■世界で20億人が視聴するYouTubeと、それに投稿するYouTuber

【狩女子】狩猟×映像。YouTubeって何? 誹謗中傷は?の画像はこちら >>



 皆さんこんにちは! 茨城県でヨガのインストラクターの傍ら、新人農家&猟師をしているNozomiです。今回は、私のYouTube活動について綴らせて頂こうと思います。


 私は仕事の傍ら、『Nozomi's狩チャンネル』というYouTubeチャンネルで、狩猟の様子や田舎暮らし、農作業の様子を配信しています。でも、そもそもYouTubeの仕組みとは? YouTubeの難しい事や、つらい事、やっていて良かった事などお伝えできればと思います。私の拙い文章を通して、少しでも“狩猟”に興味のある方、すでに“狩猟”に携わっている方、そして何より“いのち”と向き合っている方のお役に立てれば幸いです。



【YouTubeってどんなもの? 広告収入は?】
 突然ですが、皆さんは暇を持て余している時や、自宅でのリラックスタイム、バスタイム、ちょっとした空き時間や、作業中、調べものなどをする時はどうしていますか?私はここ数年動画配信サービスの「YouTube」を利用することがとても多くなりました。携帯電話やタブレットにアプリをダウンロードして、なんとなく“お勧めの動画”を見たり、作業用BGMとして音楽を流したり、自分が知りたいことについての解説動画を見たりと、その用途は多様です。



 2020年1月、NTTドコモが全国の15歳から79歳の約7000人の男女を対象に行った動画サービスの利用動向調査によると、なんと「YouTube」の認知率が驚異の95.1%、利用率も62.3%と、認知率・利用率ともに動画配信サービスの中で最も高い数字をマークしました。

動画サービスと言っても、「YouTube」「ニコニコ動画」「GYAO!」「AbemaTV」「TVer」「Amazonプライム・ビデオ」などなど、その種類は数多いですが、ダントツです! しかも、2020年、YouTubeのアクティブユーザーは世界で20億人を突破(!?) その勢いは留まることを知らず未だに驚異的な勢いで伸び続けています。



 これだけの「需要」があれば、もちろん「供給」もどんどん生まれていきます。やがてYouTube上に動画を上げる“動画投稿者”の事を“YouTuber”と呼び、さまざまなジャンルが生まれ、たくさんの動画が作りだされていきました。やってみた系の動画を配信する「チャレンジ系YouTuber」、メイクやコスメなどについて配信する「美容系YouTuber」、子ども向け動画の「キッズ系YouTuber」、ゲーム配信をする「ゲーム実況系YouTuber」、料理やグルメを紹介していく「料理・グルメ系YouTuber」などなど、最近は迷惑行為を繰り返す「迷惑系YouTuber」などというジャンルもあるようです……。



 彼らYouTuberの収入源は主に「広告収入」です。動画コンテンツの広告は長い間「テレビCM」が主流でしたが、YouTubeでは動画内に広告を掲載することによって広告収入を得ることができます。

ここで勘違いをされている方も多いのですが、動画を配信すればだれでも単純に収入を得られるわけではありません。広告収入と言っても収入をまともに得られるようになるまでは厳しい審査がありますので(収入を得られるようになった後も動画一本配信する度に審査が入ります)、先に紹介した犯罪まがいな動画を配信する「迷惑系YouTuber」など、違法、暴力的、卑猥、いわゆるパクリなどのコンテンツを配信する動画やYouTuberには基本的には収入はつかないようになっています。 
 なお、迷惑行為を繰り返す人を「迷惑系YouTuber」というジャンルに落とし込み、YouTuberとくくるのは、その他真面目に動画投稿をしている人にとって、それこそ「迷惑」で失礼な話なので、個人的には好きではないです……。



 もちろん動画を供給するのにも、費用は掛かります。YouTubeに動画を投稿すること自体は無料ですが、撮影機材や、動画編集ソフトなどはとても高額です。1から揃えるとなると数十万円はかかるでしょう。

例えばその他、メイク・コスメ系は化粧品が、料理・グルメ系は食材費や飲食物代が、「~やってみた」などのチャレンジ系も企画に応じて、用意するものはたくさんあります。え? 話すだけならお金はかからないって? 先に述べたように、YouTubeで収入が得られるようになるまでは長い道のりがあり、厳しい審査をクリアしなければならないので、それまでにかかる費用は未来の自分への“投資”という形になりますね(;・∀・)



