中国と米国で同時期に、ともに大富豪の会社経営者が児童わいせつ容疑で逮捕・起訴されるというショッキングな事件が明らかになった。

 新華社電によると、中国上海市の警察当局は12日、同市の不動産大手、新城控股の王振華・前会長(57)らを児童にわいせつな行為をした疑いで逮捕した。

王氏は江蘇省人民代表大会(省議会)の代表(議員)を務めた共産党員で、労働者の模範として表彰されたこともあった。総資産は170億元(約2670億円)。

 報道によると、王氏は上海市内で知人女性に少女を誘うよう指示。この知人女性は「上海ディズニーランドに連れていってやる」などと少女に声をかけて、ディズニーランドで遊ばせた後、ホテルに連れてきて、王氏と会わせていた。

 今回の事件が発覚したのは、被害を受けた少女の母親が「王氏が娘にわいせつな行為をした」などと警察に告発したことからだが、報告を受けた上海市の中国共産党委員会宣伝部の幹部が上海市のメディアに対して「事件を報道しないように」と指示した疑惑が浮上。これが中国の会員制交流サイト(SNS)に暴露され、炎上する騒ぎとなり、市委員会の対応に反発が強まっていた。

その後、上海市の警察当局は「徹底的に事件を調査する」と方針を転換し、事件が公にされている。

 上海市警察が王氏を逮捕したことを受けて、投資家は同社株を売り浴びせ、時価総額40億ドル(約4310億円)強が吹き飛んだといわれる。その後、新城控股も声明を発表し、王氏が会長職を辞任し、後任に息子の王暁松氏が就任することを明らかにしている。上海市政治協商会議も9日、会議を開き、王氏が務めていた市政協委員の役職をはく奪することを決定。中国メディアは12日、監獄内で囚人服姿の王氏の映像を公開しており、今後、余罪も含めて取り調べが始まるとみられる。

トランプ大統領とも交流か

 一方、AFP通信によると、ヘッジファンド経営者として財を成した米国の富豪で、有力政治家や著名人らと交友関係のあるジェフリー・エプスタイン被告(66)が8日、未成年の少女数十人を性的に搾取した罪で起訴された。

同被告とこれまで交際のあった著名人としては、ドナルド・トランプ大統領やビル・クリントン元大統領、英国のアンドルー王子らの名前が挙がっている。2008年の時点で、同被告の弁護士がエプスタイン氏の総資産について、「10億ドル(当時のレートで約1200億円)は下らない」と述べていた。

 米ニューヨーク州南部地区連邦地裁が公開した起訴状によると、エプスタイン被告は6日、仏パリから自家用機で帰国した際、ニュージャージー州の空港で逮捕されていた。同被告は14歳の少女らに対する6つの行為について、性的搾取を目的とする未成年者の人身取引の罪と、同様の犯行を共謀した罪の2件で起訴されており、有罪の場合、最高45年の禁錮刑が科される可能性があるという。地検はマンハッタンの豪邸差し押さえも目指している。

 エプスタイン被告は8日、連邦地裁の法廷で無罪を主張している。

同地区を担当するジェフリー・バーマン連邦地方検事によると、被告は2002年から2005年まで、マンハッタン、ニューヨーク、フロリダ州パームビーチの自宅で未成年の少女数十人を性的に搾取した疑いがある。被害者のなかには14歳の少女もいたという。

 バーマン検事は「罪状は何年も前の犯行によるものだが、現在、成人となっている多くの被害女性にとっては、まだ非常に重要だ」と指摘。「被害者らは法廷で証言の機会を与えられてしかるべきだ。われわれは今回の起訴によって被害者のために立ち上がることを誇りに思う」と述べているという。

 エプスタイン被告はニューヨーク・マンハッタンの4600平方メートルもの敷地に9階建ての豪華なビルを所有しているほか、フロリダのパームビーチには邸宅を、パリにはマンションを、ニューメキシコ州には40平方キロメートルの牧場と豪邸をもっている。

さらに、カリブ海のヴァージン諸島のひとつの島、リトル・セイント・ジェームス島も所有しているが、同島が児童買春を含むパーティの舞台になっているとの報道もある。

(文=相馬勝/ジャーナリスト)