■EXILEに三代目、「LDH」は銀蝿一家、それとも石原軍団か。
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 GENERATIONS from EXILE TRIBEの「紅白」初出場が決まった。

また、同じく「LDHJAPAN」に所属する三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEは去年までに7回、EXILEは18年までに12回、それぞれ出場している。さらに、日本レコード大賞では、EXILEが4回、三代目が2回、それぞれ大賞に輝いた。

 とまあ、この「LDH」一派はジャニーズやAKB&坂道系と並び、現在の音楽シーンにおける一大勢力である。ただ、これほど好悪や興味のあるなしが分かれる存在も珍しい。かく言う筆者も、好きというわけではないが、時々面白いなぁと思う。たとえば、こんな話に遭遇したときだ。

「『ダウンタウンDX』にAKIRA。『EXILEの飲み会では、途中で服を破り捨て、白いタンクトップ姿で筋肉チェックをするのがお約束』らしい。もし生まれ変わってダンスの才能に恵まれても、このグループには入りたくありません」

 今から8年前、雑誌「テレビブロス」に掲載された文章だ。じつは、書いたのは筆者自身で、このとき初めて彼らの面白さに気づいた。それはかつて、横浜銀蝿を中心とする銀蝿一家に感じていたのと同じものだ。ちなみに、横浜銀蝿の正式名称は、THE CRAZY RIDER 横浜銀蝿 ROLLING SPECIAL。

このあたりのネーミングセンスも、LDHに通じるものがある。

 そして何より、最大の共通点は、商売上手なところだ。どちらもツッパリやヤンキーといった「やんちゃ」というものの大衆ウケをよくわかっていて、芸能に活かした。たとえば、銀蝿一家のヒット曲の多くは、ロックンロールに擬態したコミックソングである。やんちゃを笑いに変換することで、愛すべきにくめなさをかもしだしていたわけだ。

 その点、LDHはあくまでかっこよさが売りだが、関口メンディーのキャラや前出の飲み会エピソードなどで笑わせることも忘れてはいない。三代目が代表作「R.Y.U.S.E.I.」で流行らせたランニングマンダンスも、日本中のやんちゃな人たちが喜んで真似しそうな、マヌケすれすれのかっこよさである。

 もっとも、商売上手という意味において、LDHのほうがスケールも安定感もはるかに大きい。銀蝿にはのちにレコード会社の社長になった者もいる一方で、覚醒剤で捕まった者もいて、一過性のブームしか作れなかった。これに対し、HIROを頂点としたLDHの体制は磐石だ。そのためか、あれだけ多くのメンバーがいながら、目立った不祥事もない。

 とはいえ、商売のなかには採算がちゃんと取れているのか、ビミョーなものもある。

映画だ。なかでも最も力を入れていそうなアクション大作「HiGH&LOW」シリーズについては、先行して放送された連ドラが低視聴率だったにもかかわらず、かれこれ5年にわたって制作し続けている。「湯けむり純情篇」と題したコメディタッチのスピンオフもあり、もはや何でもありな状況だ。

 試しに「LDH 映画」で検索すると「大コケ」というワードが自動で出て来るほどなのだが、彼らはめげない。その理由はおそらく、こういうことだろう。

「この世に映画が誕生して124年・・・幾つもの作品が世界中の人々に感動と興奮を与えてきました。未来、過去、宇宙、仮想現実、、、『娯楽の王様』と言われる映画は人類の夢と想像を形にした"ロマン"そのものです」(LDH CLUB 映画部 活動コンセプトより)

 そう、彼らは映画こそ究極の男の「ロマン」と考えているのだ。そういうところは、あの集団に似ている気もする。石原軍団である。

 昭和のスター・石原裕次郎が自分のやりたい映画を思い通りに作るため、立ち上げた石原プロモーションは、資金の使い過ぎで倒産しそうになりながら、なんだかんだで彼の死後も存続してきた。そのロマンは事務所の後輩たちも受け継いでいるはずだが、いま実践しているのはむしろLDHの面々だろう。

 そして、同じロマンを持つゆえか、石原軍団にもやはり飲食にまつわる「お約束」がある。

たとえば、若い男はとにかく食えというものだ。新人時代の石原良純なんて、地方ロケの宿泊先で裕次郎たちが勝手に頼んで余ったおにぎり約40個を食べさせられそうになった。さすがに食べきれないから、具だけ食べて、浴衣の袖の中におにぎりを隠し、隙を見て窓から捨てることに。これが舘ひろしに見つかり、殴られたという。

 そんな上下関係の体育会っぽさや、ファッションの傾向など、LDHは銀蝿一家より、こちらに近いようにも思われる。恋愛についても、石原軍団の神田正輝松田聖子の最初の夫となったように、HIROが上戸彩、TAKAHIROが武井咲をそれぞれモノにした。また、NAOTOは加藤綾子と熱愛中だし、白濱亜嵐はかつて峯岸みなみを丸坊主にした男である。

 そういえば、TAKAHIROは「EXILE Vocal Battle Audition 2006」で選ばれ、LDH入りした。メンバー脱退により開催されたオーディションでチャンスをつかんだわけだが、じつはその前に別のかたちでデビューするはずだった。「歌スタ!!」のオーディションで審査員でもある作曲家・林哲司に認められ、デビューが内定。さらに、ミュージカル「テニスの王子様」にも出演が決まっていたにもかかわらず、EXILEのオーディションが行なわれることを知り、どちらも辞退したのだ(ミュージカルにいたっては、公演開始10日前のドタキャンだった)。要は、鞍替えしたわけである。

 その判断について「1秒も迷わなかった」という彼は、こんな名言を残した。

「歌手になりたい、というより、EXILEになりたかった」

 LDHが好きな人たちにとっては、そういうものなのだろう。ある意味、そこは芸能界とも違う、特別な世界なのだ。

 惜しむらくはその特別な世界の面白さが、なかなか伝わりにくいことだ。これが石原軍団だと、うってつけのスポークスマンがいる。石原プロから独立し、バラエティタレントとして成功、しかも創業者の甥ということで何を言っても許される良純だ。

 さすがに彼ほどの人材は望むべくもないが、この際、元メンバーの暴露本でもいいから、その世界をいろいろ教えてほしいものだ。冒頭の飲み会エピソードみたいな話はまだまだあるはず。それを知れば「紅白」などでのパフォーマンスももっと楽しめること請け合いである。

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