韓国の場合、日本の芸能界と比べて現役芸能人の自殺が圧倒的に多い。…。
『韓流アイドルの深い闇』著/金山 勲より)■韓国人には精神疾患が多いというデータ
韓国芸能界の『うつ病芸能人』を生み出す土壌とは ~韓国人には...の画像はこちら >>

 『冬のソナタ』にも出演していたパク・ヨンハ、『火の鳥』に出演していたイ・ウンジル、チェ・ミンシクなど、一瞬の煌めきを残して、自らの意思でこの世を去った韓流スターたち。

 この数年に限らず、韓国芸能人の自殺率の高さには、日本人の感覚からすれば、信じ難い状況だろう。

 2010年7月、ニューヨークに本部を置く中国系の「大紀元時報」では、韓国芸能界のこの現象について、延世大学行政大学院に在籍する韓国女優・朴辰姫さんが書いた、「韓国芸能界の自殺問題に関する学問的研究」を紹介している。

 論文では、調査対象になった260名の韓国芸能人のうち、40パーセントが軽度あるいは深刻なうつ病を患っており、40パーセント以上が自殺する傾向にあったと指摘しているという。

 事実、韓国芸能人の自殺原因として、精神疾患でも特にうつ病が取りざたされることが多い。

 この現象は芸能人だけに留まらず、2017年4月に韓国保健福祉部が発表した「二〇一六年の精神疾患に関する実態調査」の結果によると、韓国の成人が一度以上精神疾患を患ったことがある割合を表す「精神疾患生涯有病率」では
25・4パーセントというのだ。男性が28・8パーセントで、女性が21・9パーセントだという。

 直近の1年間に精神疾患を患った人の割合でも11・9パーセントで、約470万人が心の健康に問題があったと推計されている。うつ病の生涯有病率は5パーセントで、女性が男性の2倍以上とされる。不安と恐怖により、日常生活に支障が出る不安障害の生涯有病率は、男性より女性が高いという結果だ。

 ちなみに、厚生労働省の調査によると、日本の精神疾患の患者数は、2014年の調査で約392万4000人。韓国の精神疾患者数がいかに多いかわかるだろう。

 うつ病の多さに伴い、韓国では自殺率も高い。経済協力開発機構(OECD)加盟国中で、韓国の自殺率は2003年から2016年までの13年間連続で上位にランクされるワースト記録を持っている。

 韓国統計庁の資料によると、2016年の自殺者は1万3092人で1日平均36人。40分に1人が自殺する計算になっている。

 この数字はOECD加盟国の平均12・1人に比べ、2・4倍に相当しており、日本の17・6人に比べてはるかに多い。

 2016年の韓国警察庁の資料によると、自殺の原因についても、1位はやはり精神的問題(36・2パーセント)となっている。韓国での自殺は交通事故による死亡率の2・5倍だ。

 こうした社会的背景がある韓国で、一般人よりも華やかで、目立つ存在の芸能人は、よほどに強靱な精神の持ち主でなければ生き抜いていけないようだ。

 多くの業界関係者や、芸能ジャーナリストなどが言うのは、韓国の芸能人たちは経済的なプレッシャーや、世論の圧力に耐えなければならず、常に緊張を強いられる精神状態にあるという。

韓国芸能界の『うつ病芸能人』を生み出す土壌とは ~韓国人には精神疾患が多いというデータ~
■強靱な精神力がないと生き残れない

 韓国芸能界の厳しい生存競争は、自殺の原因の一つであるといえる。

 韓国の芸能界では事務所とタレントの給与配分は一般に7対3、あるいは8対2の割合とされ、公演の経費も芸能人が自腹を切る場合があるという。

 小規模芸能事務所の多くは、経営状態が良くないという理由で、タレントの給料を搾取して、一割の報酬さえも得られない悲惨な境遇に置かれているようで、こうした芸能人の数は少なくない。

 芸能プロダクションにしても、一発当たれば大金が入る韓国芸能界に憧れて、次々と人材を送り込むが、成功するには莫大な投資が必要なことは、これまで紹介してきた通りである。

 投資をしても当たるかどうかは分からないというギャンブルで、ハイリスクの世界を耐え抜いていくのは容易ではない。当事者たちはいつも不安とストレスに苛まれているのである。

 それに、韓国内での市場は狭く、仕事の量が限られているがタレントは多く、凄惨な競争の中で栄光をつかみ取らねば生きていけないという状況がある。

 過度な競合環境で、芸能人は所属事務所にコントロールされ、金儲けという歯車の一部になってしまっているのだ。

 そのため、タレントは恋愛や髪形、些細な私生活まで、すべてを事務所に管理されているケースが多く、事務所が想定している理想の姿が求められており、自由はまずないといっていい。

 そのうえ前述したように、事務所から性的な奉仕を強要されるケースもある。

 多くの芸能人は、人気が出ると奴隷契約から逃れようとして、事務所から独立することを望む。

 しかし、人気があるタレントでも、プロモートしてビジネスとして芸能界を泳ぎ渡っていくノウハウに乏しいため、失敗する例が多い。

 仕事の絶対数が限られている中で、業界の既得権益を犯す新しい動きは、業界全体として極度に警戒されるのだ。

 芸能界の、特にK–POPにコリアンドリームを夢見ている多くの人には、この件についての現実的理解に乏しいように私には思える。

 日本の芸能界は韓国と比べて市場の懐が深く、日本的な習慣として、タレントには「月給+広告などの収入の歩合制」で支払われることが多い。

 つまり、タレントを商品としては見ず、持ちつ持たれつの関係という傾向が強く、タレントたちは比較的安定した収入を得られているようだ。

 事務所のタレントに対する私生活への干渉も、韓国スターに比べて低いようだ。

 私は、日韓双方の芸能界にかかわって来たが、そのことからいえることは、韓国芸能界は自分が生き残るために切磋琢磨し、相手を打ち負かしてでも生き延びていくというものだ。

 一方で日本の芸能界では、もちろん競争はあるが、個性を重んじ、和をもって尊しとする風潮があるように思う。

 日本は周りを海に囲まれた島国国家で、外国からの侵略が少なく過ごしてきた歴史観があり、韓国は半島だが大陸の強大な国と地続きで繫がり、海からも侵攻を受け続けてきた歴史を持つ歴史観があるように思える。

 それが両国民の意識の違いだろう。それが日韓両国の芸能界のありようが違う要因の一つになっているように思えるのだ。

 日本に比べ、韓国の芸能人の自殺が遥かに多い一因は、この辺りにありそうな気がするのだが、どうだろうか。

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