自販連(日本自動車販売協会連合会)および全軽自協(全国軽自動車協会連合会)より、2019年9月の新車販売台数統計が発表された。9月単月の販売台数が発表されるとともに、19事業年度締めでの上半期(19年4~9月)の販売台数も発表されている。
自販連と全軽自協、それぞれの通称名別(車名別)の19年度上半期販売台数ランキングを合算し、含軽での上半期販売ランキングを作成した。
それによると、今期販売ナンバー1となったのはホンダ「N-BOX」で13万6047台。前年同期比、つまり18事業年度の上半期販売台数比で116.2%、9月単月統計での前年同期比は126.4%と絶好調となっている。
ただ、その半面、ホンダは8月より正式発売となった新型「N-WGN」が電動パーキングブレーキシステムの不具合により、9月上旬から生産停止になっていたことが報じられている。10月1日の消費税率引き上げ前に新型N-WGNが欲しくて注文していた人や、新たに新型N-WGNの購入を希望していた人の一部がN-BOXに流れた(購入車種の変更)ことも、N-BOX の9月単月の販売台数を押し上げているように見える。
2位のダイハツ工業「タント」は8万8233台と、トップのN-BOXに5万台ほど差をつけられている。しかし、7月のモデルチェンジ実施後の販売台数が5万3216台となっており、一部モデルチェンジ前の先代モデルの在庫も含まれていると考えられるが、新型タントが販売に大きく貢献しているのは間違いないといえよう。
その後も、3位の日産自動車「デイズ」、4位のスズキ「スペーシア」と軽自動車が続き、ようやく5位に登録車としてトヨタ自動車「プリウス」が入ってきた。プリウスは19年度に入ってからトップを維持してきたものの、8月、9月とトップの座をトヨタ「シエンタ」に奪われ、9月は日産「ノート」にすら追い抜かれている。
しばらく納期遅延傾向が見られていたが、最近は納期目処が1~2カ月と短縮されており、バックオーダーもほぼ消化したものと考えられる。さらに、9月17日にトヨタの新型「カローラセダン&ツーリング」が正式発売されている。ラインナップを見ても、ハイブリッドユニット搭載グレードが販売の中核をなすのは明らか。
カローラはカローラ店の専売モデルであるが、予約受注期間のみでセールスマン1人当たり4台という販売ノルマを課したディーラーもあると聞くほど、積極的な販売活動を展開している。「2020年5月より、トヨタ系ディーラーでは全店全車種扱いがスタートしますので、カローラ店以外でカローラが扱われる前に売れるだけ売ってしまえと、セールスマンにハッパをかけたディーラーもあるようです」(業界事情通)ということだ。
シエンタ、販売トップの裏事情8月、9月とシエンタが登録車で販売トップとなっている。前年同期比で見ると、トップにはなっていないものの、7月が156.5%、トップとなった8月は157.9%、9月は185.4%となっている。ライバルのホンダ「フリード」は10月18日にマイナーチェンジを実施しているが、改良直前の9月でも前年同期比100.2%と目立った販売台数の落ち込みはないので、フリードを食ったわけでもない。
販売現場で話を聞いても、「“これだ”と思い当たるものがない」「そんなに売れているイメージはない」といった話も聞き、なかには「何か裏があるような……」と怪しむ声も聞かれた。レンタカーやカーシェアリングなどのフリート販売を積極的に行ったのかもしれないが……。
ある事情通は、「タクシー事業者のなかには、トヨタのタクシー専用車となる『JPNタクシー』に対して、価格の高さなどもあり購入を手控えるところが目立つとも聞きます。一方で、LPガスも使えるようにシエンタを改造して導入してもJPNタクシーより導入コストが安く済むとして、シエンタがタクシー車両として注目されています。ひょっとしたら、“シエンタタクシー需要”が販売台数を押し上げているのかもしれません」と話してくれた。
“なんとか”という表現も似合うが、トップ争いに食い込んでいるノートは9月単月では意地を見せてプリウスを抜き、登録車で2位となっている。
上半期ランキングに話を戻すと、トヨタは車両カテゴリー別で、セダン(プリウス)、ミニバン(シエンタ)、SUV(RAV4)でそれぞれ販売ナンバー1を獲得している。この手のランキングにご執心だった日産は、かろうじてノートがコンパクトハッチバック車で販売ナンバー1となっている。
「デイズ」シリーズ、ノート、「セレナ」に極端に偏った国内販売を続けてきたこともあるが、やはりいまだにメーカーである日産が“お家騒動”でゴタゴタしていることが販売現場に悪影響を与えている事情が背景にあるのは間違いない。
18年11月にカルロス・ゴーン前会長が逮捕されてから、まもなく1年がたつが、その間、日産の話題といえば社内のゴタゴタに関するものが圧倒的に多かった。そして、消費者はその状況を冷静に見続けてきた。そのなかで「新車を買おうかな」となれば、よほど日産へのこだわりが強くなければ「とりあえず日産車は外そう」となるのは当たり前。
お家騒動がボクシングのジャブのように、1年かけて目に見えるダメージを与えるようになってきたといっても過言ではないだろう。さらに、消費者心理だけでなく、現場のセールスマンの士気が下がっていることも影響していると考えられる。
また、見逃せないのがトヨタの新型「RAV4」の販売が好調なことだが、今後のトップ争いの見どころも含めて、次回に詳述したい。
(文=小林敦志/フリー編集記者)