新型コロナウイルスの本当の二次災害が「遅れて」やってきた。それは収入減の現実が、いま、多くの人々の生活にのしかかる。

特に住宅ローンや多額の借金がある人々にとってコロナ禍は生活破綻という憂き目にも合いかねない状況だ。
 緊急事態宣言解除から5ヵ月、戻らない収入、解雇などの雇用不安、しかし返済日は必ず来る恐怖。この恐怖をどう冷静に受け止め、対策を立てればいいのか? 多重債務、過払金請求問題解決の第一人者で「消費者金融が恐れる司法書士」の杉山一穂氏に訊いた——



◼︎「収入減で借金返済できない」と中堅企業の社員の相談急増!

【収入激減、債務問題相談激増中!】コロナも借金返済も「早期対...の画像はこちら >>





 本年5月25日、新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言(4月7日)が解除された以降も経済は回復せず、営業時間短縮要請なども災いし、外食、旅行業界など特に対人サービス(接客)業の大きな低迷が続いている。また、日本経済全体を見ても、3年9か月ぶりに「需要」が「供給力」を下回る異常事態が続いている(NHK NEWS WEB)。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201012/k10012658991000.html?utm_int=all_side_business-ranking_001



 この「需要」なき日本経済の低迷、その7割を占める個人消費の中心——サービス業に従事する会社員の人生設計が「資金繰り」の点で狂わされているという。ゆえに住宅ローンを含む借金返済で困り果てた人の返済相談がいま激増しているのだ。 多重債務問題や過払金請求問題解決を担う「司法書士法人 杉山事務所」の代表司法書士、杉山一穂氏は、こう語る。



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「企業の正社員の方の相談が6月以降で増えました。明らかにコロナによる人々の外出自粛の影響です。特に飲食やホテル・旅館、旅行代理店、式場・イベント関係の会社員の方々の相談が増えています。航空・運輸関連会社の社員の相談も増えています」



 杉山氏によれば、各種サービス業界でも中堅企業の社員の相談がかなり増えているという。特に営業自粛と顧客の減少、あるいはリモートワークにより通常見込めていた残業代のカットなどで個人債務への返済が滞るようになったようだ。



 「例えば、相談者のある飲食業の方は給与が手取り30万円から5万円減給されたと言います。大企業に比べ中小企業の場合、基本給が低く、役職手当や残業(みなし残業)代などで給与が建てつけられています。生活費に回せていた所得が見込めなくなると、借金返済だけでなく、日常生活も苦しくなっていきます。ある旅行代理店にお勤めの方は、給与が半分になった方もいます」(杉山氏)



 日本経済が、個人消費とインバウンド(訪日間顧客の日本国内での消費)でいかにサービス業中心で回転していたかを物語る現実である。 
 そしてコロナによる企業倒産件数も緊急事態宣言解除以降(168件。5月31日帝国データバンク調べ)、3.58倍の602件(従前)に増えている。
 業種別上位は「飲食店」(86件)、「ホテル・旅館」(59件)、「アパレル・雑貨小売店」(43件)といずれも対人接客サービス業である。https://www.tdb.co.jp/tosan/covid19/index.html



 当然、そこに務める社員は減給だけでなく、自らの雇用も守られるかの瀬戸際にいるのかもしれない。 
 では、自分を守るために債務返済のために知るべきこととは何か? 
 特に、コロナにより失業率も回復されない雇用不安定な現在、やはり大切なのは「借金」を返済するための基本的知識だろう。 



 ◼︎ポイントは借金の「元本」が減っているかどうかを知る

 杉山氏は、元本(借金の元金)が本当に減っているかどうかの「気づき」が大事だと語る。つまり、毎月の返済には利息(貸し手に対し元金に一定の期間、率で支払われる対価)がどれくらいかかるのかを把握されていない方が多いという(【「利息」の計算】参照)。



【利息の計算】
◼︎年15%で100万円を借りた場合、まず「利息」はいくらか
100万X1.15=115万円
115万−100万=15万円(利息)
*1年間で15万円分を「余計」に支払う債務が生じる。


