フリーランスにとって確定申告はとても大変な作業の一つである。請求書や売り上げ、経費管理など、経理を経験したことがない人にとっては、なおのことハードルが高く感じてしまいがちだ。
しかし、税理士に依頼すると毎月何万円もの費用が発生してしまうため、自力で確定申告を進めたいフリーランスの人も多いのではないだろうか。そこで、効率的かつリーズナブルに確定申告を行うために注目されているのが、クラウド会計ソフトの「freee会計」だ。

 クラウド会計にはさまざまな種類があるが、ここでは無料でも使えるクラウド会計ソフト「freee会計」をおすすめしたい理由について紹介する。
 併せて、無料プランと有料プランの違いについても解説しよう。自力での確定申告に限界を感じている人は参考にしてほしい。
●freee会計の概要
 freee会計は、2012年7月に設立した「freee株式会社」が運営している。「シミラーウェブ、ローカルフォリオ 2019/10」が実施したクラウド会計シェア調査によると、freee会計は55%のシェアを誇っている。
 ひと括りに「freee会計」といっても、対象ごとに次の六つのサービスを展開している。
(1)法人向け経理・会計ソフト
(2)中堅企業向け会計ソフト
(3)中堅~大企業向けクラウドERP
(4)IPO準備企業向けクラウドERP
(5)上場企業向けクラウドERP
(6)個人向け経理・申告ソフト
 今回、フリーランス向けのクラウド会計ソフトとして紹介したいのは(6)「個人向け経理・申告ソフト」であるため、他のサービスの特徴については割愛する。
 中国銀行やKDDIなど大手企業も導入していることから、利便性が高い会計ソフトであることは間違いないだろう。
●freee会計がおすすめの理由
 freee会計をおすすめしたい理由として、まずは機能がシンプルで使いやすいことが挙げられる。確定申告処理時では、○、×で回答する形式が採用されており直感的な操作が可能だ。

 煩雑化しがちな会計処理の簡素化を実現しているため、サクサクと処理が進められるだろう。また、契約プランにもよるが、freee会計では確定申告時に必要な次の書類が作成できる点もおすすめしたい理由の一つだ。
 freee会計に入力した収支データが、これらの書類を作成するときに反映されるため、税に関する知識が全くない人でも、経理経験がゼロの人でもスムーズに確定申告に必要な書類が揃えられる。
・青色・白色決算書(事業用・不動産用)
・青色・白色申告書
・消費税申告書
・総勘定元帳
・損益計算書
・貸借対照表
・現金出納帳
・固定資産台帳
 さらに、確定申告時に申請が必要となる次の情報を入力できるため、控除漏れが起きる心配もない。
・株・FX取引
・医療費
ふるさと納税などの寄付
・セルフメディケーション
・国民年金・国民年金基金
・国民健康保険・その他社会保険
・小規模企業共済・企業型年金など
・住宅ローン
・生命保険・地震保険
・予定納税・損失繰越
 これだけ機能が整備されていると、確定申告に自信がないフリーランスの人でも、安心して処理できるのではないだろうか。freee会計は、確定申告初心者の強い味方といっても過言ではない。
●無料プランでも使える便利な機能
 freee会計には無料プランと有料プランがある。無料プランでも口座との連携、後述する家事按分の計算機能といった利便性の高い機能は使用できるため、まずは無料プランで試してみるのも一つの手だ。
 では、これらの機能の特徴について解説する。
●金融機関の口座との連携が可能
 クライアントが複数にわたる場合、入金履歴を通帳から追っていると手間がかかる。また、経費管理も例外ではなく、ついつい収支の管理が後回しになってしまう人は多いのではないだろうか。
 freee会計の無料プランは無料にもかかわらず、口座情報との連携が可能だ。
freee会計と口座情報の同期設定を済ませるだけで、「収支管理が大変」というフリーランスの悩みを解決してくれる。
 しかも、レジアプリや交通マネー系ICカードとも連携が可能なだけではなく、複数の口座を登録できるため、freee会計の使用により、全ての経費の一元管理が実現する。
 しかし、利便性に魅力を感じる反面、セキュリティ面に不安を覚える人もいるかもしれない。freeeは個人情報保護第三者認証プログラム「TRUSTeプログラム」のライセンスを取得している。
 データ保存時には暗号化して第三者への漏洩を防止するなどセキュリティ面も強化しているため、安心といえそうだ。
