衝撃だったク・ハラの死…。(『韓流アイドルの深い闇』著/金山 勲より)■ストレスを発散できない韓国のタレントたち
あまりに多すぎる韓国芸能人の自殺者 ~ク・ハラが陥ったリベン...の画像はこちら >>

 韓国の芸能界の特徴としては、経済的なプレッシャーだけでなく、世論からの批判も彼らを苦境に追い込んでいることが挙げられる。

 小さな誤りでもメディアで大げさに報道され、これを受けてネット上での激しい誹謗中傷が拡散し、苦境に追い込まれて自らの命を絶つ例も多いのだ。

 加えて、それが家族のことにまでおよび、家族全体のプライバシーまでもネットで暴露されてしまうこともある。

 こうなると、本人が芸能人であるために家族へ迷惑をかけ、家族に対して申し訳が立たないという儒教的な価値観に陥る場合も少なからずあり、本人を心理的に追い詰めてしまうようだ。

 先に挙げた、「大紀元時報」の記事によると、江北サムスン病院精神科医のシン・ヨンチョル教授は、韓国芸能人の自殺について、発散しにくい世論からのプレッシャーが大きな原因となっているとしている。

 韓国のタレントたちは、ストレスを発散する空間がなく、いたる所でインターネットに監視されていて、ネット上で広がるデマもタレントに大きな精神的ストレスを与えているという。このような社会で、タレントたちの自由な空間は非常に狭いと、彼らは実感しているはずだと言う。

 教授の言う典型的な例として、2007年2月に俳優イ・ガンヒ宅で首吊り自殺した、同じ事務所の女優チョン・ダビンを挙げている。

 同じ名で子役から多くのドラマに出演している女優もいるので混同しやすいが、彼女は愛嬌のある笑顔で「隣の女の子」といった親しみやすいイメージで広く愛されていた。

 所属事務所と契約をめぐるトラブルや、仕事の減少などで悩んでいたとされるが、ネットに書き込まれた悪意ある誹謗中傷に苦しんでいたともされている。

 自殺前日の彼女のウェブサイトの日記には「神が私を迎えに来た」とあり、弔問に訪れた多くの共演者たちも、他人事ではないという気持ちではなかっただろうか。

 さらに話はこれだけで終わらない。チョン・ダビンはトップスターとして活躍する女優チェ・ジンシルの少女時代を描いた2000年公開の映画『燃ゆる月』に、チェ・ジンシル役で出演したが、その国民的スターだったチェ・ジンシルも、2008年10月に首吊り自殺したのである。

彼女は前日にCMの撮影をし、次回作ドラマの打ち合わせをしておきながら、ネット上の悪質なデマに勝てず、浴室で自殺してしまった。

 欧米社会では、芸能人のプライベートや過ちなどは、犯罪的なことでなければ寛容に受け止め、過ち自体もエンターテイメントの一部として受け入れる素地もある。しかし韓国ではそれが誹謗中傷のネタとなるのだ。

 ハン・ソヒは一審で懲役3年、執行猶予4年、保護観察120時間、追徴金87万ウォンの刑が宣告された。彼女はこの判決を不服として控訴したが、その後控訴を取り下げ刑が確定した。

 ハン・ソヒの罪がトップより重かったのは、大麻の吸引回数が多いことや、ほかの薬物にも手を出していたことが判明したからだ。

■ク・ハラが陥ったリベンジポルノ

 象徴的な事件なのが、KARAの元メンバー、ク・ハラの自殺未遂だろう。彼女は2019年5月26日、ソウル市内の自宅で意識不明の状態で倒れているのをマネージャーに発見された。警察に通報し病院に搬送されたが命に別条ないとのことだった。

 ハラは前日の25日、自身のインスタグラムに「大変なのに大変じゃないふり、つらいのにつらくないふり、中身はボロボロ」などと書き込み、精神的に参っている様子であったことから自殺未遂だったと見られている。

 事実彼女には昨年からさまざまなことが降りかかっていた。

 2018年9月13日未明、江南区の住宅街で当時の交際相手ヘアデザイナーのチェ氏と別れ話のもつれから殴り合いの喧嘩になった。

 その後チェ氏は、ク・ハラと一緒に撮った性的動画を彼女の携帯に送り込み「芸能人の人生を終わらせてやる」と脅迫したという。

 それに対して彼女は、土下座してポルノ画像を公開しないように頼んだ。ク・ハラがエレベーターの前で懇願する動画もネット上に投稿され、この「リベンジポルノ事件」が広く知れ渡ることとなったのだ。

 ク・ハラとチェ氏のトラブルは、当初は双方の暴行事件として警察に通報され、事実関係を中心に捜査が行われた。その過程でソウル・江南署は押収したチェ氏の携帯電話からク・ハラの写真の存在を確認した。

 動画はク・ハラの同意なしに撮影されたもので、当局は彼女が十分に羞恥心を覚えられる物とし、これを証拠としてチェ氏を強要・脅迫、性犯罪の処罰等に関連する特別法違反で在宅起訴とし、ク・ハラを起訴猶予とした。

 さらにク・ハラは、2019年春には、眼瞼下垂(がんけんかすい)の手術を受けていたことで、美容整形疑惑とされてネット上で中傷が相次いでいた。それに加えて元交際相手チェ氏の裁判があり、あれやこれやと騒がれた。

 ク・ハラは、この事件を期に芸能活動を自粛せざるを得なくなり、ふさぎ込むことが多かったという。ク・ハラの自殺未遂もまた、ネット上を舞台にしたリベンジポルノや誹謗中傷などにより、精神的にうつ状態に陥っていたことが大きな原因の一つだろう。

編集部おすすめ