中国のテンセント・ホールディングスは7月18日、コミュニケーションサービス「WeChat」の日本事業について説明する「WeChat オープンクラス」を開催した。イベントでは、スマートフォンスマホ)決済サービス「WeChat Pay」が、どのようにインバウンド需要獲得を後押ししているのかについて解説。
決済サービスが、決済だけのサービスで終わるのはもったいないと強調した。

 イベントに登壇した、WeChat Pay ジャパンリージョナルディレクターの中島治也氏は、「中国では、WeChatがあれば生活できる環境が整っている。宿泊や行政機関、教育、シェアリングサービスなど、あらゆるサービスをWeChatで利用することができる。WeChat Payを使えばスマホ一つで決済まで完結する。中国人の生活には欠かせない存在」と、WeChatについて説明する。
 中国人は、18年に年間3000万人を突破した訪日外国人旅行客の中で、最も大きな割合(約27%)を占めている。旅行消費額も約4021億円(約36%)と最大だ。訪日中国人は13年から年平均45%の成長を続けており、「今後も増えていくはず」と、中島リージョナルディレクターは推測する。
 今後、インバウンド需要の取り込みを狙うなら、中国人が利用しているプラットフォームに対応することは大切な要素になる。この認識は既に広がっており、「WeChat Payは、主要なコンビニエンスストアやドラッグストアのほか、観光地なら小さな店舗でも使えるようになっている。日本での生活に困らない程度に普及していると思う」と中島リージョナルディレクターは語る。WeChat Payを導入するだけでなく、実際に使っている加盟店も数倍に増えているという。

 WeChatの中でも小売店にとって高い効果を見込めるのは、「ミニプログラム」という機能だ。2017年に実装された機能で、画像認証による検索や、緊急時の救難依頼、企業の専用ページなど、各社・各機関がさまざまなサービスを展開している。
 日本専用のエリアページが設けられており、日本で利用可能なWeChat Payクーポンや加盟店クーポンを一覧することができる。小売店が専用ページを設けて、クーポンの発行や商品の情報を掲載することも可能だ。近い例としては、LINEの公式アカウントやLINE Payのクーポンがあげられる。日々使っているサービスから、シームレスに海外旅行先のクーポンや商品情報にアクセスできるなら、利便性は高いはずだ。
 対応する店舗や専用ページを設ける企業が増えることは、中国の消費者の利便性向上につながる。そのため、WeChat上では日本の小売店にWeChatを身近に感じてもらうためのキャンペーン施策を展開している。また、中国では割引やモーメンツによる告知、WeChat Payが利用可能な店舗を発信するなどして、日本の小売店と中国消費者とのつながりを作っている。
 ミニプログラムで専用ページを作るには、従来、アプリを開発するような知識や労力が必要だった。しかし、現在は専門家がいなくても情報さえあれば専用ページを作ることができるようになっている。ミニプログラムでのサービス展開については、案件ごとに対応しているという。

 中島リージョナルディレクターは、「決済につながるさまざまなサービスや、決済後のリピートにつながるサービスなど、決済だけではないサービス展開がWeChat Payの強み。キャッシュレス化に踏み切れない企業も、まずはWeChat Payを導入して、効果を検証してみてほしい。実感できたら、日本のキャッシュレス決済サービスの導入も検討してみてはどうだろうか。WeChatを通して、大きなチャンスを一緒につかめればと思っている」と呼びかけた。(BCN・南雲 亮平)

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