ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなどの肩書きを持つ筆者・小林久乃。本人が「幼少期からドラマオタクだ」と豪語するほど愛するテレビドラマの見どころについて語る。
最新放送から、著書『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(好評発売中/KKベストセラーズ刊)の読者にぜひ見てほしい恋愛、結婚、女性の生きかたに関する過去作まで、週1イチ更新。読めばドラマが見たくなる、何か自分に衝動が起きるコラムをどうぞ。■ドラマ要素のおいしいところをギュギュッとな
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火曜ドラマ『G線上のあなたと私』より (c)TBS<あらすじ>

『G線上のあなたと私』
TBS/毎週火曜 よる10時

“婚約破棄をされて仕事も同時に失った小暮也映子(波瑠)が新しい一歩を踏み出すために始めたのは、バイオリン。音楽教室に通い始めて、そこで出会ったのは大学生の加瀬理人(中川大志)と、主婦・北河幸恵松下由樹)。年齢も境遇も全く違う三人に友情が芽生え、いつしか也映子と理人はつき合うようになる。この恋の行方はどうなるのだろうか?”

 TBSで火曜22時に放送されるドラマは、年上女性と年下男子の恋愛が頻繁に放送される至福の1時間だと勝手に思っている。『中学聖日記』(2018年)、『初めて恋をした日に読む話』(2019年)、そして今回の『G線上のあなたと私』。今夜放送の最終回を目前に控えて、第9話では今までのストーリーがほぼ素っ飛んでしまうほど、甘酸っぱいシーンの連打。その内容を振り返って行きたい。男性読者のみなさま、しばらくの間は控え室にてお待ちください。

 ただ単に恋愛模様を描いていくドラマも楽しいけれど、そこに何かプラスアルファのムカつきが欲しくなる。その効果によって、ストーリーを追うのがさらに楽しくなってくるからだ。

今回は也映子役の波瑠さんが、絶妙に視聴側がもやっとする雰囲気を醸し出している。思い返せば、この(勝手に)女性ゴールデンドラマタイム枠で、波瑠さんが主演をするのは2回目。前回は今回と同じマンガ原作者・いくえみ綾の『あなたのことはそれほど』(2018年)だった。傍目には100点満点の旦那の妻でありながら、物足りなさを感じて不倫に走る役。はっきりしない態度がイライラすると当時もネットで話題に上がった。それに対して、ご本人自らがブログを通して意思を発信もしていた。

 そして今回の也映子役。婚約者に捨てられるという冒頭は、女性視聴者の同情を得たものの、その後がまたはっきりせず、もやもやする。結婚をしたい、しなければという呪縛からも抜けられず、メガトン級に可愛い年下彼氏ができても

「辛い……(中略)バイオリン(を習っていた頃)に戻らない?」

「好きの……その先が怖いです」

と自分が適齢期であることをチラつかせる。

「(え? は? 年下のことを好きだっていておきながら、覚悟を決めていなかったの? 大丈夫だ、也映子。あともう少ししたら8歳差なんて全く気にならなくなるし、文化は日進月歩で進んでいるから時代が味方をしてくれる)」

 そう思いながら、見ていた第9話。思えば、彼女が年上の幸恵に

「幸恵さぁ~ん、会いたかったですぅ」

 と懐いていく以前放送されたシーンも引っ掛かっていた。

自分よりも年上の女には、甘い顔を見せて、年下の男にはこじらせ発言の連発。マジで拙著『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』を読んで一度改心して欲しい。

 こんな女性が主役。演じているのは、波瑠さん。彼女の演技力は果たしてどこまで続いているのだろうか。機微のはっきりしない女性を演じるほど、難しいことはないと思うけれど、彼女はすんなりその力を手にしてしまった。

■女性ファンの思うがままに成長を遂げる中川大志
『G線上のあなたと私』この冬のときめきは全て中川大志にさらわれてしまった
火曜ドラマ『G線上のあなたと私』より (c)TBS

 そんなこじらせ年上女性に惚れてしまった理人。ここらで第9話にて披露された至高のセリフを並べてみよう。

「(同級生向かって)彼女だけど!」

「みんなに也映子さんを見せてやりたいなーと思って」

「(也映子の)顔見たくなった、だめ?」

 まだ20年間の人生で、たった二つ目の恋。純度が高いからこそ、駆け引きもなく伝わってくるストレートな愛情表現にこちらも腰を抜かした。こういう男子、2020年の東京にも増殖してくれないだろうか。

 そしてこの理人を演じているのは、中川大志さんだ。

実はそんなにご本人のファンでもないのに、他媒体でもたびたび彼の演じた役柄について書かせてもらっている。あんまり書くのもどうかと思ったのだけど、それだけドラマオタクにも引っかかる演技を彼がしているのだと『なぜ彼が女性から支持されるのか』を今回も考えてしまった。

 子役から活動していた中川さんが、世間に知られるようになったのは『家政婦のミタ』(日本テレビ系・2011年)の長男役。思い返すと、まだ未完成のイケメン感あふれる13歳。なかなか母親の死から立ち直ることができない、父親の浮気を許せない演技が可愛らしかった。ここから順々に役を重ねて、成長していく彼がいい男の頭角を見せてしまったのは『花のち晴れ~花男 Next Season~』(TBS系・2018年)の馳天馬役。役名のごとく、馬に乗って現れた貴公子は文武両道なうえに、優しさに溢れていた。

 

「(これか……)」

 

 子役からスタートした俳優が、無事にイケメンに成長することは稀だ。でも中川さんは、すくすくと理想の好青年に育っている。しかも年齢と抜群にリンクする役を演じているのが、また心をそそる。朝ドラ『なつぞら』(NHK総合・2019年)は別として、今回は飲酒可能な役にまで到達した。次回は『みずほ銀行』のCMのように新入社員の役だろうか。

このわかりやすい成長ぶりを見守っていられるのが、女性ファンの心をガッチリ掴んで離さないのだと思う。青田買いも、愛でることも楽しむことができるのは女性ならではの特権みたいなものだからね。

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