闇営業問題に絡んだ一連の騒動について、7月22日に会見を行った吉本興業代表取締役社長・岡本昭彦氏。事態は沈静化に向かうどころか、所属する若手芸人からは大きな反発を招いている。
会見で記者からの質問に対し、釈明に終始した岡本氏。芸人との面談中に発したパワハラ発言は“冗談”だったと明かし、関与芸人に早急な会見を開かせなかった点は「意思疎通ができていなかった」と語っている。また吉本興業の“ギャラ”に関しても、「『会社が9でタレントが1』とかそういうことはまったくなく、ざっくりとした平均値で言っても5:5から6:4」と明かした。
岡本氏の会見を受けて、所属芸人から続々と反論が噴出し、奥田修二(学天即)はツイッターで「芸人は、本気と冗談を見分けられます。だから芸人なんやもん」とコメント。久保田かずのぶ(とろサーモン)は、「悲しいわ。知り合いの芸人、先輩後輩同期、皆同じ事を思ってる。頼むから汗の書いた文字が欲しいんです。生きてる言葉をください。血の通った発言を聞きたいんです。どう変わるんですか?」とツイートしている。
また、ギャラにまつわる投稿も相次ぎ、エハラマサヒロは「ギャラの事とかはトップの方は現場の事を把握できてないんだろうな…」とコメント。
これに対し吉本興業の関係者は、「ギャラについて、会見で社長が言っていたのは『平均すると5:5や6:4』ということでした。これは、タレント9:会社1の大御所の方もいて、平均して、データだけ見るとそれくらいになるんだと思います」と事情を明かす。
一方で岡本社長は会見で若手芸人のギャラについて「いろんな機材費やなんとか費やら含めて、確かに(ギャラが)300円とかいうことも、その時代の子たちはあると思います」と語り、仕方ない面もあると理解を求めている。
実は、大崎洋会長も同じような発言をしている。7月13日Business Insider Japanの取材に対して、「吉本としては基本、ギャラはちゃんと払っているつもりです」としつつ、若いうちは経験を積むことが重要で、ギャラが安くても受け入れるべきとの見解を示している。
「交通費が500円かかって、(ギャラが)250円では赤字だったとしても、800人の前で自分たちの漫才を3分できれば、たとえ1回も笑いが取れなくても今後の芸の役には立つでしょう。芸は、人生をかけて何十年も積み重ねて完成するもの。修行時代に、先輩のおかげで舞台に立つ経験をしてもらう。ギャラの額の問題ではないと思ってます」(Business Insider Japan記事より)
さらに、この時は、「吉本の芸人としてデビューしたんだから、だれも笑ってくれなくても、月に30万円払ってやるからがんばれよ、というやり方は、本当の芸人を育てるやり方とは思えない」との持論を展開し、「吉本のいまのやり方を、変えるつもりはありません」と語っている。
それが22日の岡本社長の会見では、「いろんな仕事の機会を、環境をつくっていくことを目指していくなかで、ちょっとでも彼らの夢の実現と、収入も含めて上げていけるようにしていければと考えております」と、わずかにトーンが変わった印象も受ける。
ある芸能記者は、「岡本さんは大崎さんの指示で動く人なので、自分では決められないんでしょう。それが、会見にあらわれていました。歯切れが悪いと批判されていますが、岡本さんとしては、あれが精いっぱいだったと思います」と分析し、大崎会長の意思を慮る岡本社長が独断で、社内の体制を急変させることは難しいとの見解を示す。
吉本関係者「加藤が辞めることになるのも仕方ない」今回の騒動をめぐってもっとも注目を浴びているのは、『スッキリ』(日本テレビ系)でMCを務める加藤浩次(極楽とんぼ)だろう。加藤は番組内で、吉本興業との契約書について「俺らは交わしたことがない」と言及。コメンテーターの菊地幸夫弁護士が契約を結ばない吉本興業に驚きの声を上げた際には、「その流れでずっときてるっていう会社だからね」と漏らしている。
そんな加藤が大声を張り上げたのは、宮迫博之(雨上がり決死隊)と田村亮(ロンドンブーツ1号2号)の会見を経た22日のこと。“会見するなら全員クビ”と発言していた岡本氏について加藤は「岡本さんをよく知ってますけど、そういうことをする人です」と断言。「今の会社の状況、大崎さん(大崎洋会長)、岡本さん、この2人をみんな怖がってる」「大崎さんと岡本さんを怖がってる状況がずっと続いてきた。これからもそれが続くと思ったら、僕はこの会社に居れない。僕は辞めます。今の社長、そして会長の体制が続くんだったら僕は吉本興業を辞める!」と怒りを露わに宣言した。
そして同日、記者会見した岡本氏は辞任はしないと断言。これを受けて23日の『スッキリ』で、「今日夕方、大崎会長と話をします。『取締役が変わらない限り、僕は会社を辞めます』と昨日の放送で言ったんで。その旨を伝えようと思っています」と心境を語った。
こうした一連の騒動に対して、大崎会長や岡本社長をよく知る別の吉本興業関係者は怒りをあらわにする。
「そもそも、宮迫らが反社勢力のパーティーに参加したうえに、『ギャラをもらっていない』とウソをついたことが騒動を大きくした原因。それなのに、問題点がすり替わって、パワハラの被害を受けて退職を余儀なくされた被害者のようになっているのはおかしい。宮迫だって、これまで後輩たちに暴力をふるったり、何度も不倫をしたりしてきた人間なのに、自分が弱い者のように振る舞っているのが納得いきません。
加藤だって、過去には散々問題を起こしてきています。それが情報番組のMCになったことで正義漢ぶっているわけです。加藤が経営陣に辞めろなんて言うのもおこがましい限りです。スーパーの総菜が『社長辞めろ』なんて言いますか? 芸人もタレントも事務所にとって“商品”です。
芸人たちからの批判が岡本社長に集中していることについては、こう分析する。
「大崎会長は芸人を甘やかすタイプなので、芸人たちから好かれているでしょう。それに対して岡本社長は、厳しく指導するなどの嫌われ役を担っているので、うらまれる立場にあるのは間違いありません」(同)
終わりが見えない闇営業問題。吉本興業とともに、所属芸人も重大な局面に立たされている。
(文=編集部)