■狩猟×映像。「Nozomi's狩チャンネル」

 さて、自分の狩猟スタイルや、装備品、罠の作り方や、狩猟の日常などを主に配信している、私達のYouTubeチャンネル「Nozomi's狩チャンネル」ですが、最近は雑誌などで「狩猟系YouTuber」と紹介して頂くことが増えてきました。「YouTuber」という言葉は本当につい最近にできたものなので明確な定義はありません。ようやく最近では正式な“職業”を指す言葉としても認知されてきましたが、数本でも動画を上げている人を「YouTuber」と呼ぶ人も、それこそ名乗る人もいるのだろうし、動画の広告収益で生活してる人のみの事を「YouTuber」と定義づける人もいます。



 ちなみに『YouTubeの動画を創る人』という意味で、収益に関係なく、YouTubeの規約に沿って動画を定期的に配信する人達の事を「YouTubeクリエーター」とも呼びます。

なので、実は私は自分のことを「YouTuber」とは思っていませんし、そもそも「狩猟系」とも思っていません。そうですね……。あえて私の認識を言葉にするのであれば、『私の動画を見てくれている方たちに「狩猟系」として必要とされて、私はそれに全力で応えたいと思っている』という認識です。誰かが私を「狩猟系YouTuber」として必要としてくれているのであれば、これからも「狩猟」というこの業界や地域に貢献できるように日々努力を続けていきたいと思っています。



【YouTube。目的ではなく、一つの手段】
『Nozomiさんは何故、狩猟に関する動画を「YouTube」で配信し始めたのですか?』とよく質問を受けます。

一番最初の理由は「あまりにも狩猟を勉強するための情報が少なかったから」です。私が狩猟を始めた数年前は狩猟にまつわる情報はとても少なくて、特に解体などの文章媒体での情報伝達が難しいものは本当に本当に苦労しました……。「習うより慣れろ!」や「見て盗め!」といったご意見もありますが、新人なのでまず慣れるほど獲物が獲れません。それに、私は縁あって、素晴らしい師匠と出会う事が出来ましたが、そうではない方も多いと思います。このように情報の少なさやムラは、狩猟の新規参入者のハードルを上げてしまう一つの要因だと思うのです。



 猟師の高齢化に伴い、現場で活躍する猟師の数はどんどん減り、さらに新規参入者が減少していけば、先輩猟師の方たちが長年にわたって築いた、かけがえのない知識や素晴らしい技術は失われていきます。

そうなることによって、私の祖父母の畑を含む、農村部の畑の害獣被害はどんどん増え、農家さんたちは苦しみ、悩み、独自に対処しますが追いつかず、最後には疲れて諦め、畑を手放します。手放した畑が耕作放棄地になることによって獣と人の境界線は薄れ、彼ら(獣)の活動範囲はどんどん広まり、残された畑の被害はもっと大きくなっていきます。



 問題の解決に取り組もうと思ったときに、新人で無知な私が現場でできるコトは限られていました。自分になにができるかを考えた時に、行き着いたのが“情報発信”でした。“勉強用”として、狩猟免許を取るまでの過程や、獲物を捕るまでの過程、解体動画の配信を始め、情報発信の一つの手段として、YouTubeを選びました。また、自身が歩んだ軌跡をブログのように残したかった、という理由もあります。日々の成長を振り返り、努力を重ねていきたい。そして、私の動画をみて、一人でも私と同じ悩みを抱えている新米猟師さんや、猟師へのハードルが高くて思いとどまっている人が減れば……それはつまり、私と同じように害獣に困っている農家さんが減る、という事です。



 狩猟動画を自身の振り返り用として投稿し始めたところ、意外な事が起こりました。なんと全国の“現役”猟師さんからコメントやアドバイスまで頂けるようになったんです。どの業界でも現場の生の声というのは大変勉強になります。もちろん地域や、猟法の違い(罠・銃・網)はあります。だけれども、この業界にとっては特に“現役”猟師さんの生の声というのは大変参考になるし、なにより心強い。本当に本当に、感謝しています。



■誹謗中傷。YouTubeを始めてつらかった事

 YouTubeに限らず、情報発信をしていくにあたって私が一番つらかったことですが、「皆が皆、私と同じ考え方ではない」こと、そして「その同じ考えで無い人たちの中には、違う考え方を排除しようとする人達や敵意をむき出しにする人達がいる」ということを身をもって痛感したことでしょうか。「狩猟」というのは命を扱うとても繊細な内容です。“命を奪いに行く私”に対して、“命を奪わせたくない人々”も、もちろん居ます。難しい問題です。彼らを簡単に否定することはできません。たったひとつの物事でも、立場が変われば考え方や捉え方は千差万別です。なにが“善”で何が“悪”かを私の立場で一方的に決めることはできません。