*1年=12ヵ月で割ると、1万2,500円(1ヵ月)
*1日=365日で割ると、411円(1日)
(例えば、吉牛の牛丼・並1杯分以上「利息」で支出しているのと同じ)



「例えば、手取り30万の会社員が、法定金利年15%で100万円の借入金がある場合、5万円減給され、25万円で生活せねばならなくなったときどうなるでしょうか。仮に8万円の家賃を支払う場合、17万円です。そのなかから光熱費やスマホの通信費など払えば、使えるお金は15万円を切るかもしれません。ましてや、子供がいて塾などの教育(養育)費がかかり、さらに、利息を払うとなると、なかなか元本が減らず、生活はますます苦しくなるでしょう」(杉山氏)



 では、借金返済で生活が回らなくなったとき私たちはどうすればいいのだろうか。また、具体的に何をすればいいのだろうか?



「新型コロナウイルスと同じく、しっかりとした知識を身につけ、借金返済を曖昧に大丈夫だと思わずに、『正しく恐れる』ことが必要なんです」(杉山氏)





◼︎借金返済もコロナ同様「対策」が大切

 コロナ禍では「三密」を避けるなど、命を守るためのクラスター対策を、政府はじめ各メディアが警鐘を鳴らしている。同様に杉山氏もはっきりと借金返済への対策の重要性を訴える。特に個人の銀行系ローン、消費者金融からの借り入れによる多重債務問題は、一歩間違えれば、返済不能に陥る。



「コロナも借金返済もやはり対策が第一。返済できないときに、何を行うか。多くの方は、金利返済のための借り入れを行うという負の連鎖にハマってしまいます」(杉山氏)



 本当に「返せない」時、債務者のとるべき対策として実際に何があるのだろうか。杉山氏によれば、以下の3つの方法があるという。



❶任意整理:毎月の返済額を減らす方への手続き
❷個人再生:住宅を手放したくないが借金を大幅に減額したい方への手続き
❸自己破産:住宅・車など財産処分してでも借金を0にしたい方への手続き



「そのなかでも多くの方が選ばれるのが任意整理です。

継続的に返済できる安定収入がある会社員などは、3~5年程度で完済できる方が多いからです。下のチャートを見ていただき、任意整理ができる基準をお教えします」(杉山氏)



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 任意整理とは、司法書士、弁護士が消費者金融、クレジットカード会社、銀行などの貸金業者に対し、依頼者が月々の支払い可能な金額で分割によって支払うことを提案し、その相手方が提案に同意して和解契約を結ぶことです。頭書の契約した返済額ではなく、生活に支障のない返済額に減らすことができます。ここで、任意整理のメリット・デメリットもみておきましょう」(杉山氏)



◆「任意整理」のメリット・デメリット
【メリット】
①毎月の返済額面を減らせる
②貸金業者からの督促や返済をストップできる
③家族に借金があることがバレずに毎月の返済額を減らせる

【デメリット】
①一時的に信用情報機関に登録される
​——(司法書士法人杉山司法事務所のHPを参考に編集部作成)



 会社員はこうした知識がないので苦しんでいるのではないか。特にコロナ禍で、収入が容易に回復されない状況下にあっては「返済方法」を債権者と和解しながら結び直すことで返済も「楽に」なるはずだ。



「そうなんです。任意整理は返済自体を免責されるわけではありませんが、実情に沿って返済する仕組みなんです。多くの債務者の方は、真面目な方が多く、浪費家でもありません。ですので、返済のリスケジュールと方法を変更するだけでも、立ち直れるんです。ですから早期対策が必要なんです」(杉山氏)



 新型コロナウイルスと借金問題は、まず当たり前の対策を、できるところから始める。正直に、無理をせず、自分の債務状況、利息を把握するだけでも人生計画の展望を適正に変えることができる。やはり正しい知識でしっかり債務整理。



「ストップ!多重債務‼️」



 コロナによる健康被害も借金問題でも「潰れない」という気持ちで対策を立てていきましょう。それが命と生活、あなたの人生を守ることができるからだ。



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