7日に首相官邸エントランスで結婚発表会見を行い、8日に入籍した小泉進次郎衆議院議員(38)と、フリーアナウンサー・滝川クリステルさん(41)の結婚に関する報道が止まらない。妊娠している滝川さんを母体も慮って、安定期に入ったタイミングで発表したのも、小泉さんが女性に支持される理由のひとつだと感じられるし、結婚生活も新しい夫婦のスタイルになるのではないかと、期待と賛辞の声が集まっている。
今、結婚相手に年上女性を選ぶ男性が増えている理由について、本連載記事『なぜ年上女性は年下男性にモテるのか?「年上妻」夫婦が最高に素敵&幸せである理由』でも書かせていただいたが、本稿では、そこから進めて、滝川さんが“アラフォー・オトナ女子”たちの希望の星となったという視点から考察してみたいと思う。
アラフォー独身女子たちの深い悩みいうまでもなく、小泉さんは結婚相手としては完璧だ。人気ある代議士というだけではなく、名門・小泉家の次男であり、さらに将来の首相候補とまでいわれている。さらに滝川さんに「政治家の妻像」を押しつけることなく、仕事を今まで通り続けることを許しているといい、まさしく理想の結婚である。ちなみに次男というのは、親から長男ほど多大な期待を背負わされないと考えられがちなため、独身女性からポイントが高い。
アラフォー独身女子のなかには、今まで過去の恋愛において何度か結婚を考えたことがある人もいるだろう。仕事か結婚か、仕事か出産かという選択を迫られ、悩んだ末に結婚を選ばず独身を通してきた人も多い。そんな女性たちにとって、滝川さんは希望の星となった(結婚後に仕事を続けるかどうかの許可を得なければならないのは、常に女性の側だけだが、今回はその是非は問わないでおこう)。
今の40歳前後の独身女性は、実にさまざまなものを持っている。高い学歴と高いキャリア、仕事におけるやりがいを持ち、一人で食事やカラオケに行く勇気を持っている。海外旅行や語学留学などを楽しむだけの経済的余裕があり、友人たちとの楽しい時間も持っている。オトナの魅力溢れる美しさを持つ女性もいるし、社会貢献マインドを持ち、滝川さんのように社団法人や財団法人を設立・運営している女性もいる。
彼女たちがもっとも悩ましく感じるのは、結婚と出産である。
「仕事も私生活も充実しているなか、どのタイミングで結婚すればいいのか」
「仕事に影響を及ぼさないために、地元の公務員男性を選べばいいのか」
「責任ある長男の嫁ではなく、次男か三男の男性を選びたい」
「結婚相手が決まったら、自分が何歳のときに出産すればいいのか」
「産前産後に休暇を取得できる福利厚生は整っているか、育休を得た後に職場復帰できるだろうか。そのためには出産の時期を慎重に選ばなければならない」
「出産した後、保育園に子どもを預けることはできるだろうか」
挙げればきりがないが、これらは独身オトナ女子共通の大きな悩みである。そして、今回それらの悩みを一気に解決できる方法を示したのが、滝川さんの結婚である。「そうか! 仕事ができる年下イケメン男性と“デキ婚”すればいいんだ」と。
傷を負う女子たちデキ婚は今に始まったことではなく、妊娠することによって自分の望むステイタスを手に入れられる結婚をするというのは、以前から多くみられたケースである。これまで、年下男性はあまりターゲットに入らなかったのだが、それは年功序列社会のなかで若い男性は十分な収入や財産を持っていないだろうと考えられたからであって、今では若くして財を成す男性も増えた。
アラフォー女子は仕事も私生活も充実しているのに、こと結婚においては辛い思いをしてきた。
こんなケースもある。
ある女性は、長く交際を続けてきた同世代の男性から「それぞれの時間と仕事を大切にしよう。結婚や子育てに縛られるんじゃなくて、君にはずっと魅力的な女性であってほしい」と言われ、その言葉を信じて10年近くの時間をともに過ごしてきた。
また、恋に破れ、もう恋愛ではなく結婚を目的とした男性と出会いたいからと、結婚相談所に登録したアラフォー女性がいたとしよう。そこでは、かなり年上の男性を紹介されるのが常である。彼女は「自分と同世代のアラフォーか、年下の男性でも大丈夫ですよ」と伝えているにもかかわらず、「アラフォー男性は20代女性を結婚相手に望み、子どもを産んでくれることを望んでいますから」と、まるでアラフォー女性は出産しないとレッテルを貼るような言われ方をされ、50代初婚男性を紹介されたり、ときには60代バツイチの男性を紹介されることすらある。その結果、何度も心を傷つけられた人もいる。
繰り返しになるが、そんなアラフォー女子たちにとって、やはり滝川さんは「希望の星」といえるのではないだろうか。
株を上げる孝太郎さんと純一郎さんもちろん、小泉さんと滝川さんの結婚にまったく懸念がないわけではない。小泉さんの父、純一郎元首相は三男を妊娠中の元妻と離婚し、その三男の親権を争って家庭裁判所に調停を申し立てたが親権は得られず、以降、三男とは交流していないとされる。進次郎さんと滝川さんも同じ道をたどる可能性はゼロではないだろう。しかし、万が一そうなったとしても、滝川さんには続けられる仕事がある。
今回の一連の報道で、進次郎さんの兄、孝太郎さんの評価も上がるだろう。弟の結婚に関する会見での受け答えを見ていて、彼は立派な長男だと感じた。
また、純一郎さんも再評価されるだろう。進次郎さんが滝川さんと結婚すると伝えたとき、純一郎さんは「司会者か!」と言ったと伝えられているが、それは代議士が報道の人間と親密に付き合うことのリスクをひと言で表した、見事な表現である。
この結婚は、進次郎さんにとっては今後解決しなければならない問題がさまざまあるだろうが、滝川さんにとってはなんの心配もない素晴らしい結婚であり、安心して出産に臨むことを願いたい。
(文=池内ひろ美/家族問題評論家、八洲学園大学教授)