 一時期は毎日のように誹謗中傷を受けることもありました。私が発信した内容に沿った「ご指摘」や「異論」などは今後の情報配信の参考・改善に繋がりますのでとても嬉しい事ですが、辛かったのはやはり、一方的な「死ね」や「呪ってやる」「殺してやる」等の暴力的な文言でしたね。普通に生きていたら、まず他人から言われ慣れることが無い言葉です。一時期はあまりの過激さにハゲたり(!?)、気分が落ち込んだり情報発信をやめようと思ったほど悩みましたが、最近ではあまり気にならなくなりました。彼らは彼らで一生懸命に正義を貫こうとしていることに気が付いたからです。



 また、彼らの中に「自分が悪意を持って誹謗中傷している」と自覚がある人は少ないように思います。正義感の強い彼らは、正義の名のもとに“悪”である私を屈服させ排除しようとしている“だけ”なんです。なので彼らの中で“悪”である私が反論したところで彼らの考え方は変わりません。(むしろ火にガソリンを注いでいるようでしたね……。)



 だからと言って誹謗中傷は許されていいとは思っていませんが、私も私なりに信念をもって情報発信をしているので、私の考えも彼らに何を言われたところで変わりません。



 それに私は“命”に対して“無頓着”であることこそが一番悲しい事のように思います。―かつての私のように。そう思えたときに、ようやく“命”をめぐる論争から起因している誹謗中傷はあまり気にならなくなっていました。おそらく私が誹謗中傷されるように“命を奪わせたくない人々”の中の情報発信者も、それなりに誹謗中傷されているのだと思います。お互いに誹謗中傷のない世界になればいいなぁ、と心から思います。



■私が最近気になっている狩猟系動画クリエイター

 さてさて、以前もお伝えしたように、私は罠を使って自分達の畑を囲む山々に罠を仕掛け、イノシシを駆除していますが、「狩猟」とひとくくりに言っても本当にその世界は様々です。目的、地域の特性、スタイル、猟法、解体方法。解体方法ひとつとっても、私と、私に狩猟を教えてくれた師匠とでは、やり方が微妙に違います。私は本当に良い時代に生まれました。見ようと思えば手軽にその遠くの世界を垣間見ることができるのですから。YouTubeでもたくさんの「狩猟動画」を見つけることができましたので、その中で私が最近気になっている「狩猟系動画」を3つほどご紹介させて頂きます!



やまくじちゃんねる 著書『山のクジラを獲りたくて―単独忍び猟記』の作者である武重謙さんのYouTubeチャンネル。著書の出版もさることながら、狩猟ブログを頻繁に更新し、狩猟雑誌への寄稿など幅広く活躍する武重さんのチャンネルは、知識に富んでいてビギナーさんにとてもオススメのできるチャンネルだと思います。また著書を読んだり、動画を見て頂ければ“情報発信”に対してプロフェッショナルな意識を持っていることが分かります。狩猟初心者さんが気になるトピックを明快に優しい口調で解説されています(*'▽')
※「山のクジラ」……イノシシの事。山鯨。





Bread Gundog
 猟犬であるミニチュアダックスの『ブレッド』やポインターの『ココ』との猟の様子を配信されているチャンネル。画面からひしひしと伝わってくるのは愛情と信頼。猟犬のオフ動画などは見ていると思わずにやけてしまいます。猟犬の訓練動画や出猟動画はもちろんの事、スキート射撃やクレー射撃の練習風景を数多く配信されているので、競技射撃に興味がある人にもお勧めです。Bread Gundogさん自身のワンちゃんだけでなく、お仲間のワンちゃんたちも数多く登場します♪





松ごりTV
 2005年、アライグマが『特定外来生物』に指定されました。『特定外来生物』とは、もともと日本にいなかった外来生物のうち、生態系などに被害を及ぼす動物のことで、法律によって飼育・栽培・保管・運搬・販売・輸入を禁止されています。アライグマによる農業被害額は甚大かつ年々増加傾向にあります。松ごりTVさんでは、そんなアライグマの防除の様子を公開されています。止め差し部分の無修正での配信も多いので、観覧するのに注意が必要ですが、狩猟をするにあたって“止め差し”は避けて通れない道です。かわいそうだから、嫌だからといって誰かに任せる訳にはいきません。無修正での止め差し動画はとても少ないので、これから狩猟を始めるにあたって、“命の現場”を見ておきたい方への心構えの動画としてとても貴重です。アライグマだけでなく、ハクビシン、アナグマ、イノシシ、シカなど、幅広く地元の害獣被害の防除に貢献されています。





【終わりに】
 如何でしてたでしょうか。今回はYouTubeについて、私が情報発信する理由や、考える事について綴らせて頂きました。次回はマダニの危険性や、ダニ媒介感染症についてお話させて頂きます。この連載を通して私の、私たちの想いが、少しでも誰かに繋がり、そして何かのお役に立てれば幸いです。