレス
ゆみちぃ部長がきになるのは充電。「どこで充電できるんですか?」というわけで、A PIT オートバックス東雲で充電してみることにしましょう。
充電はとても簡単で、差し込むだけ。テスラは車両とクレジットカードが紐づいているため、専用充電器ならカードで認証をする必要はありません。「え? これだけですか?」と驚くゆみちぃ部長。ここらへんの先進性は、日本で一般的に普及しているチャデモも見習ってほしいところです。
普通の充電器ということで、最近タクシー内のCMで有名なENECHARGEでも試してみました。こちらは専用の充電カードやアプリなどを用いますが、最初からテスラ用のケーブルがついているので、とてもラク。
充電中は店内でお買い物。ということでゆみちぃ部長は自動車用のシートに興味津々です。「これオフィスチェアみたいですね」「めっちゃ座り心地がよい!」といった途端、おねむに。
ちなみにゆみちぃ部長が座ったシートはレカロでした。それは良いシートですからね。その後も、クルマの部品を見ては感心しきり。エンドレスのキャリパーを手にして「これカワイイ」という謎のアイドル部長でした。
「テスラ、すごくいいですね! 街で見かける理由、わかります」と、ゆみちぃ部長は大層気に入られた様子。正直申し上げて、過去に乗った自動車の中で5本の指に入るのでは? 数年前まで「電気自動車ってちょっと怖い。私は軽自動車で十分」と言っていた子が、いつの間にか「電気自動車最高!」になり「テスラ最高!」と言い出すとは思いもよりませんでした。それだけテスラには魅力と説得力があるというわけです。
「クルマはもちろんですが、充電ソリューションがイイと思いました。これなら確かに見かけるようになりますね」。こういう使い勝手のところまで褒められるとは……。「テスラでSUVがあれば完璧なんですけれど」。実はあるんですよ! Model Yという車種が。というわけで、こちらの車種は別の機会に。
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寺坂ユミ(てらさかゆみ)プロフィール
1月29日愛知県名古屋市生まれ。趣味は映画鑑賞。志倉千代丸と桃井はるこがプロデュースする学院型ガールズ・ボーカルユニット「純情のアフィリア」に10期生として加入。また「カードファイト!! ヴァンガード」の大規模大会におけるアシスタント「VANGIRLS」としても活躍する。運転免許取得してから上京後は一切運転していないが、最近は自動車にも興味を抱く。こだわりが強く興味を抱くとのめりこむタイプであることから、当連載で、お気に入りの1台を探す予定。