新型コロナウイルス感染の拡大が収束する気配がみえないなか、経済面で現れている影響を列挙してみる。

帝人の株価が急伸

 3月3日、東京株式市場。

午後になって帝人が一段高。子会社で手掛ける喘息治療薬(吸引する薬)が新型コロナウイルスに効くとの見方が浮上した。日本感染症学会のウェブサイトに掲載された神奈川県立足柄上病院などのグループの報告で、コロナウイルスによる肺炎患者3人に喘息治療薬「シクレソニド」を投与したところ、いずれも症状の改善がみられたという。「シクレソニド」は帝人の子会社、帝人ファーマが手掛けている。子会社の新型肺炎材料では富士フイルムの株価が先行した。

WHO「マスク着用不要」指針でマスク株が売られる

 マスクメーカーの川本産業や防毒マスクの興研、重松製作所の株価が3月2日に下げた。WHO(世界保健機構)が世界的に感染拡大する新型コロナウイルスに関し、「公共の場でマスクを着用する必要はない」とする指針を2月29日に打ち出したからだ。WHOでは「マスクを着用しないことで感染の可能性が必ずしも上がるわけではない」との見解を示した。「供給不足を防ぐためにも、過度の使用は控えるように」と呼び掛けた。

公営ギャンブルの無観客開催をビジネスチャンスとする

 無観客レース開催が相次ぎ、インターネット投票が注目を集めている。地方競馬の投票システムを手掛けているのは東京都競馬(東証1部上場)だ。JRA(日本中央競馬会)は2月29日と3月1日に無観客競馬を初めて開催。

馬券売り上げは約18%減少したものの、ネット投票は大幅に増えた。ネット投票システムの新規加入件数は2月29日は昨年同時期の約5倍になったという。北海道のばんえい競馬でも無観客開催にかかわらずネット投票が寄与し、馬券売り上げはその前の週を上回ったというのだ。

 東京都競馬は地方競馬のインターネット投票システム「SPAT4」を展開している。大井競馬場や伊勢崎オートレース場での無観客開催、東京サマーランドの休園などで施設売り上げは落ち込むとみられるが、その一方で「SPAT4」の加入者が急増すれば、中・長期的な売り上げ増が期待できる、とアナリストはみている。2020年12月期の公営競技事業の営業利益は前期比13.6%増の70億円を見込んでいる。

休校要請でチャンス到来

 給食の代替需要で出前館(ジャスダック上場、旧・夢の街創造委員会)に関心が集まる。教育系アプリでは、くもん出版と連携するネオス(東証1部)。宅配ミールキットの専用容器をつくっている中央化学(ジャスダック)が注目されていた。

 食品スーパーも優勝劣敗だ。「業務スーパー」の神戸物産は業績が堅調に推移している。ワークマン(ジャスダック上場)の2月の月次売り上げ(速報・既存店)は前年同月比27.3%増。

29カ月連続で前年実績を上回っている。PB(自社ブランド商品)の中国での生産の割合が70%近くに達しており、これを投資家は懸念していた。だが、会社側は「春夏商品の5割はすでに国内に入荷済み。残りの商品についても入荷のメドが立っている」と説明。2020年3月期決算へのコロナウイルスの影響は軽微としている。コロナウイルス禍で「強い小売り」はより強くなるという構図が鮮明になってきた。

アミューズメントパーク

 東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランド(OLC)や大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は休園のダメージを早急に取り戻すだろう。一方、福島県いわき市のスパリゾートハワイアンズなど地方のテーマパークに類する施設は、影響が長引くかもしれない。

 OLCの株価は休園報道で一時、急落したが、その後、回復した。東日本大震災の後も落ち込みを短期間でリカバリーした実績がある。20年3月期はもともと営業減益(最終利益も)を見込んでおり、休園による損失は一気に前倒して計上することになるだろう。そして21年3月期にV字回復を狙う。

優待券狙いの投資家もいて、株価は今後も底堅い動きを続けるとみられている。
(文=編集部)

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