博識で、様々な分野の知識に富んでいる林先生ですが、普段の情報収集はどのように行っているのでしょうか?
単に豆知識を増やすだけでない情報収集

 「林先生が驚く初耳学」という番組に出演しているせいで、絶えず情報収集を強いられる生活を送っています。(笑)その手段として、インターネットに頼ることも多いですね。

毎日、しっかり読んでいるのは、「東洋経済」と「プレジデント」。深く知りたい場合には、実際に雑誌も購入します。
 もともと街をよく見て歩いているほうだと思います。だからいっそう、実際に目にしたときには特に何とも思わなかった現象について、専門家の立場から、その「意味」が明らかにされるのが楽しいんですよ。そうか、そういうことだったのかと。すると、いつか誰かに明らかにされるかもしれない秘密の種を自分の内部に一つでも多く蒔いておこうと、さらに街を観察する目が鋭くなります。

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写真/花井智子

 特に「東洋経済オンライン」の鉄道系の記事は好きですね。たとえば、北陸新幹線の敦賀以西のルートについての記事は興味深かったですね。結局、3つの候補のなかから小浜・京都ルートに決まったようなのですが、なぜ滋賀県がずっと原ルートを主張してきたのか、その「意味」がわかりました。
 小浜・京都ルートになった場合、滋賀県にとっては県内を新幹線が通らずメリットはゼロなのに、在来線(今の湖西線)のみを押し付けられるという状況になるだろうということなんですね。しかも、その在来線は、たぶん営業的に厳しくて第3セクターになる可能性も高い。
 たとえば、長野新幹線(現在は北陸新幹線と言うべきでしょうね)開通の際に、それまでのJRの一部がしなの鉄道になりました。

これはあくまでも、長野県内を新幹線が通ったうえでのことです。新幹線がもたらすメリットを享受しつつ、在来線が第3セクター化するというのが従来のパターンで、今回の滋賀県のような例は過去にないんだそうです。滋賀県は小浜・京都ルートに反対してきた理由が、ようやく理解できました。湖西線に実際乗って、この眼で確かめたいという思いも強いですね。

 この記事を読んで以来、たとえば講演会で地方に行ったときに、第3セクターの鉄道を見たり乗ったりすると、すぐに成立経緯を調べるようになりました。今自分が乗っているこの列車には、こういう歴史的な経緯があって、こういう全体的な関係の中で運行されているのだと「理解」できること自体が、僕にはこのうえなく楽しいんですよ。
 このように、一つのネット記事によって、単に豆知識が増えるのではなく、現実とのかかわり方が変わることもあるんです。情報にあふれる現在の社会では、こちらのスキルが絶えず問われているような気がしてなりません。
 

明日の第二十六回の質問は「Q26.今年の活動の予定や目標は何かありますか?」です。
※この記事は2月15日(水)までの限定公開です
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