●家事按分の計算機能を搭載
 フリーランスとして活動している人の中には、自宅の一角を作業スペースとしているケースも珍しくない。その場合、事業に使用する費用を計算して割り出すことにより、経費としての計上も可能になる。このことを「家事按分」と言うが、毎月計算するのは少々面倒に感じるだろう。
 freee会計の無料プランには、家事按分の計算機能が搭載されており、予め設定した比率に基づいて費用を割り出せる。そのデータは確定申告時に活用できるため、スムーズな経費計算が実現するわけだ。
 ただし、事業利用比率についてはfreee会計のシステムが決めるのではなく、事業者自身が決める必要がある。
 例えば、家賃の事業利用比率を算出する際には、事業で使用している床面積が全体の床面積の何割程度になるかを計算するといい。
そして、その値をfreee会計に入力することで、簡単に家事按分が割り出せる。
●有料プランならではの利便性が高い機能とは
 freee会計の有料プランには「スターター」「スタンダード」「プレミアム」の三つのプランが用意されている。無料プランでも使えるが、有料プランでさらに利便性が高まる機能について紹介する。
●無制限で領収書のアップデートが可能
 freee会計は「ファイルボックス」と称するクラウドストレージ機能を搭載する。ファイルボックスでは、領収書を電子管理できるのだが、無料プランでは月に5件しか登録できない。月5件となると、支出が多い人にとって、無料プランでは経費管理の手間が省けるとは正直言い難いところがある。
 有料プランであれば、月10GBまで「ファイルボックス」に領収書を読み込める(スタンダードプラン、プレミアムプランの場合)。この機能の活用により、freee会計と同期していない口座やクレジットカードから支出した経費を、わざわざ手入力する必要がなくなるのだ。
 また、freee会計のアプリをスマートフォン(スマホ)にインストールすることで、タクシー代や会食費など、経費が発生したタイミングで領収書を読み込むことも可能になる。面倒なレシートや領収書の整理を行う手間が省ける。
 さらに、オンラインストレージ「Dropbox」に保存した領収書もインポートできるため、手元にある領収書と併せてfreee会計で一元管理できる。
 ちなみに、領収書の原本については、白色申告では5年、青色申告であれば7年の保存期間が決まっている。
freee会計上に反映した後も原本は大切に保管してほしい。
●複式簿記の出力も無制限
 フリーランスが青色申告によって確定申告を行う場合、複式簿記で記帳する必要がある。しかし、簿記を学んだことがないと、どのような方法で処理したらいいのか分からず、途方に暮れてしまうだろう。
 freee会計では、取引内容、支出内容を入力すると、複式簿記の形式に沿った内容で処理してくれる。しかも、「総勘定元帳」「仕訳帳」「損益計算書」「貸借対照表」など、フォーマットに合わせてデータを反映してくれる優れものだ。
 実は、無料プランでもこの機能は使えるが、お試し10データしか出力できないため、取引内容が多い方の場合は、無料プランでは事足りないだろう。有料プランであれば無制限で出力できるため、何度修正しても、ほしいだけデータが取得できる。
●確定申告まで一括処理するなら有料プランがおすすめ
 freee会計の無料プランは、収支管理における最低限の機能は搭載されている。むしろ、無料とは思えないほど機能は充実しているといえる。
 しかし、無料プランの場合、取引データや請求書類に関するデータは、保存期間が1カ月間と定められている。つまり、確定申告処理のために過去データを遡ることは不可能なのだ。
 ただし、無料プランで入力したデータが消えることはない。
データ自体は残っているため、有料プランにステータスを変更すれば入力した情報は確認できる。
 そして、無料プランの最大のデメリットは、確定申告書の申告書類が作成できないという点だ。
 住所や氏名などの個人情報、収支に関する情報を入力し終え、いざ確定申告書を印刷しようとすると、有料プランへの移行を促すメッセージが表示されるのだ。
 freee会計の無料プランで計算し、確定申告書の様式に写し書きする方法でも構わないが、利便性かつ効率性を求めるのであれば、有料プランが望ましいだろう。(GEAR)
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