「中高年になって、“性”の衰えを感じる」」……世の男性の多くが、若い頃とは変わってきた“性”の悩みを持っている。中高年の性の悩みに、80歳を超えてなお元気な医学博士•志賀貢先生が、アドバイス。
(『男を強くする! 食事革命』より引用)■北の刺身料理はイカソーメンにとどめを刺す
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 イカは、コレステロールを多く含み、睾丸の男性ホルモンのアンドロゲンを作り出すために、きわめて役に立つ食材であることは、すでに説明いたしました。とくに、干したスルメイカは、まるでコレステロールの固まりのように、この成分を多く含んでいるのですが、生のイカにも同じようにたっぷりと含まれています。

 生のスルメイカ100グラムには、約250ミリグラムのコレステロールが含まれています。成人男性の一日に必要なコレステロールの量は、約750ミリグラムですから、生のイカを300グラム食べただけでも、この必要量を満たすことができます。

 300グラムというと、いかにも多い量に聞こえますが、料理に工夫を加えると、そう難しい摂取量ではありません。イカの食べ方には色々な方法があります。

よく知られている、イカ刺し、煮つけ、イカ飯、イカの鉄砲焼き、塩辛などは、いつでも食卓に並べることのできる、まさに庶民の味です。

 我々日本人は、このイカとの縁が深く、もっとも好まれる海の幸の一つではないかと思われます。このイカ料理の中で、とくに食欲を誘い、男の精力保持のために役立つ食べ方は、なんといっても刺身です。中でもイカソーメンは、生のイカの味を徹底的に引き出す料理として、極めつけの刺身と言えるかもしれません。

 イカソーメンの作り方は、とても簡単です。まず、一杯のイカの足を抜き、身の部分の皮をはがします。

それから身を開き、刺身包丁で縦に細く切っていきます。なぜ、縦に切るかと言いますと、イカの胴体の部分の繊維は横に走っています。この繊維を縦に切ることによって、より食べやすくなり、かつイカの身のうまさを引き立てることができるからです。また、イカをそうめん状に細く切ることには、アニサキスという寄生虫を予防する効果もあります。近頃、とみに注目されるようになったアニサキスは、魚介類を中間宿主として寄生し、それを食べることによって、人の胃腸にアニサキス症という感染症を起こします。胃腸の中に入ったこの寄生虫は、皮膚に刺さっていく傾向にあり、猛烈な痛みを発症します。
したがって、生の魚介類を食べるときには、十分にこの寄生虫を排除しなければなりません。

 イカの刺身をつくる場合も、まず皮をむいた身の部分を灯に照らして、虫がいるかいないかを確かめ、さらに念のために細かく身の部分を切ることによって、虫を排除することができるのです。

 こうして食べると、安全なうえに、なおかつイカの旨みが十分に引き出せるようになります。

 とにかくイカソーメンは、文句なしにうまいの一言に尽きます。かつて、札幌に講演に招かれたときに、宿泊したホテルの寿司屋でこのイカソーメンを食べたことがあります。

 そのときは、そうめん状に切ったイカを載せた軍艦巻きを出してくれました。

このときの寿司の旨さは、北海道生まれの私でさえ驚くほどの美味でした。今考えてみると、板前さんの包丁さばきが抜群で、あまりの美味しさにいくつもいくつも、この軍艦巻きをアンコールしたほどでした。

 札幌には三日ほど滞在しましたが、夜になるとあの軍艦巻きが忘れられずに、毎晩寿司屋に通ったものでした。

 近頃では、東京や横浜の寿司屋でも、このイカソーメンを握りで出してくれるところも増えてきました。私のように、イカの本当のうまさを知っている者にとっては、嬉しい限りです。ともかく、イカには男性の若さを保つ原料となる、コレステロールがたっぷりと含まれていて、なおかつ動脈硬化を防ぐEPAも含まれています。

したがって男性が口にする食材としては理想に適ったものと言えるでしょう。

 シニアの声を聞く年になった男性諸君は、このイカソーメンをおおいに口にして、生涯現役を目指してがんばって欲しいものです。