今月も先月と同様、重要な需要項目のひとつである設備投資について取り上げる。韓国における設備投資の現状を把握するための指標は設備投資指数であるが、設備投資には数カ月後の設備投資の動きを先行的に把握できる国内機械受注(船舶を除く)がある。
国内機械受注は、「機械受注動向調査」により把握される指標である。「機械受注動向調査」は設備投資の供給側から、受注の段階で把握できる指標である。設備投資については、需要側、すなわち設備投資を行う企業が、設備投資計画を策定し、設備投資を行うことを決定するところから始まる。次に供給側、すなわち、機械設備を供給する機械メーカーが設備投資を受注する(反対から見れば需要側が機械設備を発注する)。そして、供給側が機械設備を製造し、需要側に販売・引き渡しを行い、検収・据え付けを行う。最後に、需要側が設備機械を有形固定資産などとして決算書類に計上する。
設備投資が行われたとされる時期は、機械設備が販売・引き渡しされ、有形資産などとして決算書類に計上されたときである。機械設備は物にもよるが、受注から販売・引き渡しの間に相当程度のタイムラグがある。これは機械設備を受注してから製造を始め、完成させるまで時間がかかるためであり、平均的には3~4カ月程度である。よって供給側が機械設備を受注する時期は、設備投資が行われる時期より数カ月先行し、機械設備の受注の程度を把握すれば、設備投資が実際に行われるより、数カ月早くその動向を把握することができるわけである。
韓国ではどのように需要側の機械受注額を把握しているのだろうか。
さて、実際に韓国国内機械受注の動きをみてみよう。国内機械受注は季節調整値が公表されているので前月比を把握することができる。ただし機械受注は、大型受注が入るとその月の数値が跳ね上がってしまうため、平準化するために3カ月移動平均の前月比をみることが望ましい。
まず国内需要全体をみると(図)、コロナ禍直後の2020年3月には9.0%のマイナスと大幅な減少を記録した。そして7月までは継続してマイナスが続くなど低調な動きとなった。
国内需要には公共需要も含まれている。そこで自律的な経済の動きで、かつ景気に敏感な製造業の動きを把握するため、民間需要の製造業をみると、おおむね国内需要の動きとパラレルに動いており、最近は落ち着いた動きとなっている。
国内機械受注は設備投資の動きに数カ月先行する動きを示すため、今後の設備投資は一時期のような大きな伸びは期待できないものの、プラスで推移するのではないかと考えられる。韓国経済は順調に回復しているが、その原動力は好調な設備投資である。今後は少し落ち着くものの、設備投資のプラスは続くと考えられるため、景気も堅調に推移するのではないだろうか。
(文=高安雄一/大東文化大学教授)
●高安雄一
大東文化大学経済学部教授。1966年広島県生まれ。1990年一橋大学商学部卒、2010年九州大学経済学府博士後期課程単位修得満期退学。