大和ハウス、住宅等で不良物件が大量発覚…2年前に把握しながら公表せず

 大和ハウス工業は、“中興の祖”と呼ばれる樋口武男会長兼最高経営責任者(CEO)が、6月25日に開催する株主総会で代表権のない会長に退く。芳井敬一社長兼最高執行責任者(COO)がCEOを兼務する。

 樋口氏は社長に就任した2001年4月以来、18年にわたりトップに君臨した。01年3月期に1兆162億円だった売上高を、19年同期には4兆1434億円と4倍に急拡大させている。樋口氏は日本の住宅事業の「顔」であった。

●立て続けに不祥事

 その大和ハウスで、不祥事が立て続けに発生した。

 今年3月、中国・大連にある分譲マンションの合弁会社で総経理(社長)らによる14億1500万元(約234億円)の不正流用が明らかになった。現在、第三者委員会による調査を進めているが、連絡がつかない総経理らから資金を回収するのは困難と判断。持ち分に当たる約117億円と、資産の評価損の計約125億円を持ち分法投資損失として19年3月期決算に計上した。

 4月には、建設した賃貸アパートや戸建て住宅が建築基準に適合していなかった疑いが浮上した。不適合があったのは合計2078棟に上る。01年1月~10年6月に引き渡した6都県のアパート200棟は、防火安全性が十分でない恐れがある柱や認定を受けていない柱を使っていた。

 00年10月から13年2月に引き渡した29都府県のアパート990棟と戸建て888棟は、土台となる基礎の認定を受けていなかった。アパート200棟のうち73棟は、2階外側の廊下を支える柱が防火基準を満たしていない可能性があるため、4月中に改修した。

 今回の問題は16年12月、同社の内部通報制度で発覚した。この間、「社内調査を進めていた」と釈明したが、なぜ公表がここまで遅れたのか。18年8月、外部から国土交通省に「認定を受けている型式に適合していない物件がある」との情報提供があり、それで調査に動いたのではないのか、との指摘もある。

 樋口氏の退任は「引責ではないか」と取り沙汰されたが、会社側はこれを完全に否定した。

「樋口さんは80歳ごろの引退を口にしていた。実際、住宅生産団体連合会の役員やプレハブ建築協会の会長の椅子を芳井社長に譲り、経営の第一線から引退を準備していた」(大和ハウス関係者)との証言もある。今年3月には、大和ハウスの指名委員会に「代表権の返上を伝えていた」(大和ハウス幹部)ともいわれている。それを会社側は「不祥事と(樋口氏の人事は)無関係」とする根拠としている。

 しかし、3月時点で経営陣は、建築基準法違反や中国のスキャンダルを把握していたから、「無関係というのは無理があるかもしれない」(全国紙記者)との指摘もある。

●創業者・石橋信夫氏の薫陶を受ける

 樋口武男氏は、創業者の故石橋信夫氏の薫陶を受けたひとりだ。創業100周年を迎える2025年までに10兆円企業にする長期ビジョンを樋口氏は推進してきたが、これは石橋氏の悲願だった。「樋口氏は石橋氏から、この実現を託された」(大和ハウス元役員)という。

 だが、住宅メーカーが住宅だけで売り上げ10兆円を達成するのは至難の業だ。そこで樋口氏は、海外進出と多角化に経営のカジを切った。これが奏功して4兆円企業になった。

 社名から「ハウス」を取ったほうがわかりやすい――。大和ハウスの投資家説明会では、こうした意見がよく飛び出すという。すでに事業領域はハウスメーカーの枠を超えているため、当然ともいえる。

 4兆円の達成は、祖業である軽量鉄骨の戸建て住宅から、需要が拡大するインターネット通販向け物流施設などへ果敢に事業を広げた樋口氏の手腕によるところが大きい。

 12年には準大手ゼネコンのフジタを100%子会社にして、建設業界を驚かせた。さらに13年には、中堅マンションのコスモスイニシア(旧リクルートコスモス)を子会社(63.1%出資)に組み入れた。

 また、ロボットスーツ「HAL」で知られるCYBERDYNE(サイバーダイン)に13.9%出資しており、創業者で社長の山海嘉之氏(37.5%を出資)に次ぐ大株主でもある。

 大和ハウスの不祥事の連鎖は、「積極・拡大路線の闇の部分」との厳しい見方がある。建築基準法違反は16年12月、内部通報で発覚したが、事件が公になったのは2年半後である。拡大路線を突っ走っていたため、対応が遅れたとの反省が、社内にあるようだ。

●デベロッパーに変身

 大和ハウスの19年3月期の連結決算は、合弁会社の資金不正流用で125億円の営業外費用を計上したため、純利益は18年同期に比べ微増の2374億円にとどまった。

 一方で、本業は好調だ。売上高は同期比9.2%増の4兆1435億円、営業利益は同7.2%増の3721億円と増収増益。ホテル建設が好調だったほか、インターネット通販向けの物流施設の建設が寄与した。

 19年3月期の事業別の業績は、戸建住宅が売上高3838億円、営業利益199億円。創業事業である戸建住宅は、もはや主力ではない。取って代わったのが、賃貸住宅、商業施設、事業施設の3事業だ。

 賃貸住宅は売上高1兆613億円、営業利益1022億円。ショッピングセンターなどの商業施設は売上高6939億円、営業利益1377億円。物流倉庫や工場、オフィスビルなどの事業施設は売上高1兆223億円、営業利益989億円だ。なかでも、事業施設は18年3月期に比べて1721億円の増収、営業利益は100億円の増益。東京五輪に向け、空前の大型オフィスビルラッシュの賜物だ。

 大和ハウスはハウスメーカーから、街や土地を開発するデベロッパーへ変身している。この転換を主導したのが、樋口氏である。芳井氏は「樋口路線を引き継ぐ」と言っているが、“中興の祖”が経営の第一線から退くのを機に、拡大路線を軌道修正することになる可能性もある。

●外部調査委の中間報告で「設計者、違法性を認識」

 大和ハウスは5月31日、不適切な建築の問題で、外部調査委員会から中間報告を受けたと発表した。

 調査委は、一部の設計責任者が違法性を認識していたことを指摘した。同委は6月中に再発防止策を含む最終報告書をまとめる。

 国の指定を取得していない柱や基礎を使っていた一因を「設計責任者が認定を取得していると誤認した可能性がある」とした。アパート屋外の2階廊下を支える柱は、「関東の設計者の多くが、本来の手続きに違反して建築確認申請をしていたことを認識していた」という。

 調査委は違反を、是正できなかった理由の調査を進めるとしている。大和ハウスは相次ぐ不祥事を受け、全社的な企業統治(ガバナンス)強化策を秋にも策定し、公表する。

 6月3日、樋口氏、芳井氏ら16人の取締役について、19年3月期の業績に応じた賞与を20%減額すると明らかにした。46人いる執行役員の賞与も10%削減する。6月25日の株主総会で議案として示し、承認を経て正式決定する。

 不祥事の検証結果次第で、追加処分も検討する。
(文=編集部)

あわせて読みたい

ビジネスジャーナルの記事をもっと見る 2019年6月16日の経済記事
この記事にコメントする

\ みんなに教えてあげよう! /

新着トピックス

経済ニュースアクセスランキング

経済ランキングをもっと見る

コメントランキング

コメントランキングをもっと見る

国内の人気のキーワード一覧

新着キーワード一覧

このカテゴリーについて

経済、株式、仕事、自動車、金融、消費などビジネスでも役に立つ最新経済情報をお届け中。