昨今では欲しいと思った本を「買う」以外にも、図書館などで「借り」て手に入れる人も多いだろう。そのせいで本が売れなくなった、という言説もあるほど。新潮社の社長である佐藤隆信氏が、図書館利用が書籍売上のストッパーになっているとし、新刊の図書館貸出について「待った」をかけたニュースもあった。では実際に読者の買う/借りるの比率はどれくらいなのだろうか。そんな疑問をもとに今回、本好き500人(男性316人、女性184人)を対象に「本を手に入れるルート」についてアンケートを行った。結果は下記の通り。
※「本好き」の定義は1年間に20冊以上本を読む人
●「本好き」でも借りる派が40%超!
・「購入」273票(男性197、女性76)/54.6%
・「借りる(図書館)」216票(男性112、女性104)/43.2%
・「借りる(友人)」4票(男性1、女性3)/0.8%
なんと「借りる派」が40%超! 一定層が存在することは予想できたが、この多さは驚きだった。忘れてならないのは、今回のアンケート対象者は「本好き」だということ。一般層よりも本を大事に手元に残しておきたい気持ちが強いはず、つまり「借りる」のではなく、「買う」比率が高くなると思われたが、それでも「購入派」は50%弱にとどまった。
なぜだろうか。「借りる派」の声を拾ってみたい。1年間に240冊以上も本を読み、多いときで1週間に5冊以上図書館で本を借りるという女性は、スペースの問題をあげた。
「多くの本に出会いたいけど、家も広くないし買ったら家に溜まっちゃうじゃないですか」(50代女性)
同様の声は中高年層の女性から続いた。
「家に本が溜まると困るので。ものを捨てられないたちなので借りる方がいい」(70代女性)
「家に置く場所がないわ。家も狭いし」(60代女性)
など、むしろ手元に残ってしまうことがマイナスなのだという。
興味深かったのは、今回「借りる派」でインタビューに成功したのは全員が女性だったということ。先のアンケートでも、男女別に分析すると「借りる(図書館)」を選んだのは、男性が全体の35%だったのに対し、女性は57%とくっきり差が出ているのも興味深い。なるべくモノを減らし家庭の断捨離に心を配る女性と、そうでない男性との違いもあるのだろう。
実際、今回「購入派」として話を聞けた大学生は男性で、本に対する強い所有欲がある、と語ってくれた。
「本はただ読めればいいわけでなく、本棚に置く、インテリアとしての価値がある。
前回のアンケートでも、「蔵書」に価値を見出す答えは見られ、本を残したい/残したくないというポイントは読書好きの中でも意見が大きく分かれそうである。
Q.本を一番買う場所はどこですか?●本をリアル書店で「新品で」買う人は5割弱

前問で、思わぬ図書館利用者の数におされる形となった「買う派」。ここではさらに一歩踏み込んで「どこで買うか?」という質問をぶつけてみた。結果は下記の通り。
・書店(ネット除く) 259票(男性174、女性85)/51.8%
・ネット書店(amazon等) 127票(男性71、女性56)/25.4%
・中古書店78票 (男性52、女性26)/15.6%
・フリマアプリなど0票
書店(ネット除く)で買う人は全体の50%強だった。
次に票を集めたのはネット書店。全体の4分の1を占めた。これは年々巨大化するAmazonの存在感とリンクする。都内の生命保険会社につとめる営業マンは、年間30冊以上本を読むが、リアル書店に行くのは年に1~2回で、ほぼamazonで購入するという。
「(amazonを使うのは)早いから。またリアル書店で買うと持って帰るのが面倒という理由もあります。僕の場合はポチッと購入して、すべて会社に届けてもらうようにしているんです」(20代男性)
忙しいビジネスパーソンにとって、ネット書店のスピード、手軽さはやはり魅力的だ。
ほか大学院で工芸を専攻し、自分の興味あるテーマの写真集などをよく購入するという大学院生は、「とくに海外の本はamazonで買う」(20代男性)と答えた。専門性の高いもの、洋書などはやはりamazonに頼るしかない。
またブックオフに代表される中古書店の利用者も根強く、概算で7人に1人が本を買う際のファーストチョイスにしていることになる。
昨今爆発的に利用者を伸ばしているメルカリに代表されるフリマアプリも選択肢に加えたが、こちらはまだ本を買う手段としては認知されていないのか今回のアンケートではゼロ票だった。
これらの結果をどうみるか。前問でみたように、そもそも「購入派」が想像以上に少なくなってきている中で、買う場合でもネット書店や中古書店といったルートが40%超。残った50%がようやく「本屋さん」で買うということになる。昨今書店の経営不振のニュースを目にするが、本の入手チャンネルが増える中で、本好きでさえもなかなか一般書店で「新品」で買ってくれない、お金を落としてくれない現状をあらわしているということか。
こうしてみると暗い方向になりがちだが、前回紹介したように、店頭に人を呼びこむ意欲的な取り組みをしているリアル書店も増えてきている。実際に足を運びたいと思わせる書店、そしてずっと手元に残しておきたいと思わせる本づくりがこれからの時代に求められるのは間違いないだろう。