日韓関係の悪化が、韓国で事業を手掛ける日本企業の業績を直撃した。日本政府による半導体材料の輸出管理の厳格化などを背景に、両国関係が冷え込み、日本企業が韓国ビジネスで苦戦している。
スポーツ用品大手のデサントは2020年3月期の連結業績予想を下方修正した。売上高は従来の1440億円から1308億円(前期比8.2%減)、営業利益は80億円から11億円(同86.1%減)、純利益は53億円から7億円(同82.3%減)にそれぞれ引き下げた。売上高の約5割を占める韓国法人デサントコリアが、日韓関係の悪化による7月以降の不買運動の影響をもろに受けた。韓国では「デサント」のほか、ゴルフの「マンシングウェア」など5ブランドを展開している。
6月に就任した伊藤忠商事出身の小関秀一社長は11月6日、大阪市内で開いた決算説明会で「不買運動の影響で7~9月の韓国事業の売上高は前年同期比で約3割減った」と明かした。気温が下がる11月、12月は高価格帯のダウンコートなどが売れるかき入れ時となるが、不買の影響で苦戦が見込まれ、「不買の影響がどこまで続くかわからない」(小関社長)。
不買運動の影響が大きい下半期(19年10月~20年3月期)の最終損益予想は当初の42億円の黒字から15億円の赤字とした。赤字転落である。デサントコリアについては「まださまざまな変化が起こり得るので、全貌が明確になった段階で対応を考える」とした。940ある韓国国内の店舗は当面、現状のまま営業を続けるという。
11月6日に発表した19年4~9月期の連結決算は、売上高が前年同期比1.3%減の659億円、営業利益は同8.2%減の26億円、純利益は同3.5%減の22億円だった。デサントコリアの決算期が12月のため、デサントの中間決算には不買運動の影響は反映されていない。
デサントをめぐっては、創業家出身の石本雅敏前社長と筆頭株主の伊藤忠が対立。「韓国一本足打法はリスクが高すぎる」として、中国事業の拡大を求める伊藤忠に、韓国で成功したと自負する石本氏が反発したという構図である。18年夏、伊藤忠がデサント株を買い増したことを受け両社の対立が表面化。伊藤忠が敵対的TOB(株式公開買い付け)に踏み切り、デサント株の4割を取得。デサント側は石本氏が19年6月に社長を退任。後任として伊藤忠出身の小関氏が社長の椅子に座った。
小関新体制のもと、22年3月期を最終年度とする3カ年の中期経営計画をまとめた。筆頭株主である伊藤忠と連携し、伊藤忠が強みを持つ中国事業を強化することなどを柱とするものだ。中国事業が近い将来、日本と韓国を超える売り上げ規模になると想定している。
だが、中国のグループ会社は持分法適用会社のため、デサントの財務諸表の数字には表れない。
足元では連結売上高の約5割を占める韓国事業が不買運動の直撃を受け業績が悪化した。韓国事業の落ち込みを補うためにも、早急に中国事業を連結決算の対象に組み入れる必要がある。とはいえ、相手がある合弁事業だ。連結子会社化へのプロセスは容易ではない。デサントを買収した伊藤忠には、大きな誤算だ。
ユニクロやアサヒが不買運動のターゲットに韓国で日本製商品の不買運動は広範囲に及んでいる。ファーストリテイリングが運営するユニクロは韓国の若者に大人気だ。庶民的なアパレルがない韓国では、ユニクロは13年から6年連続でアパレルのシェアで第1位と独走。
<共に民主党(政党名)パク・グァンオン議員が発表した資料によると、ユニクロの9月の売上高は91億ウォン(約9億1000万円)で、前年9月の売上高275億ウォン(約27億5000万円)に比べて67%減少した>(11月12日付スポーツソウル日本版)
不買運動の対象になっていない「GU」を求める韓国消費者は少なくないという分析もある。ユニクロの韓国事業は「GU」で稼いでいる、との見方もある。
アサヒグループホールディングスは19年12月期の連結純利益予想を下方修正した。海外事業のうち韓国を含む部門の事業利益予想を75%減の5億円に下げた。10億円の下方修正だ。3分の1になるということだ。韓国での日本ビールの不買運動が影響した。
<7月まで韓国で最も多く売れた上位10ブランドのビールのうちアサヒ、キリン、サッポロの3ブランドが日本産ビールだった。だがアサヒが3位から36位と30位圏外に押し出された。輸入ビールで1位のブランドだったアサヒビールは戦犯旗(旭日旗)を自社ビールのデザインに使ったという点が議論を呼び起こした>(10月6日付中央日報日本語版)
アサヒは「スーパードライ」が人気で、18年まで8年連続で韓国の輸入ビールのシェア首位だった。
(文=編集部)