大塚製薬株式会社 常務執行役員 櫻井千秋さん


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■熱意と冷静さのバランスを保ちつつ、仕事の壁を越える


櫻井さんの「突破力」が活きたのは、この時だけではない。そのキャリア歴の中でも最大の挑戦となった出来事がある。

それが2010年、基礎化粧品シリーズ「インナーシグナル」の販売を、百貨店の対面販売から通信販売に絞る、という大きな販売チャネル変革だった。


「当時の『インナーシグナル』の百貨店ショップは、全国で53店舗。それをすべてクローズさせるのは、簡単なことではありません。携わって下さっているすべての方々に納得していただけるよう説明し、会社側とさまざまな調整を重ね......。同時に通販チャネルの基盤構築も必要だったので、そちらの統括もしていました」


その大仕事を約半年間で完了させ、今や「インナーシグナル」の売上は過去よりも好調だ。この時の功績が、現在の常務のポストにつながった。


「どんな仕事にも壁がありますが、突破すべき一点を超えると、あとはスムーズに流れると思うんです。突破点にいる時は、熱意をもって目の前の仕事に取り組むこと。一方で、私はブランドマネージャーとして売上の数字を作らないといけないので、すべての作業で数字にこだわります。熱意と数字のバランスが重要ですね」



■「何事も溜め込まず、変化を受け入れる」という心構え


昨年より韓国でも「ウル・オス」の販売がスタートし、今は国内と韓国を飛び回る日々。品川の本社に出社するのは週1、2回ほどで、「毎朝起きると、まず自分が今どこにいるかを確認します」と笑う。


傍から見るとかなりの激務だが、櫻井さん自身はストレスを感じないという。


「結局、仕事が好きなんでしょうね。仕事でストレスが溜まらないタイプなんです。その場で言いたいことはすべて言いますから。『溜め込まない能力』も、仕事では重要かもしれません(笑)。それと、今は仕事に100%注力できる環境があることも大きいと思います。この先結婚して家族ができて、と想像すると、今とは違う働き方が必要になるでしょうね」


仕事だけではない人生設計を考えることも、今後の課題だと語る櫻井さん。

同時にキャリア面で、再びまったく未経験の部署で働くことも想像する、と言う。


「どんな状況であろうと、明日のことは分かりません。いつ何がおきても大丈夫、という心の準備だけは常にしておきたいと思っています」

愛用の手帳とペンは、「インナーシグナル」のブランドカラーである赤色と、「ウル・オス」の緑色で毎年揃えるとか。「何度でも書き直しできるから」と、筆記用具はシャープペンシル愛用派。


(撮影/野澤朋代、取材・文/編集部・田中)

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