利益率はオートバックスの2倍…イエローハット、超高収益企業を支えるローコスト経営の正体

 今年のゴールデンウィーク(GW)は、過去最長となる4月27日から5月6日までの10日間の超大型連休となった。新元号「令和」への改元効果も加わって、列島各地でにぎわいが報じられた。かつてない盛り上がりを見せたのではないか。

 ところで、そのGW直前に大手カー用品店「イエローハット」の静岡県内の店舗で事件が起きた。

 イエローハットの制服を着た男性がタイヤを蹴ったりホイールに火をつける様子が映った動画が4月25日ごろからインターネット上で拡散したのだ。これを受けてイエローハットは26日にホームページ上で謝罪。同社は後日、店舗でホイールに火をつけたとして、現住建造物等放火容疑の疑いで、元アルバイト従業員と元従業員の2人が逮捕されたと発表した。

 この事件の数カ月前には、無添くら寿司やセブン-イレブンなど大手飲食チェーンやコンビニエンスストアで撮影された不適切な動画がネット上で拡散する問題が相次ぎ、社会問題となっていた。これらと比べてイエローハットの動画は逮捕者が出たことからより悪質といえ、より大きな反響があってもおかしくなかった。しかし、改元の話題が盛り上がっている時期に事件が起き、かつ、すぐにGWに突入したため、それほど問題視されることなく騒動が消えていったように思える。イエローハットはGWに助けられたのではないか。

 そんなイエローハットだが、業績は堅調に推移している。5月9日発表の2019年3月期連結決算は、売上高が前期比1.0%増の1392億円、営業利益は0.2%増の95億円だった。わずかな増収増益だが、17年に発生したタイヤの値上げ前特需の反動や例年に比べて全国的に降雪が少なかったことで主力商品のタイヤの販売数が前年同期より少なかったという特殊要因が大きく影響したため、微増の増収増益にとどまったことはそれほど問題ではない。

 同様の理由で、競合のオートバックスセブンも売上高は伸び悩んだ。5月8日発表の19年3月期の連結売上高は前期比0.7%増の2138億円にとどまった。伸び悩んだ理由はイエローハットと同じだ。

●業績が横ばいのオートバックス、急成長のイエローハット

 両社とも今年度前期の業績はまずまずといったところだが、一方で、中長期の業績では明暗が分かれている。オートバックスの売上高は近年こそ横ばいで推移しているが、08年3月期からそれまでは減少傾向が続いていた。08年3月期から19年3月期までの11年間で売上高は20%も減っている。一方、イエローハットは09年3月期から19年3月期まで10年連続で増収を達成。この10年で売上高は1.5倍以上に膨らんだ。売上高の大きさではオートバックスが上だが、勢いではイエローハットに軍配が上がる。

 近年のこうした勢いの違いは、主に主力ブランドの国内店舗数の増加具合の違いからきている。

 オートバックスブランドの国内店舗数は600店程度で横ばいが続いているが、一方のイエローハットブランドの国内店舗数は右肩上がりで増えている。ここ数年は年間約30店のペースで増えており、19年3月末時点で約730店に達している。

 オートバックスは都市部の街道沿いに大型店を中心に展開してきたが、そういった形態を国内では出店し尽くした感がある。

 一方、イエローハットはコンビニエンスストアなど異業種が退店した「居抜き物件」を中心に出店してきた経緯がある。こういった物件では小型店となりがちで品ぞろえが限られるという欠点があるが、小商圏の立地でも出店できるというメリットがある。オートバックスが出店できないような場所にも出店が可能だ。それが功を奏し、店舗数の増加につながっている。また、居抜き物件での出店はコストを抑えられるというメリットもある。オートバックスにはない強みといえるだろう。

 もっとも、オートバックスも11年ごろから小商圏での出店を積極的に行うようになった。だが、この分野では長い経験によるノウハウの蓄積があるイエローハットに分があるだろう。

●イエローハット、高利益率の秘密

 イエローハットは近年、積極的に店舗数を増やしたほか、ホームセンターなどへの卸売りを強化したり、提携先の出光興産のガソリンスタンドでの販売を増やしたりして規模の拡大を追求してきた。それにより、スケールメリットを生かした経営を可能にした。

 イエローハットは12年4月に出光興産と業務・資本提携し、共同仕入れによる仕入れ費用の低減を目指した。13年には、出光興産傘下のアポロリテイリングが出光興産のガソリンスタンドにイエローハットの商品を販売する「アポロハット」と呼ばれる売り場を導入。以降、展開を広げていき、アポロリテイリングは17年4月にアポロハットの導入店舗が200店を突破したと発表している。アポロハットが増えれば、当然、イエローハットの売上高も増えることになる。また、より大きなスケールメリットを発揮できるようにもなる。

 イエローハットはこうしたスケールメリットを生かしたローコスト経営を実践しているため、利益率が高いことで知られている。19年3月期の売上高営業利益率は6.9%にもなる。また、近年は上昇傾向にある。一方、オートバックスの売上高営業利益率は3.5%(19年3月期)と低い。以前は5%台だったが、近年は3%台あたりで推移している。営業利益の額もイエローハットのほうが大きく、同期はオートバックスが74億円なのに対しイエローハットは95億円にも上る。

 このように、イエローハットの業績は堅調だ。だが、予断は許さない。少子化や趣味の多様化による若年層を中心としたクルマ離れが影響し、カー用品市場に大きな影響を与える新車販売台数や自動車保有台数の今後の大幅な伸びは期待できない。また、カーナビやカーオーディオなどは単価下落や新車での標準装備化の流れにより、この分野の市場縮小が見込まれている。

 一方で、自動車保有台数は緩やかながらも伸びており、さらに自動車の平均使用年数は長期化しているため、タイヤやバッテリー、オイルなどの消耗品、車検やメンテナンスなどのサービス分野の市場は拡大が見込まれる。イエローハットはこういった分野に重点をシフトすることで市場環境の変化に対応し、業績を伸ばしたい考えだ。

 市場の大きな拡大は見込めないが、中小カー用品店の廃業が進むなどで市場参加者は減少しており、イエローハットなどの大手による寡占化は進んでいく可能性が高い。そのため、イエローハットの業績はまだまだ拡大していくことが見込まれる。しかし、イエローハット元従業員らによる放火未遂事件が水を差すかたちとなってしまった。イエローハット従業員の質の低さが露呈した格好となったが、これを契機に従業員教育の強化を図り、接客サービスの強化も図ってもらいたいものだ。それができれば、当面は安泰だろう。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

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