和田秀樹(以下:和田) 「いま、みんな、金というものを信じてるだけでさ。たとえば、ソフトバンクの孫正義さんが自分がいくらカネ持ってるか、1回、下ろして持ってきて、広げて見せてくれりゃ、わかるけどさ。要するに、預金通帳のケタが増えるだけの話じゃない。ちなみに、世の中で、いちばん金がかかる趣味は何でしょうか」
矢内東紀(以下:矢内) 「なんですか?」
和田 「貯金だと思ってるの」
矢内 「ああ、なるほど、なるほど」
和田 「そうするとさ、貯金が趣味になったら、1億持ってようが、1000億持ってようがさ、もう、何にも使えなくなるわけだよ」
矢内 「いい言葉ですね、それは。イスラムには“使ったお金だけが財産だ”という言葉がありますけど」
和田 「だから、残すより、使うほうがいいわけでさ。僕も自慢じゃないけど、映画はともかくとして、ワインだけが唯一の趣味でさ。
矢内 「私は全然、趣味がないんですけどね。どうしたらいいんだろうなあ」
和田 「だからさ、アホでもいいから、スーパーカー、買ってみるとかさ」
矢内 「ねえ。前澤社長が、そういうことやってますけど。飛行機買うほどの金はないから」
和田 「みんなが前澤さんを、ボロクソにいったり、ひがんだりするけどさ。稼いだ金は使わないと、というのが、僕の発想だからさ」
矢内 「ホントですよね。まあ、下品か、上品かというと、微妙な気もするけど。最近、僕はね、大学生の家庭教師を雇うことにしたんですよ。中田考先生が、いま、数学を勉強するために、数学科の学生を雇っていて。これにはふたつ意味があって、自分が若い人から勉強を教えてもらって、脳の刺激を受けるというのがひとつと、若い人にお小遣いをあげるという。
和田 「ああ、いいじゃないですか。そういえば、カースト制のインドで、バラモンの人たちって、みんな貧乏らしいんだよ。それで、タタ財閥の上のほうの人とか、インドのITで起業家になる人って、下のカーストの人が多いらしいのね。でも、インドのすごいところは、バラモンの人って何にもしないで、1日中、哲学書を読んでいたり、数学の問題を解いてるらしいんだよ。そしたらね、バラモン以下の身分の人たちが、みんな、それを尊敬して、いっぱい、食べ物とかを持ってきてくれるらしいんだ。そういう社会って、僕は、すごい素敵だと思っててさ。だから、そのバラモンが金に汚くなったら、もう、世も終わりじゃん」
矢内 「私は、日本の大臣が財産公開とかっていって、小泉進次郎が金にキレイで、みんなと割り勘だとかっていってるのに、“小泉進次郎さんの財産はゼロ円です”とかって聞くと、“んなわけあるか!”って思って」
和田 「政治家の財産公開ほどインチキなものはなくてさ。普通預金は公開しないでいいんだもん。そんな茶番をやってだよ、公開したことにするっていうほうがさ」
矢内 「なんか、ウソつきじゃないですか。単純な話、もっと持ってるわけじゃないですか」
和田 「僕はね、やっぱり、悪いこと、いいことは別として。たとえば、詐欺稼業であろうがね、物事、いいこと、悪いことって、はっきり決められないじゃん。
矢内 「常によくない。うん。ダブルスタンダードというかね。ウソついてる人って、やっぱり、何も、その、信用なくなっちゃうし」
和田 「そう。それを、ずーっと、やり続けてるわけだよ。でね、我々が小っちゃい頃は、閻魔大王に舌を抜かれるっていわれたのにさ。いまの子どもは、そんなこと聞かされてないみたいなんだよ。そうした時にさ、代々、政治家の家に生まれたヤツっていうのは、親に、この国の人間はみんなアルツハイマーで、3か月たつと、みんな忘れるから、その場をごまかしとけばいいって。僕は、小渕優子の家であれ、安倍晋三総理の家であれ、ずーっと、そうやって習ってきたんだと思うよ。だから、与党の世襲議員の人たちというのは、ウソをつくのが平気なトレーニングを受けてるわけですよ。そういう人に、絶対、勝てないですよ。
矢内 「ああ、そうですね。ウソつききったら、もう、忘れちゃうから、実際問題」
和田 「だから、日本人というのはアルツハイマー以下なんだよ。アルツハイマーみたいだっていうと、アルツハイマーに失礼だからさ」