今クール(10~12月期)は、ジャニーズ主演ドラマの惨憺たる状況を「そらみたことか」と思いっきり鼻で笑っているのだが、実はちょっぴり楽しみにしているドラマがある。
今回は偏屈な作家という役柄なのだが、何が面白いって変身するシーンである。中丸演じる推理作家・白川次郎は、基本形が長髪&ブサイク&無愛想なキモメンという設定。
ただし、小説の題材となる事件を取材するときは、二枚目の爽やかイケメンインタビュアーに変身して臨む。「たいていの人は外見で左右される」ことを逆手にとり、実在の事件の真相に迫っていくのだ。ま、その変身シーンがとにかく笑えるので、ぜひ一度観てほしい。猫背を矯正するベルト(まるで星飛雄馬の大リーグボール養成ギプス)を背負い、腫れぼったいまぶたにアイプチ(二重にする糊)を塗り、ウザイくらいに長い髪をしゅるるーんとヅラ内に収める。女の化粧もある意味滑稽なのだが、この中丸の変身シーンはなかなかに笑えるのである。
正直、ストーリーはそんなに面白くない。小ネタを入れすぎて、本筋が見えにくくなってしまっている、まさに「蛇足」状態なのだが、たぶんそこも狙いなのだろう。TBSのこの枠「ドラマNEO」はいつもそんな感じだから。新しいテーマに「挑戦している」というよりは「対面逃走」。真正面に向き合いながらも、実は少しずつ後ずさりして小賢しく逃げ腰。
ストーリーは微妙でも、出てくる役者がこれまた、いい。中丸に執筆をせっつく編集者・下日山(カヒヤマだが、劇中ではゲビヤマと呼ばれる)役に、木村文乃。文芸担当の編集者にこういう感じの女、結構いるよなあと。真面目と図太さとちゃっかりを兼ね備えた一所懸命さん。意外とリアルである。
無駄にオシャレな刑事役に光石研、インチキくさい親玉に松重豊、インチキくさい管理人に眞島秀和、事件が起きた町の消防団員に少路勇介や裵ジョンミョン、出版社の編集長に岩松了……ああもう役柄を書くのが面倒くさいから省略するが、ふせえり、村杉蝉ノ介、松尾スズキなんかも登場しちゃって。大人計画&鈍牛倶楽部から絞り出しました! 感満載の豪華アングララインナップ。個人的には、全裸で股間に天狗の面だけという出で立ちで相当頑張っていた森下能幸にねぎらいの言葉をかけてあげたい。
続きがすんごく気になる! ってほどの展開でもないし、『SPEC』(TBS系)や『TRICK』(テレビ朝日系)の精巧な世界観(ギャグ感)には到底及ばない。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)
●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。