今年9月のレール異常による脱線事故に端を発した、JR北海道の連続不祥事。レール異常は250カ所以上、運転士覚醒剤使用、オーバーラン、ATS非常ブレーキ不作動、相次ぐ火災、発煙事故と、命を預かる公共交通機関とは思えない不祥事が相次ぎ発覚した。
それが北鉄労(北海道旅客鉄道労働組合)の存在だ。組合資格者の84%が加入するJR北海道の最大労組だが、この北鉄労とその上部団体であるJR総連(全日本鉄道労働組合総連合会)を実質的に支配しているといわれるのが極左団体「革マル派」である。
労使関係においても北鉄労革マルの威光は大きく、JR北海道が義務付けようとした乗務員のアルコール検査を拒否し、また他労組との対立などから、情報伝達などにも支障を来しているといわれる。
●JR革マルの恐ろしい実態そんなJR革マル問題に焦点を当てた書籍がある。ジャーナリスト西岡研介氏による『マングローブ』(講談社)だ。革マルによるJR東日本労組(東労組)の支配と経営権への介入などを、東労組に君臨する革マル派最高幹部・松崎明を軸に描いたものだが、そこでは恐怖支配によって革マルがJR東労組を私物化し、乗客の安全をないがしろにしてきた様子が炙り出されている。
「他労組員と会合を持った運転士を『裏切り者』と吊るし上げ、無理やり組合から脱退させる」「運転席の後ろの窓に張りついて『ヘタクソ』『こんなところでブレーキかけやがって』などと言い、執拗にプレッシャーをかける」「信号機の前に4、5人の組合員が立ちはだかり、信号機を隠す」「対向車線の電車からハイビーム攻撃をかける」など、事故さえ誘発しかねない行為だが、これらの嫌がらせを受けた社員が会社に訴えても、労組を恐れて見てみぬふり。さらに、こうした実態を告発するメディアには、キヨスクでの販売拒否という強行措置で対抗する。本書では、乗客の安全を脅かすJR革マル問題の、げに恐ろしい実態が明らかにされている。
しかしJRを取り巻く問題は、JR東日本やJR北海道の革マル問題だけではない。先ごろ歴代3社長の無罪判決が出たJR西日本の福知山線脱線事故においても、その原因のひとつとして日勤教育の問題が指摘された。
私たちの身近な交通機関であるJR。しかしその内実を見ると、果たして命を預けるにふさわしい企業なのか……背筋が凍る思いだ。
(文=和田実)

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